レズビアンの話?いや、壮大な愛の話。「ののはな通信」イラスト感想文
こんばんは。
読書大好きイラストレーター、ササダテ スイです。
「読書の秋2021」の課題図書、「ののはな通信」を読みました。
かわいらしい表紙から想像した内容とはかなり違った・・・!
少女たちの密やかな恋の話、ではなく、とてもとても大きな愛の物語でした。
あらすじ
女子校で出会った、ののとはな。
二人は意気投合、親友となり、毎日のように手紙を送りあうようになった。
でも、微笑ましく温かい友人時代から、もっと強い感情を持つようになった時に生まれてしまった、苦しい思いの末の矛盾した行動。
思いが通じあい、幸せな日々を過ごしたのもつかの間、とんでもないことがわかり二人は決別してしまう。
その後、また交流が生まれたり離れたりしながら、はっきりしていくのが、お互いへの揺るぎない愛だった。
感想
当初は女子学生同士らしい、微笑ましい手紙のやりとりから始まっていて、読みながら、
そうそう、こういうのあったよね。
と思っていたのだけど、だんだんとディープで苦しい内容になっていく。
ののとはなが「友達以上」になってしまうのだ。
まさかの展開で、突然終わりを迎えてしまうのだけど、ここからがこの本の面白さ。
お互いが違う人と出会い関わりながらも、再確認するのが、やっぱりののとはなは運命の相手だったということだった。
もしそんな相手と出会ったとして・・・
その前に何人か「そうでない人」と付き合っていたら、きっと「運命の人」に対して迷いなく進めるだろう。
出会った時が若すぎて、しかも相手は同性。
色々な迷いがあって当然だと思う。
別れからブランクがあり、40代になったののとはなは、メールからまた交流が復活した。
お互い色々な出会いがあったからこそ、お互いが「無二の存在」だと自覚していた。
20年以上1回も会っていなくても。
今もし、10代だったとして、40代!?とすごく遠い気がするかもしれない。
でも今40代の私は、けっこうあっという間・・というか、変わる部分もあれば芯の部分は変わらないということを実感してる。
つい最近、20年ぶりに高校の時の同級生に会って、お互い案外変わらないなと思ったばかり。笑
それにしても物語後半、はながした決断には驚いた。
明るく人当たりが良く、華やかなはなが、秘めていた強い信念。
今年、アメリカ軍の撤退を引き金に、アフガニスタンでタリバンが一気に勢力を取り戻して、混乱と犠牲者が出ていると報じられている。
きっと困っている人がたくさんいるんだろうな・・・
とは思うけど、危険が伴えば、やっぱり自分の身の安全を考えるのが人間だよね。
はなは、男女問わず好かれるようなチャーミングな人だけど、とても強く激しく、凛とした女性なのだった。
最後は、ののがはなにあてた、届かない手紙の連続。
若い時は、はなと一緒にいたい思いに駆られて、苦しんでいたのの。
でも長い年月の間、お互いの存在を内包しながら人生を進み、ついには相手からの返信がなくても愛を送り続ける。
おそらくはなの中にもずっとののへの愛がある。
一緒の空間で過ごさなくても、触れ合えなくても、言葉の交流さえなくなっても・・・
一生、死ぬまで愛し続ける。
これはまさに、究極の愛の話だ。
読後感
年月と共に人は変わっていく。
でも芯の部分、魂は変わらない。
ののとはなのように、お互いの魂で惹かれ合うような「運命の相手」に出会えたら、やっぱり幸せなんだと思う。
最初は激しく、苦味を伴う恋の味。
それから年月を経て、深い深い愛へ熟成されていった。
もし二度と会えないまま死んでしまったとしても・・・
きっと魂はずっと寄り添ってる。
そんなことを信じられた小説でした。