2022ファジアーノ岡山にフォーカス28 『 漢気と前進 』J2 33節 群馬 vs 岡山(Away)
2022 J2 第34節 Away
ザスパクサツ群馬 vs ファジアーノ岡山
『 漢気と前進』
試合が始まるまで、どういったメンバーで、この試合を始めるのか。また、どういった形で、試合に入っていくのか。誰もが予想できない試合であった。試合後のインタビューや解説者の情報錯綜や、私自身も把握まで少し時間かかった。変幻自在に羽ばたく雉が、群馬の地で、久々に勝利の風に乗る事ができるかどうか、苦戦必至の一戦を振り返っていく。
1、木山マジック
水曜日に試合があるため詳細なメンバーへの言及は今回は割愛するが、19木村 太哉と39白井 陽斗が、久々にメンバー入りとした。群馬には、47川本 梨誉と、岡山ユース出身の22高橋 勇利也の名前こそなかったが、元岡山の21櫛引 政敏が、GK でスタメンメンバー入り。
試合の方は、4-4-2を予想していた岡山の形であったが、ボールを保持した時に後3枚となっているので、3-1-4-2という形を採用していたと思われる。そして、いつもと違うのは、10宮崎 幾笑がWBを担っている点にあるだろう。縦や横への選択肢があると軽いプレーが少し気になるシーンが多かったが、サイドに最初から張っている事で、退路を断った結果、仕掛けるプレーが心なしか増えた。WBは、ある程度守備も求められるが、10宮崎 幾笑は、守備を苦にしない選手で、逆にし過ぎるぐらいでもあるので、問題なくプレーできていた。
また、10宮崎 幾笑の後ろに一度で落として、裏へ抜けようという動きでパスを引き出そうというプレーは、この試合ではほぼなかった。むしろ、この試合では、チャンスメークや仕掛ける部分での良いプレーが光ったように映った。
逆に中央のIHに回ったのが、22佐野 航大である。もともとボランチの選手であったこともあり、ポジションを落して34輪笠 祐士とバイタルをケアすることもあったと思えば、そのボランチの34輪笠 祐士が、22佐野 航大のように攻撃参加する。
22佐野 航大の方が攻撃寄りの選手ではあるが、34輪笠 祐士も攻守で高いレベルのプレーできる選手であり、臨機応変に対応できるプレーで、攻守に関与できて、流動性があるという点で、非常に相性が良い選手であることが感じられた。
またこの3-1-4-2システムは、カウンタ―に弱いという致命的な弱点こそあるが、岡山の前から行く守備と個性豊かな前線のタレントと相性が良く、相手の守備組織を乱し、組み立てを阻害できる効果の高い超攻撃的なスタイルであると改めて感じた。
この形をスタートから採用して試合に入ったことで、岡山が押し込む時間帯が長く続いた。18斎藤 和樹のキープ力も効いていて、15ミッチェル・デュークも競り合いでの強さを随所で発揮した。
岡山は、ポゼッションとロングパスを織り交ぜた攻撃で、相手陣地でサッカーを展開できたことで、岡山の先制点は生まれた。余裕を持って前を向くというプレーを許さない事は、群馬の選手の体力的に消耗させるだけではなく、精神的にも消耗させることができる。
その先制点は、22佐野 航大が諦めずにプレスをかけてGK21櫛引 政敏の利き足でのパスコースを塞いだことで、利き足で蹴れなかったGK21櫛引 政敏のミスキックを誘発し、15ミッチェル・デュークへのプレゼントパスとなった。15ミッチェル・デュークは、そのボールを落ち着いてループシュートを放ち、そのシュートは、21櫛引 政敏の頭上を越えて行き、ゴールに吸い込まれて岡山が先制に成功した。
3-1-4-2を基本陣形とした形の幅のあるシステムの一番恩恵を受けているのは、得点を決めた15ミッチェル・デュークであるとこの試合では、強く感じた。15ミッチェル・デュークは、守備に意欲的で、むしろオーバーワークにも感じるほど献身的な選手ではあるが、この形であれば、その頑張りに2トップの相方のFWと2列目選手が加わる事で、実質的に6人がボールを奪うためにハードワークできる。
その結果、15ミッチェル・デュークが、ゴールに近い所でプレーする機会も増えた上に、競り合いに勝ったセカンドボールの回収率も上がる。7チアゴ・アウベスとも好連係が増えてきた中での、コロナというアクシデントであったが、横浜FCと群馬の両チームに対して、戦えているのも3バックで、形に出来ている事が一番大きいのではないかと強く感じた。
昇格に向けて、岡山の大きな武器になることは間違いないだろう。
2、総力戦
後半に入ると流石にメンバー的にもスコア的にも押し込まれる時間が長くなっていく。流れを変えるために、18斎藤 和樹の交代が迫られる内容が続いて、3-4-2-1(3-2-4-1)に近い形にして実際に下がったことで群馬へのDFラインへのプレッシャーが緩くなってしまうが、一方引いた位置で、8ステファン・ムークが、18齊藤 和樹の役割を受け継ぎ、守備とチャンスメーク両面での頑張りが目立つ一方で、やはり体力的な負担は大きくなっていく。
中盤で、27河井 陽介が、攻守で落ち着かせていく中で、流れを渡す事は許さないと、運動量の維持を図っていた岡山であるが、28長倉 幹樹が、高い位置でプレーする時間は増えてきた。23ヨルディ・バイスに向かって仕掛けるシーンもあるなど、同点から逆転を狙う群馬は、少しずつ前に運ぶスピードと意識を高くしていく。
7加藤 潤也に代わって入った40鈴木 国友に続き、9北川 柊斗に変えて11深堀 隼平と前線の選手を交代し、SBの25小島 雅也に変えて17山中 惇希も投入し、徐々に前進していく力をあげる群馬。
岡山が、創造性と運動量をベースとしたサッカーである以上、運動量が落ちてくると岡山が、前でプレーする時間は、どうしても短くなってくる。
木山 隆之監督も試合後にこう語っている。
3-1-4-2から3-4-2-1(3-2-4-1)への変更により「守備のほころび」=「スペース」という解釈で私は捉えましたが、簡単に被PA内への進入は許さない。シュートまで活かせない。そういった形にしていくことができた。
27河井 陽介を後に残す意図は、その後に投入された39白井 陽斗や19木村 太哉、9ハン・イグォンといった直線系の選手に対して、一工夫いれることで、好機を演出するチャンスメークの引き出しの多い選手も残して置きたいという意識の現れであるだろう。後は、34輪笠 祐士が良かったので、怪我や疲労が溜まるリスクのある90分間の出場を避けつることで、27河井 陽介の負担を減らす意味もあるだろう。
ただ、岡山が、時間経過と共に前から行く勢いを失って行く中で、岡山の群馬のビルドアップを阻害する力が弱くなり、群馬の形を作られるようになっていく。群馬の攻撃の特徴として、人数を掛け過ぎない攻撃にある。守備の約束事の少ない岡山の守備網の隙を「突く」のではなく「突いてくる」群馬。
人数の揃った所に対して、個の力や強さ、人数をかけた攻撃で、強引に打破するというよりは、「石橋を叩いて渡る」ように、岡山の弱い所を的確に探し当てる群馬。それでも岡山は、最後の所(ゴール)への道を開けず、最後まで粘り強く対応した。群馬も失点することで、2点差にならないように、最後まで慎重に攻めたが、1点が遠く、石橋を渡り切れなかった。
試合後のコメントで、群馬の大槻 毅監督は、次のように語っている。
岡山の壁を打破しようとする群馬と、それを許さない岡山の選手起用もあった。岡山が、最後の守備強度を高めるために、左CBに入っていた11宮崎 智彦に代えて、4濱田 水輝を入れる事でより堅くし、10宮崎 幾笑に代えて39白井 陽斗を投入する事で、カウンタ―の狙いを持ちつつ、スピードへの対応力を高める岡山。
その交代に対して、中盤での攻守でのリスク管理を担っていた33細貝 萌に代えて、27奥村 晃司を入れて、攻守でより強く出て行こうとする。スペースを消す相手にボランチでの攻守でのパワーは必要不可欠である。
その選手と同時に、試合中継中にも何度も攻撃参加で名前が出ていた19岡本 一真に代わり、14白石 智之に交代することで、その流れを引き継いで行こうとする群馬。
この群馬の攻勢もあり、岡山が前でプレーする時間は減って、ロングパス(パスのターゲットのあるパス)ではなく、クリア(自陣やゴール前から遠くに蹴る)が増えてくることとなった。
群馬は、少しずつ前に人数をかける勇気を持って前に入っていくというよりは、形を作ってゴールに迫る攻撃を最後まで継続するも、岡山が、8ステファン・ムークに代えて9ハン・イグォン、15ミッチェル・デュークに代えて、19木村 太哉を投入する事で、群馬の重心を後に釘を刺し、ラインを上げることも牽制して、試合をクローズにかかる。
こうした攻防の末に岡山は、苦しみながらも勝利できた。横浜FC戦から続くメンバーに適したサッカーへとアップデートに成功した事で、苦手とする群馬に対しても、連敗を回避し勝利できた。この結果、仙台のとの差を縮め、新潟と横浜FCに追走することもできた。群馬も1点を返す事で、勝ち点1を最低でも取りたいという強い気持ちを持って、岡山のゴールをこじ開けようとしていたが、最後まで岡山のゴールを割る事はできなかった。
3、漢気と結束(群馬)
試合運びや勝負を分けるポイントとなった21櫛引 政敏のミスキック。このミスキックに対して、群馬の大槻 毅監督のコメントは、群馬がここから先に進める言葉であったし、大崩れしない安定感のあるチームであることに納得のコメントを残しているので、見て欲しい。
全て重要な言葉であるので、この質問に関しては、全文引用させていただきました。岡山のこの試合への準備を称えた上で、21櫛引 政敏を責めるだけではなく、チームとしてできることがあったという事で、気持ちを切り替えることができる。また、そうしたフォローだけではなく、時期や状況を踏まえて、次は結果を残す事が重要であると檄も飛ばしている。「熱さ・冷静さ・優しさ・厳しさ」こういった人情味溢れるコメントに、繰り返しになるが、群馬の強さを感じた。
また、試合中に27河井 陽介へ危険なタックルをした27奥村 晃司に対して、「しっかり謝れ」と大きな声で伝える大槻 毅監督。
こうした部分を目にする(耳にする)と、群馬は良いチームだと改めて感じ、これから残り試合、共に最終目標こそ違うものの“勝利”という目標に関しては、同じなので、そこに向けて戦うライバルクラブの1つとして、一緒に戦い抜きたいと強く思えた。
群馬の「無理をしないサッカー」の上位互換の「やり直す勇気のあるサッカー」。苦しいサッカーではあるが、簡単に負けないサッカーであり、残り試合でどういった結果を残すのか、岡山サポーターですが、見届けたい。私は、全てのクラブに、こうした言葉を書いてますが、それだけサッカーを愛する選手や監督、クラブへリスペクトを持って、観戦していますし、八方美人な言葉で、岡山サポーターであることに矛盾するかもしれませんが、全てのクラブを応援しています。本当に応援したくなるクラブの多いJリーグは、良いリーグ。群馬と岡山の両クラブの選手・監督のチームの方々には、「良い試合をありがとうございました。」と伝えたい。
8/28(日)岡山戦 試合後記者会見コメント(大槻監督)
は、こちら(別サイト:ザスパクサツ群馬公式HP)
URL:https://www.thespa.co.jp/newsinfo/?p=6404
4、前を向く(岡山)
明日の山形戦に向けてのプレビューは、私の言葉やデータではなく、選手コメントを引用することで、プレビューとして、紹介することで、今回のレビューを終えたい。
15ミッチェル・デューク
19木村 太哉
最後まで読んでくださり有難うございました。
J2第33節 ザスパクサツ群馬戦 監督・選手コメント
は、こちら(別サイト:ファジアーノ岡山公式HP)。
URL:https://www.fagiano-okayama.com/news/p1473057798.html
文章・図=杉野 雅昭
text・figure=Masaaki Sugino
おまけ
ファジ造語
参考
2022ファジにデータでフォーカス2
「中盤の真田丸(本山丸)」
2022 J2第2節 岡山 1-1 徳島 レビュー
は、こちら(別サイト:SPORTERIA)。
URL:https://sporteria.jp/blog/sugi8823/6905499896963403777
筆者紹介
筆者紹介
某ゲームから野球派からサッカー派へと移籍。当時チーム名が、ジェフユナイテッド市原であった現ジェフユナイテッド千葉に興味を持つ。オシム(監督)と阿部 勇樹(選手)を中心にJリーグと代表をチェックしてきた。2008年より地元クラブであるファジアーノ岡山のサポーターデビュー。そこから、多くのファジの試合を見てきた。忘れることのできないエピソードが年々増え、シーズンを重ねる毎に想いは強く深くなり、2021シーズンは、初めて号泣。心からサッカー好きで、戦術の奥深さや、プレーの凄さなど、サッカーの本質での攻防にフォーカスを当てて、客観性と冷静さを意識した文章を投稿している。そのレビューへと突き動かす原動力は、サッカーへの情熱。熱さと冷静さを兼ね備えたフォーカスを今後も目指して、投稿を目指していくことで、サッカーの魅力の発信と、サッカーを通じた交流による、感動の共有と縁の繋がりを広げて行くことが楽しみ。ただ、たまに調子に乗り過ぎて失敗してしまう悪癖もある。そんな私ですが、noteやSNS、スタジアム等で、交流できたら嬉しく思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。
代表作
2021ファジアーノ岡山にフォーカス46
J2:第42節:ファジアーノ岡山 vs ジェフユナイテッド千葉
「有難う有馬さん、有難う椎名さん、有難うファジ」
は、こちら(別記事)。
URL:https://note.com/suginote/n/n511a1b501907
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自分の感じた事を大事にしつつ、サッカーを中心に記事を投稿しています。今後とも、よろしくお願いいたします。