CD Store たいへん記(1)Icicle Works の1st
先月『RecordStoreDay』の日にレコード盤に関する記事を書いたが、それを見に来てくれる音楽好きな方がいて、ぼくもその方の記事を読ませていただている。そこにはレコードやアーティスト、音楽に対する知識と、そしてなにより、溢れる愛が詰まっている。
ぼくはほとんど洋楽だけで、また洋楽でも広く全般聴くわけではなく、ソウルやメタルは聴かない。範囲が狭いので、読ませていただく方々と嗜好が合致することはあまりない。でも、ジャンルのちがいなんて関係ないなぁと思ってしまう。深い思いはジャンルなど超えて一緒だからだ。
ただ、「思いは一緒」と感じるのが失礼に思えるほど、みなさんの記事から受けるこだわりは強い。記事を読ませていただいて、ぼくなどたいしたことないなと思う。甘いな、とも思ってしまう。マニアじゃない人からすれば、「甘い」ってなに? と笑うだろうが。でも好きな人なら分かりますよね、この表現。より深いこだわりに触れると、「自分なんて甘い」と思ってしまうことを。
ぼくは「甘い」が、それでもモノ好きの端くれとして、こだわりはいくつかある。
そのひとつは、「なんとしてもネットでなくお店で買いたいCDがある!」ということだ。
それらは、ちょうどCDが出始めたころにちょっとだけ活躍したマイナーアーティストの作品で、CD化に取り残されたようなカタチになっているので、とっても入手しにくいのだ。
その、お店で買いたいCDというのは、この3作品。
『The Politic of dancing』 Re-Flex
『Icicle Works』 Icicle Works
『Heartland』 Real Life
3つとも、1984年の作品。1984年は、これから音源がレコードからCDに移行するぞ、という転換期だ。
この時代以降は、さほどセールスの見込めないアーティストであっても、レコードとCDが両方発売されるようになるが、84年の段階ではビッグネームですらレコードのみだった。
なにしろ、レコードを借りてカセットで聴くというのが一般的な時代だった。レコードは利便性がなく高価なので、貸しレコード屋で借りてきてカセットに録音して、通常はカセットで聴くのが普通だった。カセットの巻き戻しをじっと待つ、虚しさ……。
ぼくはなんとか上記3作品をCDで買いたくて、CDショップに行くと、この3枚を紙に書いたものを渡して探してもらった。しかしどのCDショップでも、裏の倉庫からにこやかに出てきて「ありましたよ」という返答をもらうことはなかった。
どうにも偏屈すぎるこだわりだ。すでにレコードは持っているのだから。しかし、この愛する3枚は、CDでも持ちたかった。それも、店で現物を手渡ししてもらって。
この3作品を生み出したそれぞれのバンドは、これ以外、チャートにはまったく出てきていない。もっともRe-Flexに関しては、このファーストのみで解散している。ともかく、この、彼らの代表作だって、シングルカットがトップ20にも届いていない。「知る人ぞ知るバンド」なのだ。「知る人ぞ知る」というのは、「たいていの人は知らない」という意味でもある。
これを探し回ったのだから、ないのも当然だ。
何軒か空振りすると、探す気力が失われてくる。しかしそこで、探し出せそうなきっかけがあって、なんとか粘れた。
まずは、Icicle Worksのリーダーの Ian McNabbのソロを新宿で見つけた。
これはなんとも地味な作品で内容にはガッカリさせられたが、でも気力は上がった。そして次に、Icicle Worksのベスト盤に出会った。彼らが何枚かアルバムを出していたことは知っていたが、セカンドやサードを見たことはなかった。そんな中で、ベスト盤を見つけたのだ。ベスト選集が出ていることすら意外なのに、なんとそれはCD2枚組だった。ぼくは最初、全曲集かと思ってしまった。
このベストも、新宿。さすが新宿だ。むか~し、西口のビルの1室にあるプログレ専門店に行ったときに「新宿って奥が深い」と思ったが、30年以上たった今もそれは変わっていない。プログレ専門店には、なぜかスタジャンを着た人が多かったことを記憶している。それと、どよーんとした雰囲気。
こんな小出しの情報に助けられて、コツコツ探し続けられた。もっとも上記3バンドの中でIcicle Worksは見つかりやすいだろうという意識は持っていた。ドラマーだったChris Sharrockが最後期のOasisに加入していて、ともかく関係者の1人が表舞台にかろうじて引っかかっていたからだ。
そしてようやく、彼らのファーストアルバムをCDで手に入れることができた。
邦題、『木霊』。
この年代に洋楽を聴いていた人なら、落ち葉舞うスタジオで3人組が演奏していたビデオクリップを覚えているのではないだろうか。
これもまた2枚組。オリジナルアルバムの他に、もう1枚付いている。シンプルによろこぶには邪魔な存在だけど、ボーナストラックが付いているよりはマシだ。2枚目は無視できるからだ。
それにしても、オリジナル部分が10曲に対して2枚目が16曲とは。
今回はとりあえずIcicle Worksまでで、(2)に続く。