映画[くれなずめ]鑑賞レポ

「映画に行かない?」
そう誘いを受けたのは、観に行く前日、5月15日のことだった。
あまりにも唐突で、そして最高に嬉しい誘い文句。
存外、私は文字を書き表現することも勿論好きだが、作品を観たり、読んだり、聴いたりすることも、同じかそれ以上に好きなのである。

そしてこれは友人と、外でサッと食べて帰ろうと決め合流した夜と、映画を鑑賞した当日の、日記のようなエッセイです。


5月15日。近所で、三蜜を避けサッと食べて帰れる場所として寿司屋を選んだ私たち2人は、某寿司チェーン店にいた。

「◯◯(私)、明日あいてる?」
そう尋ねた友人に、映画[くれなずめ]の予告映像を見せてもらい、そこに俳優の成田凌さんの姿を見た。
これまで[窮鼠はチーズの夢を見る]、[愛がなんだ]。これらを共に観てきた私たちにとって、成田凌さんの出演する映画がとても面白いことは、単純明快、暗黙の了解であるのだった。
無論、答えは「OK!」。
当日は友人の家に集合することとなり、
そうしてこの日の夜は別れた。

約束の時間。
車に乗り込むと、友人の家へと向かった。
上映時間を聞くとそれは思っていたよりも迫っていて、早る気持ちと、映画を観ることへの胸の高鳴りを落ち着けつつ、車を走らせる。

到着したのは、上映の5分ほど前。
夜の最終上映を狙って行ったため、映画館はがらんとしていた。
ロビーには、自分たちと映画館のスタッフ数名のみしかおらず、普段であれば心細くなるほどの人の少なさだった。
だがしかしこのご時世、少なければ少ないだけ“三蜜“を避けられるため、安心である。
チケットを購入し、館内へと足を踏み入れる。
中は一段と暗く、ふかふかのカーペットに守られた地面からは足音さえ無い。
その厳かな静けさと薄暗さに久しぶりに頭から爪先まで包み込まれ、私の心臓はドクドクと音を立てた。
どんどん歩いていくとぼうっとした光に照らされて、【1】の数字と重厚な扉が現れる。
それらを1、2、3と次々に進み、今回上映される扉の前へと辿り着いた。
扉を開け、自分たちの席へと座る。
周囲には他に2組(それぞれ1人ずつ)が間隔を空けて座っていた。
何作か予告が流れたのち、映画[くれなずめ]が、始まる。


______


上映が終了し、エンドロールが流れる。
ウルフルズのザラザラとした無骨な歌声が、物語を吸収した頭にすーっと入り込んだ。
館内にゆっくりと灯りがつき、私たちは各々満足そうな表情で、目を合わせた。

これから観る方の楽しみを奪うといけないので、ここでは内容には一才触れないことをご容赦いただきたい。

だが、この日が幸せな1日だったことは、言うまでもないだろう。
明るくなった館内を後にし、噛み締めながら静かに映画館を出た。
そうして私たちが交わした会話も無論、私と友人だけの秘密である。

三密を避け、できるだけ外出を控えることがニューノーマルとなった現在。
こういった“娯楽“を楽しむことも少なくなり、映画館での高揚感や、新しい作品に触れることの喜びなど、五感で体感したのは随分と久しぶりだったように思う。
それがとても嬉しく、何かに深く没入するとはこんなにもストレス発散になるのかと、ものすごく驚いた。
これからも三蜜を避け、そうして生活は続くわけだけれど、このエッセイを読んだあなたにも、偶には何かに没入する時間をもつことをお勧めしたい。

変わっていくニューノーマル。
変わらずに続いていく生活。

ずっとやり過ごすのはきっと大変で、ニューノーマルをこなす私達は、案外必死で、頑張っているはずだから。

そうしてここまで読んでいただけた幸せを噛み締め、このエッセイを終いとする。


友人Aに感謝を込めて

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