
【海外記事】効果のない10の成長戦略と戦術(Elena Verna)
この記事について
エレナ・ヴェルナ(Elena Verna)氏は、B2B SaaS業界における成長戦略の専門家です。
彼女は15年以上にわたり、プロダクト主導の成長(Product-Led Growth, PLG)戦略を通じて企業のスケールアップに貢献してきました。これまでに、SurveyMonkeyの成長担当SVP、MiroのCMO、Amplitudeの成長責任者、Dropboxの成長・データ部門責任者など、数々のリーダーシップポジションを歴任しています。
今回の記事『効果のない10の成長戦略と戦術』ではエレナ・ヴェルナが、チームが試みてもうまくいかない10の成長戦略と、お気に入りの3つの成長フレームワーク、そして従来とは異なるキャリアパスを模索するためのアドバイスを紹介しています。
感想
もっと早くこの記事に出会いたかった!
昨年、私は競合のマーケティング施策をそのまま模倣し、見事に失敗しました。
まさにエレナ・ヴェルナ氏が指摘する「競合の戦略をコピーしてもうまくいかない」を体感した形です…。
多くの企業で成長戦略を築いてきた彼女のメッセージには学ぶべき点が多く、今後の仕事にぜひ活かしていきたいと思います。
効果のない10の成長戦略と戦術
効果がない10の成長戦略と、代わりに何をすべきか?
成長戦略を考える際、「これをやれば成功する」と思い込んでいる施策が、実際には期待通りの成果を出さないことがよくあります。エレナ・ヴェルナは、「うまくいかない10の成長戦略」を指摘し、より実践的なアプローチを提案しています。本記事では、その内容を整理し、マーケターが何を意識すべきかを解説します。
1.成長チームの採用を急ぎすぎると失敗する
成長戦略のために「まずはヘッド・オブ・グロースを採用しよう」と考える企業は少なくありません。
しかし、プロダクトマーケットフィットが弱い段階や、ARR(年間経常収益)が100万ドル以下の状態で成長専門の人材を雇っても、十分な成果を出すのは難しいです。
成長チームは、すでにある程度のデータが蓄積され、実験を行う余地があるフェーズで本領を発揮します。
逆に、プロダクトの基本的な価値が定まっていない状態では、成長施策を導入しても効果が見込めません。
まずは、 コアプロダクトの価値を磨き、ユーザーが自然に定着する状態を作ることが先決 です。
2.成長チームは衰退するビジネスを救えない
事業の成長が鈍化したり、競争が激しくなったりすると、「グロースチームを立ち上げれば解決する」と考えがちですが、それは誤りです。
成長チームは、すでに プロダクトが順調な状態を加速させる ことには向いていますが、プロダクトマーケットフィットが崩れたり、競争環境が悪化したりすると、施策を打っても大きな効果は期待できません。
もし主要な指標が悪化しているなら、まずは プロダクトそのものの問題やマーケティングの根本的な課題に取り組む必要があります。成長戦略は、その基盤がしっかりしている前提で初めて機能します。
3.リニューアル(UI/UXの変更)で成長を期待しすぎるのは危険
プロダクトのデザインを一新することで、成長のブレイクスルーを生み出せると思うかもしれません。しかし、デザイン変更は短期的な解決策にはなりません。むしろ、UI/UXの大幅な変更を行うと、ユーザーの行動が変化し、一時的に指標が悪化することがほとんどです。
リニューアルを行う場合は、長期的な視点で計画し、ローンチ後も継続的な最適化を行う覚悟が必要 です。新しいデザインの効果が出るまでには数か月単位の時間がかかることを理解し、慎重に進めるべきです。
4.競合の戦略をそのままコピーしてもうまくいかない
「競合がやっている施策だから、うちでも導入しよう」と考えがちですが、これは多くの場合失敗します。
なぜなら、他社の施策が成功している理由は、その企業の顧客層やマーケティングチャネルに適したものであり、同じ方法が自社に当てはまるとは限らないからです。
競合分析は重要ですが、単なる模倣ではなく、自社のユーザーや市場に合った独自の施策を作る ことが成長の鍵になります。
5.ゼロから施策を考えるより、すでにあるフレームワークを活用する
新しい課題に直面すると、「ゼロから解決策を考えなければ」と思いがちですが、多くの成長課題はすでに誰かが経験し、解決策を試してきたものです。
成長戦略を考える際は、過去の成功事例や既存のフレームワークを活用する ことで、より早く、効果的な結果を得られます。
例えば、同じ業界の企業がどのように課題を解決したかを調べたり、経験者にアドバイスを求めたりすることで、試行錯誤の時間を短縮できます。
6.SEOやSEMばかりに頼ると成長が頭打ちになる
広告(SEM)や検索エンジン最適化(SEO)は重要な集客手段ですが、これらは基本的に「他社のプラットフォームに依存した成長」です。GoogleやFacebookのアルゴリズムが変われば、突然トラフィックが減少するリスクもあります。
より持続可能な成長を目指すなら、バイラル要素(口コミ)、ユーザー投稿、コミュニティの構築など、自社がコントロールできる成長エンジン にも投資すべきです。
7.すべての施策をA/Bテストするのは非効率
データに基づいた意思決定は重要ですが、すべてをA/Bテストしようとするとスピードが落ち、意思決定が遅くなることがあります。
特に、トラフィックやコンバージョン数が少ない場合、統計的に有意な結果を得るのが難しくなります。
低リスクな変更や、明らかに影響が大きい改善策については、直感を信じて素早く実行する方が良いケースもあります。
8. 色の変更や小さなUI調整だけでは成果は出ない
「ボタンの色を変えたらCVRが上がる」「入力フォームを少し短くしたら離脱率が減る」といった細かな最適化を繰り返しても、それだけで大きな成長は生まれません。
これらは 成長の微調整にはなりますが、成長の根本的な推進力にはなりません。
小さな最適化だけでなく、新しいチャネルの開拓やプロダクト戦略の改善など、よりインパクトの大きい施策にリソースを投じることが重要です。
9. アドバイザーを活用しないのは機会損失
自社だけで成長の最適解を探そうとすると、時間がかかるだけでなく、見落としも増えます。成長戦略を加速させるためには、経験豊富なアドバイザーを活用するのが有効です。
ただし、いきなり長期契約を結ぶのではなく、ワークショップや短期プロジェクトを通じて、本当に価値があるかを見極める ことが大切です。
10.成長戦略は18か月ごとに見直す必要がある
成功した施策も、時間が経つにつれて効果が薄れていきます。現在の成長モデルに頼りすぎず、新しいチャネルや施策を試し続けることが重要です。
企業の成長には、一つの正解はありません。継続的な学習と実験を繰り返しながら、最適な成長戦略を築いていくことが求められます。
関連記事の紹介
My 9 Favorite Growth Frameworks
The Racecar Growth Framework
Growth Loops are the New Funnels
以上です。引き続き勉強を続けます。