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革のお店として10年経ったSugiSの一つの着地点を長い話で包んで、長い題のプレートに真っ赤に燃える情熱を沿えて

どこかにありそうな料理の名前風の題にしてみました。
こんな題にした意味なんて別に特にありませんが、情熱だけは思いっきし込めました。

是非読んで欲しい

野鍛冶 ト SugiS

その在り方こそ、SugiSの着地点


全てを羨望の眼差しで見て聞いてしっかりと心に焼き付けた。
感動したから書く、いつか読んで欲しい人がいるから書き記す。

さぁ召し上がれ。


それは農鍛冶とも村鍛冶とも書く

読み方は「のかじ」「のうかじ」「むらかじ」なんとも日本的で好きな響き

日本語だから、当然か? 或いは僕のおじいちゃんが農家だったからか?

初めて聞いた時に何かこう、とてもビビビッとくるものがあった。

そもそも僕の中での鍛冶屋といえば、・刀を打つ鍛冶・包丁を打つ鍛冶があるのは知識は薄いにしろ知っていましたし、材料となる鉄や玉鋼についてはよく行く大好きな島根の山間部に残る史跡や資料館でよく知っていた。

知っていたけど、刀鍛冶と鉄では心と体は動かなかった。

野鍛冶で心が震えて、気付けば体が動いていた。

そんな野鍛冶との初めての出逢いは本だった はず・・

民藝を好きになってまさぐるように関する本を読んで、そこから民俗学的なことも好きになって、色々な本を読む中で出逢った言葉だったはず・・

今となれば、ハッキリは分からないがとにかく出逢えたことに感謝。

じゃあ、その野鍛冶ってなんなんだ?

田畑で使用する鋤、鍬、鎌や、漁具、山林で使う刃物など、日常的に使う様々な鉄製品を作ったり、直したりする仕事。
昔は各集落に一つはあったらしいです。

現代では時代と共に農業なども機械化が進んで、需要がなくなってしまってほとんど残っていないという・・

確かに田舎にある民俗資料館などに行くと全ての物が鉄と木や竹で出来たものばかりですし、納得です。

そんな野鍛冶に僕はなぜ震えたのか?

・日常生活に使う物をより使いやすく作ること
・修理の際には、持ってきた人の背格好などを見て、よりその人にとって使いやすいように改良して直すこと

そう、振り返ってみれば僕がこの10年革を生業としてやってきたことと同じことだったんです。

更に僕の勝手なイメージとして、
ハイブランド=刀鍛冶 (震えず、動かずも納得)
SugiS=野鍛冶 (震えて動くのも納得)

ということだったんじゃないかな、なんて。


じゃあ、2024年の現代に野鍛冶屋さんは残っているのか?

便利な時代です、ネットで検索ありました。

やっぱり大好きな島根、出雲に。
(あとで広島県内にあることも分かりましたがまだ行ってはいない)

そんなん、あること知ったらさ

行くしかねぇ

すぐさま島根にIN


グーグルマップで場所や営業時間を確認、まさしく営業中とのこと。

意気揚々と到着

しかし、誰もいない

久々に見た、家の軒先にいる番犬。

番犬がしっかりと番犬していて死ぬほど吠えられる。

それならばと電話をかけてみる

転送電話で繋がった。

とっても気の良い感じのおじちゃんが出る(以下おじちゃん)
「今ね~ちょっと外出とって昼過ぎには戻るけど~」


「じゃ~また昼過ぎに来ます」

とりあえず、行けるという確証を得たことに安堵しつつ昼過ぎまで時間もあるので、出雲大社へと続く参道で気になっていたビームスなどを見てまわる。
ビームス自体はそれこそよくデザインされている出雲オリジナルな商品もあって楽しかったし、勉強にもなった。
隣の駅舎や、電車の展示も良かったなー、短すぎるぐらいの電車はそれだけで可愛いですし、その小さい電車の中に学生やおじいちゃんおばあちゃん、老若男女が乗っているのを見ると一つの家族じゃないけど、それもこの町にある一つのカタチとして見えて、とても色々と考えさせられる。

ただ、その他のお店はほとんどが俗化しつくされていて感情が全く動かなかった。
つげ義春は多分ここに来ることはないだろう・・なんて。

そんなこんなで、昼ごはんにはやはり出雲蕎麦をチョイス、早目の時間のおかげで待たずに入店。

そんな真昼のど真ん中、携帯に着信アリ!

知らない携帯番号

出る

さっきの気の良いおじちゃん
「これから帰るけど、今日はどうですか?来られますか?来られるなら今から戻るけど~」


「行かせてください!」

おじちゃん
「でしたら、あと一時間後には戻ってるから~、その後はずっといるから~」とのこと

美味い蕎麦も食べ終わり、今から行けば丁度良いぐらいの時間になるぞと、来た道と同じ道を戻るのは普段は嫌いだが意気揚々と戻る。
(しかし蕎麦って食べ過ぎても罪悪感がゼロなのは、なんでだ?)


再び 到着

アレ 犬が吠えない

声もかけていないのにおじちゃんがすぐに出てくる

行くとは行ったものの何時に来るかもわからないのに、おじちゃん絶対外見ながら待っててくれたじゃん!

(文章だとあれですが、駐車場とお家の位置などの関係でそうとしか言えない状況でした)

そうして、午前中には番犬に死ぬほど吠えられながら遠巻きに「あ~あそこでつくってるんだ」と見ていた作業小屋を、今度はありったけの熱意を込めて見させていただく。

ようやっと写真登場。

はい 痺れる
ここで火をおこすのか

おじちゃん「せっかく来てくれたし、火たいてみようか~」

感謝感激雨あられ
コークスを置いて、
さすがに現在は鞴(ふいご)ではなくブロワーで風を送ってすぐに下の状態に

ちなみに鞴の中に仕込む一部としてたぬきやその他動物の革を使用していたという・・
こんなところにも革が使われているのです

勝手に親近感
熱い
僕の心も熱い

熱い思いが通じた わけではないが
地元の小学生が体験しているという鉄皿を「つくってみる~?」とのこと

「ハイ!!」

感謝感激雨あられ
やってる時の写真がないけど、熱した平たい鉄を中央の鉄の台上でハンマーで叩く

写真はないけどあなたのイメージ通りで大丈夫、間違いない。
おじちゃんにも少々トンカンしてもらって
ジュッと冷ます
仕上げはおじちゃん

いきなりお邪魔してさ、
体験までさせてもらってさ、本当感謝しかねぇ。

玉鋼なども見させていただき、一通りの説明を玄関の子上り口で受ける

こういうところも最高です
出来上がった鉄皿と
本来の目的は万能包丁が欲しくて伺っていたのです

それもさ、普通に買うのとは違うくておもむろに台所から持ってきてくれたニンジン
「実際に切ってみて、一番しっくりくるのを選んでね」とのこと
同じような作りでもやっぱり物によって全然違うらしく、
フィット感を確かめさせてもらう、それも何本も・・僕は料理人でもないのに・・

感謝感激雨あられ

言い過ぎると薄味になっちゃいますね

そうしてこうして、購入させていただく包丁も無事に決まり、
これはもうせっかくここまで来たんだから、聞くしかないことを
革職人の必需品「革包丁も作れますか?」と聞いてみるだけ聞いてみた。

「当然できる」とのこと

むしろ今一本あるとのこと

!!!

買わないっていう選択肢あると思う?

この革包丁についてはまた書くとして・・

どこまでも親切丁寧に教えてくださって、ここまででも充分に僕の中では濃く満足度の高い状態だったのですが、帰り際に更に一押し深く心に刺さることがありました。

僕が尾道からきたこと(革でモノをつくっているとは結局一言も言っていない)
あまりの熱量をもって質問していたからということもあるかと思いますが・・
「本当にありがとうございました。」とおじちゃんの家を後にしようとしたところ、

おじちゃん
「せっかく来てくれたからな~何かないかな~」っとまた台所へIN

冷凍庫をガサガサ・・

しじみを二袋くれたのです。

実は午前中に出掛けていたのは魚屋の友達の所に行っていたらしく、その魚屋さんが二袋持たせてくれたんだと、
「みそ汁ぶっこんだらすぐ食べれるから~」っと。

それがさ、何が心に刺さったかって一つじゃなくて二つなんですよ、
だいたいそういう時ってさ、自分の分と相手の分で二袋もらったんだったら、一つずつじゃないですか?

そこを二袋くれたのです。

「タケノコ掘ったんだけど昨日食べっちゃったからね~しじみしかないんだ~」なんて言いつつ・・

これは心に刺さりました。

あったかさです。

とにかく、しっかりお礼を言っておじちゃん家をあとにしました。
(しじみはさすがの宍道湖産、身がデカくて美味しくてこれも最高でした)

もうこれでさ、一日の満足度バッチリですよ。

最高の気分です。


ちなみに購入させていただいた包丁などは、なんと研ぎ直しと柄の交換が永久に無料とのことでこれにもびっくり。
(ご近所だったらより最高なんですが)

いや、本気でさ、こういうお店が残って欲しいんだ。

こういうお店が続けていける世の中でも、あって欲しいんだ。

とても良いお店でした。

ただ現状としては、やはり昔はこの辺の各集落にも一つはあった野鍛冶屋も今はもう一つもないとのこと、更には材料となる砂鉄なども材料屋さんが廃業してしまっていて、おじちゃんが自分で川に掬いに行ってなんとか調達してるということで、そんなのさ、どう考えても続けていくのは容易ではないですよね。

そういった状況でも遠方から「こんなのを作って欲しい」等の依頼があったり、農具の修理などもあるとのことです。

僕は熱をもったら聞かずにはおれない所がありまして・・

どうしても聞きたかったおじちゃんの次の代はどうなっているのか?ということ。
すると、息子さんが今は都会に出られているみたいですがおられるらしく、「いつか戻ってくるのかな~」なんて言われてました。

ただ、おじちゃん自身も小さい頃から鍛冶屋の仕事を手伝わされたりで「絶対やりたくない」と思っていた時期もあったらしく、「なかなか言えないよね~」なんて笑って言われていました。

あぶないところです、誰もいないってなったら思わず「僕やります」って言っちゃうところでした。笑


常日頃、出掛けた先で良いお店に出逢う度に、SugiSも良いお店にしたいと心底思う。

今回の野鍛冶屋さんは特に、SugiSという屋号で革を生業にして10年、自分のやってきたことが地に足がつくという感覚というか、自分がこれまでやってきたうまく言語化できていない部分と自分の中で不安を感じる部分だったことを自信を持ってこのまま僕の思うままに続けていけばいいと思わせてくれた、

これで良いんだ、と思わせてくれた
それが野鍛冶屋さんで
それがあのおっちゃん

その在り方こそ、SugiSの着地点

僕にだってできるはず。
SugiSがどんな形になったとしても良いお店づくりに励む次第です。


長ーい文を読んでくれてありがとうございました。
ここまで長文読んでくれたんだ、その時間の分をよければ革製品磨かせてくださいね。

便利な時代ネットで聞いてみた
「個人差や内容による差はありますが、一般的に1分間に読める文字数は400〜600字ほどといわれています」

じゃあ、間をとって1分500字として、今回の文字数4000文字。

=8分も!

読んでくれて本当ありがとうございます。

お店に来てくれた際には、是非言ってくださいまーせー。


その後の革包丁の話はこちら


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