【全編無料】課題図書レビュー『柳田知雪スケッチー』
一頃、読書感想文の効用なんてものがTwitterで争点になっていましたが、Sugomoriでも今月から始めました。課題図書レビュー!
今回は数名のライターたちが課題図書スケッチーのレビューをくり広げます。それぞれが同じ内容に関してどのような感想を持つのか?ぜひ巣篭もりのお供にお楽しみください!
レンタルショップの社員・川住憧子。仕事に彼氏、せわしないけれど、どこかぼんやりとした毎日を送る彼女は、ある日、一人のガールズスケーターに心を奪われる。ちょっとずつ見失ってきた希望、ちょっとずつ見えてきた将来。自分を変えるには今しかない。スケートボードに魅せられた女子の挫折と再生の日々。
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最近、しみじみ思う。
この世界は知らないことだらけ。
今回のこの『スケッチー』に関してもそう。
図書レビューという企画がなければ、きっと自分では読まないどころか知らないまま終わっていた。
そもそも、この漫画の主題であるスケボーだが、私はこの妙にザリザリした板を持って電車に乗ってくるウェイ系の人が苦手だった。
東京でこれだけ交通が発達して、人も多いのになぜわざわざその板を持ち運ぶのか。アスファルトの上を転がるタイヤの音はうるさいし、何か怖いし、できれば関わりたくない人というカテゴリーに完全に押し込めていた。
正直、バンドマンと同じくらい信用できない人種に分類していた。
だがしかし、これを読んでその偏見も和らいだ。
多分、私が今まで想像していた人もゼロではない。でも、やってる人のみんながみんなそうじゃない、ということもこの漫画が教えてくれた。
とある女の子は、世界で活躍するスケボー選手のファッションに憧れたり、またとある女の子は、映画で見たスケボーの魅力に惹かれたり、そして、スケボーに付随した文化への造詣が深い人がそれはもうおしゃれな話をしてくれたりする。
まさか、スケボーの話をしていて、急に頭の中にジャズが流れてくることがあるなんて思いもしなかった。
などなど、スケボーの魅力は間口が広いらしい。
コミックの話の間に、実際にスケボーをやっている女の子の記事が挟まれている。それを読むと、漫画以上にさまざまな理由でスケボーをやっている女の子がいるんだな、と知った。
経歴もさまざまで、たまに練習中の怪我の思い出まで書かれていて、でもすごく楽しそうにスケボーをやっているのが伝わってくる。
ここまで読んで、だんだんスケボーに興味が出てきました?
私は多分、目の前に板があったらちょっと乗ってみちゃうと思う。
そんなところで、内容について触れていきます。
今更ながら、少し前に読書感想文の意義、みたいな話がtwitterのトレンドに上がっていたけれど、私は元来めちゃめちゃ読書感想文苦手だ。
それを加味したうえで、この先も読んでいただけるとありがたいです。
大まかなあらすじを言うと、何かしらの悩みをそれぞれに抱えた女の子たちがスケボーをする話。
まだ2巻だから、断定的なことは言えないが、きっとスケボーを通して明るい未来を目指していくのだと思う。多分。
タイトルの『スケッチー』というのは、スケート用語で『トリックをメイクしたけど完璧でなく微妙なとき。するい、イケてない人も指す』だそうだ。
初めて聞いた時は、スケートをする人のことを指すのかと勝手に思い込んでいたが、よく考えればそれはスケーターとかとケートボーダーとかかもしれない。と、反省した。
読書感想文だけでなく、英語も苦手だった。
タイトルからスケート用語を使っているこの漫画は、お話の中でも頻繁にスケート用語が出てくる。ほとんどの登場人物がスケボー初心者なので、乗り方からそういう用語まで全部きちんと解説もしてくれるから、「へぇ」ボタン押したり、「そんな言葉あるんだ、かっけーじゃん」と思ったり。
まず、表紙を開いて最初のページから、女の子が颯爽とスケボーで滑る絵が描写されている。その女の子が誰、なんて説明もなしにそのシーンから始まるのも潔くてカッコイイ。
ここからはネタバレも混じりながらいきます!
オムニバス形式で進んでいくスケッチーは、スケボーに惹かれるいろんな女性の目線から物語が語られる。
そうして、それは人間誰しもそうであるように、考えてみれば当たり前のことだけれど、みんながみんな悩みを抱えていきていた。
何気なく話したその人も、夜独りで泣いているかもしれない。今日優しくしてくれやあの人も、家に帰れば仏頂面でスマホの画面を見ているかもしれない。
そういう生活感や、キャラクターとしての息遣いが胸に迫る勢いで伝わってきた。
どのキャラクターにも感情移入間違いなしなのだが、私が1番好きだな、と思ったのは主人公のアコとレンタルビデオ店で働くしほちゃんだ。
しほちゃんは本人曰く、自分探しの旅の真っ最中。そんな中、家族の法事に出席。
幼い頃から自分に事あるごとにちょっかいをかけてくる従兄弟も来て、仕事で成功し順風満帆という感じがまた見下してるようで鼻につく。
親戚たちからも仕事はどうなの? とか、恋人はできたの? とか、誰もが一度は聞かれたことがあるような言葉の応酬を食らう。
「周りから見たら適当に生きてるように見えるかもしれないけど、こっちは頑張ってんだよ!放っとけ!」
って叫べたらどれだけ楽か。あ、これは完全に私の主張。
叫んでも何も変わらないし、余計自分の立場が悪くなるだけって知ってるから、きっとみんなやらないのだけれど。
そんなこんなで、1人家に帰ってベッドに喪服のまま倒れ込むしほちゃん。
もともとファッションが好きだった彼女は、泣きそうになりながら見たインスタで、スケボー選手のファッションの魅力に惹きこまれ……ということで、彼女もアコと一緒にスケボーを始めるのです!
スケボーと出会えてよかったね……と私はちょっと涙ぐみました。
私の推し、しほちゃんはきちんと自分の道を見つけられるのか!
でも他にも魅力的な女の子がいっぱいいるんです!
3巻も9月18日に発売ということで楽しみー!
柳田知雪
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Sugomori 2020年9月号
旬の食材を題材にさまざまなジャンルで活躍する書き手たちによる小説をお届けします。 毎週月曜・木曜に新作を公開予定です。
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