将棋番組は、放送時間がカギ
昨日は棋聖戦5番勝負の第1局が、最初から最後までabemaTVで放映された。現在名人の渡辺明対藤井聡太2冠の、人気と話題を兼ね備えた棋士の対局ということで、注目を集める一戦だった。たくさんの目が視聴していたことだろう。
将棋は放送する側にとって、時間が長いのが問題点。現在、将棋の放送がいくつもあるのは、チャンネル数が増えたことと、媒体の種類がふえたことが大きな要因だ。これまでの地上波のチャンネル数であれば、そう何時間も割けない。何百チャンネルもある現在の状況だから、じっと動きのない画面を半日でも1日でも流していられるのだ。
そんな、初期のテレビとはとても相性の悪い将棋だが、テレビ放送が始まったのは1962年とけっこう早い。現在も続いている、NHKのトーナメント戦。まだビートルズもいない時代から、白黒テレビで放送されていたということだ。もっとも開始後しばらくは上位者8人の選抜戦なので、今のように通年というわけではなかった。選抜戦なので、その時代は複数回の優勝者が多い。
将棋番組はテレビ東京でもやっていたが(1972年~2003年)、これが30分番組。時間内に収めるために、40手までは事前に指し、番組内ではその手の再現というカタチで進められた。つまりは、視聴者にとっては最初から1手30秒の秒読みだった。スピーディーで、NHK杯より見やすく感じられたものだ。
MXテレビで女流の鹿島杯(1996年~2006年)も放送したが、当時MXテレビはテレビを持っている人全員が見られる放送局ではなかった。そしてこれも、放映時間の制約があった。8人枠という、ちょっとした季節ものという感じの放送。また持ち時間が、10分の1手30秒とアマ棋戦より少ない。
時間を潤沢に使えるようになったのは、BSやCSができてから。囲碁将棋チャンネルの銀河戦は通年放送する棋戦で、ご丁寧にも週内に1度再放送してくれる。棋戦が諸事情によりなくなってしまうこのご時世に、安定して続いている。今期で29期目。
NHKもBSができてからは、A級順位戦最終日や竜王戦を朝から深夜までぶっとおしで放送するようになった。定期でなく、イベントのようなものだが、それでも、一つの競技をほぼ終日映しっぱなしというのは、昭和の時代では考えられないことだった。
abemaTVはインターネット放送で番組もジャンルごとに分かれているので、時間をかけても問題ない。ニュースやアニメなど、1つのジャンルで複数チャンネルがあるものも多い。そのうち将棋も、2チャンネル、3チャンネルと増えていくかもしれない。
ただ、ぶっとおしの放送には工夫がいる。将棋は棋士がじっと考えている時間が大部分なので、番組としてのつなぎが重要だ。深夜の台風情報のように、「次の指し手までしばらくお待ちください」とはいかない。
現在は、解説の棋士が詳細に手の解説をしてくれて、将棋のファンであれば楽しめるようになっている。もっとファンを増やすためには、解説以外にもうちょっとくだけた内容も必要かなとは思うが、でも、ある程度将棋に凝っている人であれば、充分に面白くなっている。
本当に、今出演している棋士の方々は、将棋ファンを楽しませる解説をしてくれている。以前は、口下手な棋士の解説が多かったのだ。NHKは解説者を話術ではなく段位で選んでいたから、無口な人に当たると眠くなった。
明日、abemaTVでは、羽生善治九段対佐藤康光九段のA級順位戦という、すごい人気の組み合わせが放送される。かなりの視聴率だろうし、それに、他の棋戦以上に対局開始時の視聴率が高いように思う。ぼくも、この2人が入室して、駒を並べる姿を観たい。