『ゲームセンターあらし』の作者「すがやみつる」先生がスグバースを体験!
大ヒット作の『ゲームセンターあらし』をはじめ、各種特撮作品のコミカライズなどで少年漫画誌において大きな存在感を示す、漫画家の「すがやみつる」先生。
漫画の講師として熱弁を振るっていた経験もありますが、漫画関連以外では本名の「菅谷 充」名義で架空戦記やモータースポーツを題材にした小説も数多く執筆しています。
加えて、実はインターネットが普及する以前にパソコンがまだ「マイコン」と呼ばれていた頃から最新IT技術に触れており、数々の実用書も執筆するなど今なお精力的に活躍しているのをご存じでしょうか。
そんな多方面で長年活躍を続けており、なおかつ趣味人でもあるすがや先生に今回スグバースを体験していただきました。
現実離れしたVR空間ならではの体験に興奮
VA(バーチャルアテンダント)の「らいこんぶ」ちゃんに案内され、男性のアバターを選んで開始したすがや先生。導入の操作説明の流れで記念写真を撮影するのが恒例ですが、その際に「両手でピースサインを出す」という難易度が高い操作も難なくこなしていました。
まずはカシオ計算機が提供しているライド型アトラクションの『G-SHOCK THE RIDE』を体験。G-SHOCKの耐久試験をテーマにしており、深海や火山など、過酷な環境を巡ります。
続いては夜のワールドにて花火を鑑賞。「今年はまだ見に行っていない」とのことで、スグバースが今年最初の花火体験となったようです。花火を、打ち上げられた真下から鑑賞するというVR空間ならではの一幕もありました。
ここで一度休憩を挟み、後半の体験へ。
後半では、いろいろなアイテムを触って楽しめるワールドへ訪問。なかには、「光を当てると、対象が大きくなったり小さくなったりするライト」のような、どこかで見たことがある不思議な効果をもったアイテムも。自分が小さくなったり、他の物体を巨大化させたり、こちらでもVR空間ならではの、既存の物理法則に縛られない遊びを楽しみました。
そして最後は、「田舎の風景」を感じさせるワールドへ。遠くで踏切の音が聞こえる黄昏時に、少し寂れた田舎の道を歩き回ると、ポツリポツリと立ち並ぶ民家の灯りがどこか懐かしさを感じさせてくれます。
ここまでで、すがや先生の本日のVRChat体験は終了。
VR体験が楽しく和やかに進んだだけでなく、休憩時間中にはVAの「らいこんぶ」ちゃん(佐賀からリモートで参加)と、佐賀に関するトークで盛り上がる場面も。
すがや先生は過去にサガテレビでリポーターを経験したこともあり、「佐賀にはよく行ってたんだよね」とのことでした。
体験全体を「楽しかった」と言っていただいただけでなく、表現者であると同時に最新技術への関心も高いためか、水の表現や影のつき方など、終始ワールドを作り出す表現手法を気にしていたのが印象的でした。
VRChat体験をすがや先生にインタビュー
スグバースでのVRChat体験を終えたすがや先生に、インタビューを実施。
今回のVRChat体験の感想はもとより、VRを取り巻く環境や今後VRやメタバースに期待することなど、長きに渡って最前線で活躍しつづけているすがや先生の視点から多くを語っていただきました。
3DCGの描画エンジンが気になるすがや先生
––––さっそくですが、VRChatを体験してみてどうでしたか?
すがやみつる(以下、すがや) 楽しかったですよ。あっという間に時間が経っちゃいました。最初は少し酔うかと思ったけど、意外と大丈夫でした。
––––長時間VRを体験していると、いわゆるVR酔いと呼ばれる状態になることがあります。これは「酔いが溜まっていく」ような性質があるので、一度休憩を挟んで深呼吸などをしてもらうことで解消して、また酔いがない状態に戻すことができるんです。だからスグバースでは30分程度で休憩を挟むことにしており、これによってVR体験中はずっと酔うことなく気持ちよくメタバース体験をしてもらえるように工夫しています。
すがや VRChat上の3DCGはすべて、アニメーション的に動いているんですか?
––––VRChatはすべてユニティ(※1)というゲームエンジン(※2)で描画しています。いろいろな人がワールドやアバターをアップロードしていますが、すべてユニティを介して動いているので、それがまったく分からないとワールドを取り入れたりするのは少し難しいかもしれませんね。
すがや なるほど、分かりました。じゃあC#(※3)を使ったりしてるのかな?
以前、2Dで描いた物を立体的に動かそうとしたことがあって、C#とかを使わないといけなかったんですよね。C#はちょっと苦手でした。
あとはアンリアルエンジン(※4)とかもありますよね。漫画家さんで、作中の街をまるごとアンリアルエンジンで作って作画に使っている方もいらっしゃいますし。
日本と海外の違いは、住宅事情とリアル志向
すがや そういえば、VAのこんぶさんは佐賀から入っているって言っていましたよね。
––––そうです、そこは空間を超えてきています。これができるのも、VRChatというか、リモートの良さですよね。
すがや 以前、日本のマンガ専門学校がフランスでオンライン授業をしたことがありました。そのときのフランス語の通訳は韓国の釜山にいるフランス人がやっていましたね。三ヵ国をつないだ共同開催ですよ(笑)
こういった遠隔にいる人同士をチャットでつないで授業や仕事をするのはアメリカとかではずいぶん前からやっていました。私もそういった経験があったので、遠隔と通信してリアルタイムでやりとりをすることに関しては特に抵抗はないですね。
すがや こんぶさんは、自宅の個室でやっているんですか?
日本の一般住宅でVRをやろうとしても、なかなかできないんじゃないですかね。住宅構造がアメリカなどと違って部屋が少ないし、狭いですからね。
VRをやるにはある程度広くないといけないし、あんまりやっているところを家族に見られたくないしね(笑)
らいこんぶ まわりの友達はVRをやるために個室があるアパートに引っ越した、といった話をしていました。
すがや ヘッドセットを被って視界が覆われちゃうと不安感があるし、そうなると個室とかが欲しくなってきますよね。
VRChatにハマっている人は、周りにたくさんいますか?
コミュニティって増えていますか?
らいこんぶ たくさんハマっている知り合いがいますし、コミュニティもめちゃめちゃ増えています。
私はギャルが好きなんですけど、VRChat内でギャル文化を楽しむギャルサークルを作ったりしています。
すがや 運動不足になったりしませんかね?
VRChatでなんでもできちゃうと、外に出なくなるかなって思います。
らいこんぶ 運動不足にはなりがちですね。だから、友達とVRChatでダンスしたり、ギャルらしくパラパラを踊る会をしたりしています。
でも逆に言えば、VRChatって運動不足になるくらいリラックスしてもできますし、寝ながらでもできるんですよ。今、横になってみましたが、これでもアバターは普通に動けるので。
すがや へぇ、手の動きとかの位置センサーはどうなるんだろう。
––––こんぶちゃんはフルトラッキングで、腰や手足にマーカーを付けて動きをトレースしています。向きを設定してしまえば、寝ていても問題ないんですよ。
今のスグバースでは、ケガがないようにといった関係からフルトラッキングではなく、座りながらやってもらっています。本当は、スペースさえあれば自由に歩き回ってほしいんですけどね……。そのほうが楽しいし、没入感もあるので。
すがや このときの描画とかはどうなりますか? PCから?
––––PCで生成した映像をヘッドセットに流し込んでいますね。前にすがや先生はオキュラスをプレイしたことがあると聞きましたが、そのときはヘッドセット内で映像も生成していたはずなので、PCで生成するよりもどうしても荒くなってしまったと思います。
だから前回よりも今回の体験のほうが、きれいな映像が見えているのではないでしょうか。
すがや 映像やキャラクターを出すにしても、海外だとリアル系だよね。こういうかわいいキャラクターはいなかったなぁ。
セカンドライフ(※5)もそうだけど、海外のアバターとかはリアル志向なんだよね。影の感じが違う。どっちが好きかっていう、文化による違いなのかもね。
VRChatやメタバースの今後について
––––今後、VRやメタバースはどうなっていくと思いますか? どうすれば成功していくんでしょうか。
すがや 結局は、アクティブな人がどれだけいるかがメタバースの成功の上では重要だと思います。セカンドライフもそうやって、利用者が減って縮小していったので。
コンテンツが残るか残らないかって、そのコンテンツで経済活動ができるかどうかも重要ですし。
––––街を作っても人がいないとゴーストタウンになってしまいますからね。
ですが失敗例としてよくセカンドライフが挙げられますが、海外ではまだ結構な人数がログインしています。縮小はしましたが、20年以上たっても残っているサービスなので、試みとしては完全な失敗ではないと思っています。
すがや 日本では、広告代理店なども間に入って鳴り物入りで登場したから、期待しすぎちゃったのかもしれないですね。そういった期待ほどではなかった、ということでしょうね。
私は重要だと思うんですが、こういった趣味に関連するコンテンツでは「マネタイズ」を急がないほうがいいと思います。時間をかけてユーザーを増やしていくことが先じゃないんでしょうかね。
収益や経済活動はもちろん重要視しつつ、制作に関わる人もコンテンツに対する愛をもっていることが大事なんじゃないでしょうか。
––––VAのこんぶちゃんのように、VRが好きでそれを仕事にしている人もいます。場所に関係なく働くことができますし、実はVAへの応募もあり、地方の雇用促進にもつながっているんですよね。
スグバースでは、BtoCだけでなくBtoBやBtoGも視野に入れた展開を行っています。
障がい者福祉や雇用促進、講演会や広告、引きこもり支援などとVRChatは相性がいいと思います。
––––VRChatって、チャットだと思われるから会話したりチャットをしたりしないといけないと思われがちですが、それらはしなくてもいいんです。今回やってもらったように、ゲームみたいに遊べるんですよね。
実は、いろいろなことができる可能性があります。
すがや このVRの世界に入って一番やってみたいのは、『グランツーリスモ』ですね、レースゲームの。それをやったら、のめり込んじゃって人生が終わっちゃうので、あってもやらないですけど(笑)
––––すがや先生は、モータースポーツがお好きですもんね。
すがや 前はゲームセンターにあるようなレースゲームをずっとやっていました。本物のレーシングドライバーとやって叩きのめされちゃったけど(笑)。
グランツーリスモはやはりリアルで好きでしたね。
ゲームはまだたまにやってて、ここに来る前にも実はやってたんですよ。
実は、いまも『ロードランナー』という懐かしいゲームにハマりつづけています。始めると、ついムキになってしまって、150面クリアなんてしちゃうんです。困ったもんですね(笑)。
––––すがやみつる先生、本日はお忙しいなかスグバースにお越しいただき、ありがとうございました!
注釈
※1:ユニティ(Unity)
ゲームエンジンの一つ(ゲームエンジンについて詳しくは後述)。
主にC#を用いてコンテンツの開発が可能。
※2:ゲームエンジン
コンピュータゲームにおいて、物理現象の再現などさまざまな処理があらかじめプログラムされたプラットフォームのようなもの。
各種の演算や描画処理などを行うアルゴリズムを共通化・ライブラリ化することで、汎用的にさまざまなゲームや異なるソフトウェア上で同じ法則に則った挙動を適用できる。
※3:C#
プログラミング言語の一種。
※4:アンリアルエンジン(Unreal Engine)
ゲームエンジンの一つ。
ゲームだけでなく、テーマパークや映画製作などにも利用されている。
※5:セカンドライフ
3DCGで作られた仮想世界のオンラインゲーム。
ゲーム内通貨を現実の通貨に換金することも可能で、目的がなく非常に自由度が高いことが話題になった。
現在で言うメタバース内のような概念が近い。
今から20年以上前の2003年にサービスがスタート。
ブームは収束したものの、根強くログインし続けているプレイヤーもいる。