【読書メモ】マーケティング22の法則 要約
約3年前にP&G出身で有名企業数社にてCMO経験がある方と話す機会がありました。
その方にマーケティングの仕事で1番役に立った本は何ですか?と質問した時に紹介されたのが『マーケティング22の法則』でした。
定期的に読み返したくなる章があり、今後も参考にすることが多そうなので、noteにポイントをまとめておこうと思います。
はじめに
マーケティングにも不変の法則がある
自然に法則があるようにマーケティングにも
不変の法則がある。
⽴派なマーケティング計画を⽴てようとも、
マーケティングの不変の法則を知らなければ、その法則によってつまずくこともありうる。
ポジショニングとは?
本書内のキーワードである為、
しっかり押さえておきたい。
ポジショニングとは、⾒込み客の⼼のなかに、その商品の位置づけ(ポジショニング)を⾏うこと。
このポジショニングを知ることにより、競合他社との位置づけや、その位置づけの意味を知り、⾃社の戦略を⽴案することができる。
例えば、⾃社のポジションを知り、差異化、特異化を推し進めていれば、ほかに追従されない独⾃のポジションを獲得することも可能。
このように企業は、⾒込み客の⼼の中にひとつのポジション、即ちその企業の強みや弱みをこのポジショニングで知るだけでなく、競合他社との⽐較上の違いを作り出すことができる。
第1章 ⼀番⼿の法則
⼀番⼿になることは、ベターであることに優る
マーケティングの基本的な課題は、あなたが先頭を切れる分野を創造すること。これが⼀番⼿の法則。
他に優っていることよりも、先頭を切ることの⽅が⼤切。
最初に顧客の⼼に⼊り込むことの⽅が、最初に⼊り込んだ商品より⾃分の商品の⽅がベターであると⼈に納得させることよりもはるかに容易。
【事例】⼀番⼿の法則で市場をリードするブランド
コーラといえば?→コカ・コーラ
四輪駆動車といえば?→Jeep
安全剃刀といえば?→ジレット
フライドチキンといえば?→ケンタッキー
スポーツウェアといえば → ナイキ
ハンバーガーといえば → マクドナルド
電気自動車といえば → テスラ
スマートフォンといえば → アップル
オンラインショッピングといえば → アマゾン
検索エンジンといえば → グーグル
フリマアプリといえば → メルカリ
絆創膏といえば → バンドエイド
生成AIといえば → Chat GPT
セロハンテープなら → セロテープ
どんなカテゴリーであれ、市場をリードするブランドはほとんどといって言いくらい、顧客の心に最初に入り込んだブランドである。
ブランド名がその商品の総称になると、ブランド名が使われる
例えば、バンドエイド、ファイバーグラス、
サランラップ、ベルクロなど。
検索することを「ググる」と表現することも
同じ事象だと思います。
第2章 カテゴリーの法則
あるカテゴリーで⼀番⼿になれない場合には、
⼀番⼿になれる新しいカテゴリーを作る
たとえ顧客の⼼に最初に⼊り込まなかったとしても、⼀番⼿になれる新しいカテゴリーを⾒つければよい。
私達は新しいカテゴリーを発⾒することによって、落後者を勝者に変えることができる。
あなたが新製品を開発する時、真っ先に問題にすべきことは「この新製品は競合商品よりどこが優れているか」ではなくて、「どこが新しいか」ということである。
⾔い換えれば、この新製品はどのカテゴリーで⼀番⼿かということ。
【事例】アンハイザー・ブッシュ社(アメリカ最大のビール会社)のミケロブ
当時アメリカではオランダからの輸入ビール、
ハイネケンがアメリカで大きな成功を収めていた。
アンハイザー・ブッシュ社の担当者たちは「高級輸入ビールの市場があるくらいだから、高級国産ビールの市場もあるに違いない」と考えた。
そして同社は国産初の高級ビール、ミケロブの販売に乗り出す。ミケロブの販売実績は2対1でハイネケンを上回った。
【事例】レッドブル社とエナジードリンク
レッドブル社は飲料市場において、「エナジードリンク」というカテゴリを創出。世界中に販路を築き、高いシェアを獲得。
ちなみに日本でレッドブルが販売開始されたのは1997年。
栄養ドリンク(疲労回復・栄養補給に役立つ飲み物)はおじさんが飲むものという印象がある中で、エナジードリンクはスポーツ・ビジネス・勉強でパフォーマンスを高めるために若者が飲むものという印象が根付いていった。
第3章 ⼼の法則
市場に最初に参⼊するより、顧客の⼼の中に最初に⼊る⽅がベター
世界初のパーソナルコンピューターはMTTS8800だがもうこの世に存在していない。
テレビ、⾃動⾞、洗濯機も同じで最初に作った会社は姿を消している。⼀番⼿の法則に誤りはないが「⼼の法則」が修正を加える。
市場に参入するよりも顧客の心の中に最初に
入り込むほうがベター。
心の法則は知覚の法則(第4章)に続く法則。
もしマーケティングが商品ではなく、知覚をめぐる戦いだとすれば、市場よりも心の方が優先されなければならない。
ひとたびあるマインドが形成されると、これを変えることは不可能
あるマインドが既に出来上がっている場合は、それが変わることはまずありえない。
マーケティングにおいて最も無駄な⾏為は、⼈の⼼の中を変えようとする試み。
⼈々は⾃⼰の⼼を変えたがらない。⼈は⼀旦認識したら、彼らの⼼にファイルされてしまう。もはや別のタイプの⼈間にはなれない。
【事例】IBMと大型コンピューター
IBMは大型コンピューター市場に真っ先に参入したわけではない。一番手は「ユニバック」のレミントン・ランド社だった。
IBMは絶大なマーケティング努力によって顧客のマインドを最初につかみ、コンピューター戦争に早々と勝利したのである。
第4章 知覚の法則
マーケティングとは商品の戦いではなく、知覚の戦いである
マーケティングとは商品の戦い(最良の商品が勝利する)である、は幻想。客観的な事実というものは存在しない。
ベストな商品などありっこない。マーケティングの世界に存在するのは、ただ、顧客や⾒込客の⼼の中にある知覚だけである。知覚こそ現実であり、その他のものはすべて幻。
【事例】アメリカでの輸⼊⽇本⾞トップスリー
アメリカでは輸⼊⽇本⾞のトップスリーは
ホンダ、トヨタ、ニッサン。
多くの幹部はブランド間の戦いは、品質、スタイル、⾺⼒、価格をめぐる戦いだと考えているが、どのブランドが勝利を収めるかは、
ホンダ、トヨタ、ニッサンについて⼤衆がどう思うかによって決まる。
【事例】コカ・コーラ ニューコーク、ペプシ、コカ・コーラ クラシック
ソフトドリンクメーカーの幹部の中には、マーケティングとは味の戦いだと信じている⼈たちもいる。
コカ・コーラ ニューコーク、ペプシ、コカ・コーラ クラシックの味覚テストと実際にマーケティング戦争上で勝ちを収めたものはどれなのか?
コカ・コーラ社が20万人を対象に実施した味覚テストによれば、コカ・コーラ ニューコークが1位。ペプシが2位。コカ・コーラ クラシックは3位だった。
しかしマーケティング戦争において1位の売上はコカ・コーラ クラシック。
私たちは信じたいと思うものを信じる。
同様に味わってみたいと思うものを⼝にする。
【補足】消費者がしばしば間接的な知覚を頼りに購買決定をするという事実
人はある商品に対して、⾃分⾃⾝の知覚ではなく、他の⼈の知覚をもとに購⼊決定する。左記は「周知の事実の法則」と呼ばれている。
第5章 集中の法則
マーケティングにおける最も強⼒なコンセプトは、⾒込み客の⼼の中にただ⼀つの⾔葉を植え付けることである
複雑な⾔葉や独⾃な⾔葉である必要はない。
辞書からすぐに引っ張りだせるような簡単な⾔葉がベスト。
ただ⼀つの⾔葉、ないしコンセプトに焦点を絞ぼりこむことによって、⼼の中にそれを”焼き付ける”。これこそ究極のマーケティングにおける供え物。
ex.製品事例
コカ・コーラ・・・・コーラ
ボルボ・・・・安全性
ドミノ・・・・宅配
法則の注意点
✓あなたのカテゴリーの中で使⽤可能な⾔葉であること。
✓アイデアは他社から借りるのもあり。
✓最も効果的な⾔葉は、簡潔で、利点を伝える⾔葉であること。
ハロー効果による影響
ハロー効果とは⼀部の好ましい、または好ましくない印象評価が全体に及ぼす影響及び効果。
顧客に確固たる利点をひとつ植え付けることができれば、顧客の⽅でもそれ以外の利点を数多くその商品に添えてくれる。
マーケティングの基本は焦点を絞り込むこと
活動の領域を絞れば絞り込むほど、⽴場が強⼒になる。何もかも追いかけているようでは、結局何もモノにはできない。
【事例】フェラデラル・エクスプレス社
フェラデラル・エクスプレス社は見込客の心の中に「翌日配送」という言葉を植えつけることに成功した。
同社は自社の商品ラインを犠牲にし、一晩で荷物を配送するというサービスに焦点を絞り込んだ。
【事例】食品会社ハインツとケチャップ
ハインツは、「ケチャップ」という言葉を消費者の心に植え付けているが、まだ満足せず、同食品の属性を浮き彫りにすることにした。
「どろりとしたケチャップ」というのが、同社がケチャップの濃さを他に先がけて謳いあげた言葉。
「どろりとした」という言葉を植えつけることによって、ハインツは50%のシェアを維持している。
第6章 独占の法則
⼆つの会社が顧客の⼼の中に同じ⾔葉を植え付けることはできない
⾃分の競合会社が顧客の⼼の中にある⾔葉を植えつけていたり、あるポジションを占めている場合、その⾔葉を受け付けようと試みるのは無駄である。
【事例】ボルボと「安全」という言葉
ボルボは「安全」という言葉を占有している。
メルセデスベンツやゼネラル・モーターズなど多くの自動車メーカーが、安全性を主体にしたマーケティングキャンペーンを実施しようと試みてきた。しかしボルボ以外は、顧客の心の中に安全というメッセージを投げ入れることに成功していない。
第7章 梯⼦の法則
採⽤すべき戦略は、あなたが梯子(はしご)のどの段にいるかによって決まる
商品のカテゴリー毎に、顧客の心の中に商品の梯子が存在する。各々の梯子段の上にブランド名が乗っかっている。
マーケティング戦略は、いったいあなたが顧客の心の中に入っていったのは何番目だったのか、そしてその結果、梯子のどの段を占めているのかによって決まる。
もちろん高ければ高いほどいい。
2番⼿、3番⼿のブランド⽤に使える戦略がいくつかある
すべての商品が同じに作られている訳ではない。顧客の⼼の中には購買決定をするにあたって⽤いる序列尺度(※)が存在する。
商品のカテゴリー毎に、顧客の⼼の中に商品の梯⼦が存在する。
※序列尺度とは
測定対象において 相互の距離を判定しえないものに対して,それを順位づけることによって評価を⾏う⽅法。
【事例】レンタカーのAvis(エイビス)
当時、レンタカー業界で真っ先に顧客の心の中に飛び込み、梯子の最上段を占めていたのはハーツ社だった。
Avisが2番目に、続いてナショナルが3番目に飛び込んでいた。
Avisは何年にも渡って、サービスの質の高さを広告してきた。「レンタカー会社の中で最高のサービス」というのがキャンペーンの謳い文句のひとつだった。読者はこの広告を見て、首をかしげた。
梯子の最上段にいるわけでもないのに、どうやってこの会社は最高のレンタカーサービスを提供できるのだろうか、と。
そこでAvisは顧客の心の中の序列を上げるために適切な手を打った。
梯子段上の自社の位置を素直に認めたのである。「Avisはレンタカー業界でナンバーツーに過ぎません。だからこそご利用頂きたいのです。私たちは一生懸命頑張ります」と。
それまで13年間Avisは赤字続きだった。それがナンバーワンであることを自ら認めたとたんに黒字、それも大幅な黒字に転じた。
Avisが成功したのは、顧客の心の中で、自社をハーツのポジションと関連づけたこと。
商品によって梯⼦の段数は違う
個⼈の⾃尊⼼にかかわる商品(⾃動⾞、時計、カメラ)も関与度の⾼い商品で購買の頻度は低いのにも関わらず、格⼦の段数は多い。
購買の頻度が低く、不快な経験を伴いやすい商品は梯⼦の段数が極めて少ない(⾃動⾞のバッテリー、タイヤ、⽣命保険)。
マーケットシェアと梯⼦段上の⾃社位置
マーケットシェアと、顧客の⼼の中にある梯⼦段上のあなたの位置との間には相関関係がある。
梯⼦の上限は7つ?
顧客の⼼の中には「7段の法則」なるものが存在しているように思われる。
ハーバード⼤学の⼼理学者、ジョージ・A・ミラー博⼠によれば、平均的な⼈間の頭脳は、⼀時に七個以上のものを処理することはできないという。
【補足】梯⼦の考え方について
⼈は、⼼の中で商品やブランドに対する無意識または意識的な順序づけを⾏っている。
この順列・順序で、それぞれの商品やブランドの位置関係を、梯⼦を想像することで明確にしようとするのが、梯子の考え⽅である。
第8章 ⼆極分化の法則
⻑期的に⾒れば、あらゆる市場は⼆頭の⾺の競争になる
マーケティングを長期視野でとらえれば、競争は二大主役(一般的には、古くから信頼されているブランドと新進ブランド)の間の全面戦争に収斂されていく。
GE社の伝説的な会⻑兼CEOであるジャック・ウェルチは、こう述べている。
マーケティングは長期的には二頭の馬のレースになるものだということを知っていれば、自分が短期の戦略を練る際に役に立つ。
【事例】日本のスマホメーカー別シェア
調査会社のMMDLabo株式会社(MMD総研)が2019年11月に行った「2019年12月 iPhone・Androidシェア調査」は下記。
1位.Apple:42.8%(前年46.7%)
2位.ソニーモバイル:18.4%(前年14.9%)
3位.シャープ:12.6%(前年12.1%)
【事例】日本の家庭用ゲーム機
日本で人気の高い家庭用ゲーム機はPlayStation(62%)とSwitch(51%)となり、いずれのシェア率も半数超え。
一方Xboxは、これら2つの機種と比べて日本国内のマーケットシェアが低く、保有率は1割(5%)にも満たない。
どちらの事例も二頭の馬のレースになっており、二極分化の法則が当てはまっているように見える。
第9章 対⽴の法則
ナンバーツーの座を狙っている時の戦略は、ナンバーワンの在り⽅によって決まる
強さの中には弱さが同居している。
いかにナンバーワンが強⼒であろうとも、ナンバーツーを⽬指すものにとっては形勢逆転のチャンスがある。
ちょうどレスラーが相⼿の⼒を利⽤するように、企業もまた、ナンバーワン企業の強みを弱点へと転じるべき。
自社が梯⼦の上から⼆段⽬にしっかりした⾜場を築きたいのであれば、まず自社の上段にいる会社を研究する。その会社の強みは何処か。
どうすればその強みを弱みに転じることができるか。
自社がしなければならないことは、ナンバーワンのエッセンスを⾒つけ出し、顧客にそれと反対のものを提供することである
(相⼿の上を⾏こうとしないで、相⼿との差別化を図るのである)。
これがしばしば⾒られる伝統企業対新興企業の図式である。
マーケティングとは多くの場合、正当性をめぐる戦いである
最初にわれこそ本物なりのコンセプトをつかんだブランドが、多くは競争相⼿を偽物呼ばわりできる。
【事例】ペプシコーラは対立の法則をどう活用したか?
コーラ市場において、コカ・コーラは歴史ある揺るぎない商品。100年の伝統を誇る商品。
ペプシコーラは対立の法則を使ってコカコーラのエッセンスを逆手にとり、ペプシを新しい世代の選択商品とすることに成功した。
いわゆる、ペプシ・ジェネレーション。
ナンバーワンの対極に位置することによって、ナンバーワン以外の全ての企業からビジネス機会を奪う。
旧世代がコークを飲み、ヤング世代がペプシを飲む構図を同社を意図的に作った。
【事例】バーガーキングのキャンペーン
同社が「お好みのものをどうぞ」のコンセプトで始めたキャンペーンは、マクドナルドの大量生産方式を槍玉にあげた。
「揚げないで、あぶるだけ」とか「ホッパーはビッグマックより大きい」などのキャッチフレーズで、マクドナルドに攻撃を加えた。
このようなキャンペーンによって、バーガーキングはトップに対抗するナンバーツーの地位を固めた。
第10章 分割の法則
時の経過とともに、一つのカテゴリーは分割し、二つ以上のカテゴリーに別れていく
あらゆる分野で、法則に沿って分割が起る。
コンピュータ、自動車、テレビ、ビール、音楽など分裂し続けるアメーバのように、マーケティングの舞台は、絶えず拡大を続けるカテゴリーの海とみなすことができる。
【事例】自動車の場合
自動車は最初は単一のカテゴリーとしてスタートし、3つのブランド(シボレー、フォード、プリムス)が市場を支配していた。
その後、カテゴリーは分割され、今日では高級車、普通車、低価格車もあれば、大型車、中型車、小型車もある。またスポーツカー、四輪駆動車、RV、ミニバンなどが存在する。
【事例】ビールの場合
いまや輸入ビールもあれば、国産ビールもある。
ライトビール、ドラフトビール、ドライビール、ノンアルコールビールまである。
第11章 遠近関係の法則
マーケティングの効果は、長い期間を経てから現れる
長期的なマーケティング効果は、短期的な効果の正反対である場合が多い。
バーゲンセール販売は会社の売上を短期的には増やす。
しかし、同時にバーゲンセールは、 顧客に「正規の」価格では買わないよう教え込むことになる。結果、長期的には売上を減らす。
品物を安く買えるということのほかに、バーゲンセールは顧客に「あなたのところに正規の値段が高すぎる」ことを語っている。
バーゲンセール期間が過ぎると、顧客は 「バーゲンセール」で評判の店を避けるようになる。
【事例】ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)はセールをしない
ルイ・ヴィトンはラグジュアリーなブランドイメージを保つため、値下げ販売をいっさい行わない。また、アウトレットも出店していない。
ルイ・ヴィトンの製品はトレーニングを積んだ職人、クラフトマンの手作業によって製造されており、値下げをしないことで、①高品質な商品を、②コンサルティブな販売スタイルで提供し続けることができている。
【補足】ブランド選好が低い状態でのセールは死へのスパイラルか?
P&G出身で株式会社MDの石井さんはブランド選好が低い状態で価格を下げることに関して、下記のように言及をしている。
ブランド選好が低い状態でセールを実施することが、いかにリスクが高いことか、分かる文章だと思いました。
第12章 製品ライン拡張の法則
ブランドの権威を拡げたいという抗しがたい圧力が存在する
本書の中で、第12章はダントツで破られている法則とのこと。
ラインの拡張は効果が上がらないという圧倒的な証拠があるのに、経営トップはなぜか効果が上がると信じている。
一つには、ラインの拡張は長期的には失敗するにしても、短期的には成功することがありうるからである(第11章参照)。
経営陣はまた、自分の会社やブランドを盲目的に信奉している。そうでなければ、ペプシコがペプシライトやペプシAMの失敗にも関わらず、クリスタルペプシを発売したことの説明がつかない。
ex.拡張ブランドは、いずれも首をかしげたくなるような商品ばかり
アディダス ランニングシューズ
→アディダス コロン
リーバイス ブルージーンズ
→リーバイス・シューズ
【事例】IBMの製品ライン拡張
IBMは大型コンピューターに精力を集中していた当時は膨大な利益を上げていた。
しかし、その後に製品ライン拡張を行い、パーソナルコンピュータ、ペンコンピュータ、ワークステーション、ミッドレンジ・コンピュータ、ソフトウェア、ネットワーク、テレフォンなどを販売。
同社はあらゆることに首を突っ込み、業績はトントンにも達しなかった。
第13章 犠牲の法則
何かを得るためには、何かを犠牲にしなければならない
犠牲の法則は製品ライン拡張の法則の反対。
あなたがもし、今日成功することを望むのであれば、あなたは何かを放棄しなければならない。
犠牲にできるものとしては、三つのものが考えられる。すなわち、製品ライン、ターゲット市場、絶えざる変更の三つである。
【事例】犠牲の法則で成功したトイザらス
破産したインターステイト・デパートは帳簿をチェックして、儲かっている商品だけを扱うことにした。
それが玩具であった。玩具のみしか扱わないので社名を「トイザらス」と 変更することに決めた。
トイザらスは、アメリカの玩具小売市場の
20%を占めるまで成長する。収益率も極めて快調だった。
【事例】ペプシコーラの10代市場を狙う戦略
50年代後半、コーラ業界内の売上においてコカ・コーラはペプシコーラを5:1でリードしていた。
60年代に入って、ペプシコーラはようやく犠牲のコンセプトに基づく戦略を編み出した。すなわちティーンエイジ市場を除くすべてのものを犠牲にすることにした。
やがて、ティーンエイジたちのアイドルであるマイケル・ジャクソン、ライオネル・リッチー、ドン・ジョンソンらをキャラクターとして抱えることによって、ティーンエイジ市場を見事に開発した。
第14章 属性の法則
あやゆる属性には、それとは正反対の、優れた属性があるものだ
ナンバーワンと張り合えるような正反対の属性を探してみるほうが、はるかに利口なやり方である。
ここでのキーワードは「正反対の」である。「同じような」ではだめ。
コカ・コーラはオリジナル商品で、年配の人たちが選ぶ商品だった。これに対してペプシは、ヤングの選ぶ商品としてのポジショニングに成功した。
マーケティングはアイデアの戦い。だから、もしあなたが成功したいと思うなら 独自のアイデアや属性を用意して自分の努力をそこに傾注しなくてはならない。
独占の法則/自社の戦い方
虫歯予防は、歯磨きにあっては最も重要な属性で、所有する価値のある属性である。
しかし独占の法則はいったんある属性が競争相手の手中に収まったら一巻の終わりだという単純な事実を指摘している。
あなたは重要度の劣る属性に切り替え、その商品カテゴリーでとりあえず小さいシェアに安住せざるをえない。
この場合、あなたの仕事は異なる属性を確保し、その属性の価値をきわだたせ、シェアを高めていくことである。
【補足】属性とは
どのような商品も、色、形、重さ、素材、価格など、それぞれ異なる範疇に属して区別、 分類するようなことができる。
この質的に区別できる、それぞれの範疇を「属性」という。
例えば、歯磨きの効能・効果の属性としては、「口臭予防」「歯周病予防」「虫歯予防」「美白効果」などの属性が存在し、この属性・区別にしたがって、持つべき製品特徴やブランド展開が考えられている。
歯磨きには、このような効用・効果の属性だけでなく、色、容量、原料、形態、 価格などの属性も存在する。
第15章 正直の法則
あなたが自分のネガティブな面を認めたら、顧客はあなたにポジティブな評価を与えてくれるだろう
問題点を認めることは、企業や人間の本性に相反する行為である。
だから、顧客の心の中に入り込む一番効果的な方法はまずネガティブ面を認めて、それをポジティブ要素に変えることだと聞けば、あなたは
驚くかもしれない。
マーケティングとは多くの場合、単純明快さの追求
いったん固まった顧客の心の中を変えることはできないのだから、あなたのマーケティング努力は、すでに顧客の頭の中に定着しているアイデアやコンセプトを利用することに注がれるべきである。
マーケティング計画は、それを”しつこく繰り返し”、徹底させることに使わるべき。
第16章 一撃の法則
各々の状況においては、ただ一つの動きが重大な結果を生む
マーケティングにおいて実効を上げうる唯一の行動。歴史の教訓によれば、上記とは、大胆な一撃である。
いかなる状況においても、実質的な成果を上げうる作戦行動は一つしかありえない。
マーケティングにおいて、ほとんど例外なく、競合会社の弱点はただ一か所しか存在しない。 そしてその場所こそ、攻撃力の全てを集中すべき目標地点なのである。
第17章 予測不可能の法則
自分で競合相手のプランを作成したのでない限り、あなたが将来を予測することはできない
たいていのマーケティングプランにそれとなく含まれているのが、未来についての仮説である。けれども、未来予測に基づいて立てられた
マーケティングプランは、たいがい失格する。
未来を「予測する」ことと、未来に「賭ける」こととは違う
どんな程度にしろ、ある確度をもって未来を予測できる人は誰もいない。
一方で仮説を持って、サービスの可能性に賭けるのは悪いことではない。
第18章 成功の法則
成功はしばしば傲慢につながり、傲慢は失敗に繋がる
エゴ、うぬぼれはマーケティングを成功させる上で敵。
求められるのは客観性。人は成功すると、とかく客観性を失いがちになる。彼らはしばしば自己の判断を、市場のニーズと混同する。
高ぶりは滅びにさきだち、誇る心は倒れにさきだつ。
会社が大きくなるにつれて一番ありがちなこと
経営トップが最前線との接触を失ってしまう事が会社の成長を押さえるただ一つの最も重要な
要素である。
第19章 失敗の法則
失敗は予期することもできるし、また受け入れることもできる
たいていの会社はとかく物事を見限るよりも、
何とか取り繕ってみようとする。
ミスを認めながらそれに対して何の手を打たないというのでは、あなたのキャリアに傷がつく。
上手なやり方は早いうちに失敗を認め、損害を食い止めること。アメリカン・モーターズは乗用車から撤退し、ジープに専念すべきであった。
IBMは、自分たちの過ちを認める何年も前に複写機を見限るべきであったし、 同様にゼロックスもコンピューターを見限るべきであった。
第20章 パブリシティの法則
実態は、マスコミに表れる姿とは逆である場合が多い
万事が順調であるとき、会社はパブリシティを必要としない。
パブリシティを必要とするのは、たいてい困った時である。歴史は、マスコミでは成功しながらマーケティングでは失敗した事例で満ち満ちている。
ハイテク車タッカー四八型、USフットボール・リーグ、ビデオテクスト、 オートメーション工場、パーソナルヘリコプター、組み立て住宅、 テレビ電話、ポリエステル製ツールなどなど。
これらのパブリシティの要点は新製品が成功しそうだというところにはなく、既存の商品がそれによって廃れそうだというところにあった。
第21章 成長促進の法則
成功するマーケティング計画は、一時的流行(ファッド)ではなくトレンドの上に築かれるファッドは大洋の中の波浪(水面に起こる表面波)、トレンドは潮流。
ファッドはしばしばパブリシティの対象となるが、 トレンドはほとんどならない。
波浪と同じようにファッドも資格に捉えることは容易だが、 大急ぎで激しい上限運動を繰り返している。
トレンドは潮流と同じく目にはほとんど見えないが、 長期的には極めて強力な力を発揮する。
ファッドのことは無視したほうがいい
ファッドが現れたら、水を差すことを心がけよう。
あなたの商品への需要を長く維持する方法の
一つは、その需要を完全には満足させないことだ。
しかし一方、マーケティングにおいて利用すべきベストにして、最高に利益をもたらしてくれるものは、長期にわたるトレンドなのである。
第22章 財源の法則
しかるべき資金がなければ、せっかくのアイデアも宝のもち腐れとなる
世界最高のアイデアであっても、それを実現するための資金がなければ、あまりモノにはならないのである。
投資家も、起業家も、さまざまなアイデアの発明家も自分たちの優れたアイデアに必要なのは、専門的なマーケティング上の支援だけだと考えているように見受けられる。
これほど的外れな考え方はない。マーケティングとは、顧客の心の中で争われるゲームである。
顧客の心の中に入っていくには、資金が要る。そしていったん入り込んでも、そこに留まるにはまた資金が必要なのである。 資金の伴わないアイデアは無価値である。
成功するマーケッターは常に先行投資を行う
彼らは収益をそっくりマーケティングに再投下する。このため、に2,3年の間は利益を受け取らないのである。
マーケティングの世界を動かすものは金である。成功することを今望むのであれば、あなたは、マーケティングという車輪を回転させるのに必要な資金を見つけてこなければならない。
以上です!