2023ファジアーノ岡山にフォーカス22『 勝利を貴方に届けるために~12(+1)~ 』J2 第12節(A)vsブラウブリッツ秋田
本当に長かった。試合後のインタビューで、いつもクールである木山 隆之 監督の目が潤んでいた。ロッカールームに戻った時の、選手の喜びの声が、インタビューしている部屋にまで届いていた。映し出されたサポーターの目も潤んでいた。
実に8試合ぶりの勝利だ。しかし、なぜ私達は、ここまで勝利を願うのか?それを「昇格したい。」や「頂を目指すために。」という言葉で説明がつかないほど、この試合の選手、監督、サポーターの誰もが喜んでいた事は、画面越しにでも伝わって来た。
岡山の勝ち方、岡山が勝利を目指す原動力、岡山というクラブ、様々な視点で、試合レビューというテーマを越えた枠で、この試合を振り返っていきたい。
まずは、本稿で、重要な部分となる試合後の公式コメントから紹介させていたたくところから入っていきたい。
引用元サイト紹介(選手と監督公式コメント)
ファジアーノ岡山公式HP
2023 J2 第12節 ブラウブリッツ秋田戦 監督・選手コメント
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J2 第12節 岡山 vs 秋田(23/04/29)試合後コメント(選手)
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J2 第12節 岡山 vs 秋田(23/04/29)試合後コメント(監督)
は、こちら(別サイト)。
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1、結束と主張のハーモニー~献身性(謙心正)~【前半】
この試合の前半の岡山の戦い方は、まさにやるべきことが明確であった。秋田と岡山の形は、ほぼ同じ4-4-2で、お互いにロングボールを前線のターゲットに当てて、セカンドボールを回収して、ゴールに迫るという戦い方を両チームは採用していた。
自陣へ放り込まれたロングパス勝率や相手陣地へ放ったロングパスを収める力。ここは、最終ラインの4選手の内、43鈴木 喜丈、5柳 育崇、23ヨルディ・バイスは。空中戦に強い選手が、3選手も揃っていた事。前線には、18櫻川 ソロモンがいたこと。ここで、相手に勝ち続けたことで、守備は大きく崩れる事はなく、攻撃でも形を作る事ができた。
しかし、秋田は、この戦い方を開幕から続けて来ていて、岡山が、ここまで徹底してロングパスを蹴り込んだのは、今季初めてと言っても良い。セカンドボールへの回収率の高さは、秋田の方が圧倒的に高かった。やはり、これは、11人全選手が、このサッカーに最適な選手を集めての編成であるからだ。多少のミスはあっても常に秋田は、100%自分達のスタイルを体現でき、抜群の安定感がある。
セカンドボールを拾われたことで、岡山の守備では、秋田は瞬く間にゴール前の攻撃に移られて、シュートを狙って行くという形に対しての対応を迫られる。そのため流石に、シュートまでは抑える事ができず、1堀田 大暉のファインセーブがなければ、失点していたことだろう。
岡山の攻撃では、18櫻川 ソロモンの所で、勝てて収める事ができても素早い寄せと強度の高い守備、囲い込む守備を前に、個から個に繋げる攻撃までは、繋げる事ができなかった。ただ、個の力で、相手に勝てたシーンもあった事で、前半だけで秋田の3選手に、イエローカードが出る事となった。内容を見てもDFの2選手と、ボランチの選手だ。シュート0本だったが、岡山のやりたいことはしっかりできていた。
ただ、秋田が自分達のサッカーを100%体現できていたのに対して、岡山の連係ミスや慣れないプレーによるミスから生じる隙や組織的劣勢が、どうしても生まれていた。しかし、岡山にとっては、予測範囲内で、そこに対してはハードワーク、粘り強さ、個の力で、組織的劣勢をカバーすることで、0-0で、後半勝負に持ち込むことができた。
前半は、シュート0本であったが、22佐野 航大の仕掛けや18櫻川 ソロモンの強さ、7チアゴ・アウベスの狙いで、秋田にプレッシャーをかけ続けることできたことは、間違いなく後半に繋がる。
木山 隆之 監督も前半を次のように語っている。
苦しい前半であったが、1堀田 大暉のビックセーブみたいなプレーがあったことで、0-0で終える事ができた。やはり、この部分が、この試合での最大の勝因であったことは、間違いない。
秋田を知る6輪笠 祐士のコメント。
同じシーンで、ある程度は運や状態を左右してくるのが、サッカーであると筆者は感じてる。同じシーンでも、チームが好調であれば、バーが助けてくれることもある。しかし、流れが悪ければ、中東であった浦和レッズのACLでの同点ゴールのように得点になることがある。
だからこそ、運に左右される要素を勝利に導く流れを持って行く事ができるかどうか。勝率を上げるためには、この試合で良くなかったセカンドボールを回収して、ゴール前まで迫られる回数を減らす強さ、そして、前線での少ない人数でも崩せる、連係・精度・駆け引きといった部分の練度も上げて行く必要も当然ある。
ただ、筆者とすれば、秋田に対して、それはプレス網をいなして、ゴール前まで押し込み、パスワークで崩すというのが理想であるが、この試合のようにリスク小さくして、隙が見えてくる後半勝負という戦い方が、今のメンバーや戦力を考えた時に、ベストであると感じていて、細かい修正で隙をなくすという戦い方が、今季の岡山であれば、理想的でもあり、現実的な戦い方であると結論づけたい。
2、結束と主張のハーモニー~献身性(謙心正)~【後半】
後半は、イエローカードが秋田に三枚も出ているというアドバンテージを活かすためにも、14田中 雄大を代えて、19木村 太哉を投入することで、ドリブルで仕掛ける・運ぶシーンを増やしていくというメッセージを籠めた交代を後半頭から行った岡山。
前半とは違い、ボールを保持できる時には持って、プレスをいなして、良い形でロングパスを入れる意識が高くなったことで、そういったシーンも増えただけではなく、前半も競り勝てていた18櫻川 ソロモンと7チアゴ・アウベスを縦の関係に変更した。この効果も解説者の方が指摘されていて、7チアゴ・アウベスが裏を狙えるようなシーンやゴールにやや近い位置で持てるというシーンを作る事ができた。
ただ、こういったロングパスのセカンドボールへの守備は、秋田は素晴らしく、7チアゴ・アウベスは、最後まで仕事をすることができず、この試合では、早い段階で、左SBの2高木 友也と交代した。
FWと左SBとの交代という事で、岡山は、ここで3-4-2-1に変更した。16河野 諒祐が、一つ前の右WBに回り、交代して入った2高木 友也が、左WBに回った。左右のSHであった22佐野 航大と19木村 太哉は、18櫻川 ソロモンのポストプレーの近くでプレーすることを意識しながらも自由にプレーする2シャドーも左右のWGの意味を込めた形に変更した。
この結果、岡山は、秋田のロングパスに対して、DFラインの3枚でしっかり跳ね返して、セカンドボールに対して、左右のWBとボランチ2枚で、回収することで、秋田の攻撃を前半と比べて、抑える対応力を高める事ができ、守備が安定するだけではなく、後でのプレスに対してのビルとアップの安定感も飛躍的に良くなった。
更に岡山は、8試合ぶりの勝利を手にするために、次の手を打つ。状態が上がって来た99ルカオを18櫻川 ソロモンに代えて投入し、4-4-2に変更後に決定的な仕事ができている22佐野 航大に代えて、8ステファン・ムークを投入。18櫻川 ソロモンも22佐野 航大もまだまだやれる選手ではあるが、試合を更にするために、決断よく交代カードを切っていく木山 隆之 監督。
99ルカオを頂点にして、8ステファン・ムークが22佐野 航大に変わり2シャドーの一角に入ったことで、99ルカオのゴールに向かう推進力やゴールに迫るシュート、8ステファン・ムークは、22佐野 航大にはないボールを収めるポストプレーや強度の高い守備を生み出した。この効果により、前線でも岡山がボールを持てるようになり、より攻撃の形が増えて、岡山の攻撃が加速した。
岡山が、前半と比べてやや押し返した後半だが、両チームとも決め手がない中で、試合が動いたのは、ゴール前での混戦で、8ステファン・ムークが倒されて獲得したPKからであった。23ヨルディ・バイスが、いつもと違うコースに蹴り込み、GKの逆を突き、後半42分に大きな先制点を決めた。結果的には、このゴールを死守した岡山が、実に8試合ぶりの勝利を掴んだ。
前半を凌いで、90分間で勝負を決める。まさに、今季の岡山の勝ち方というのが、初めて見えた試合となった。選手や監督は、この後半の攻防をどう捉えているのか。
今季の岡山は、後半に色々と手が打てる。一時期は、怪我の選手が多く、なかなかベストメンバーや思うような戦い方こそできなかったが、この試合では、全てが巧くいった。ただ、それでも0-1。苦しみながらの0-1。この勝利は、確かに大きいが、ここから勢いを生み出すには、6輪笠 祐士の語っていたコメントのように、もっとチームとして、高みを目指さないといけない。
しかしながら、この試合の岡山は、まさに献身性。チームの勝利のために我慢する戦い方ができていた。
勝利のための道筋を漢字で造語を作り、筆者が表現するならば、謙心正(謙虚な心で正しいことを実戦する)。
岡山の武器である献身性で、謙心正で、戦い切り、待望の8試合ぶりの勝利に繋げることができたのだ。
まさに結束と主張のハーモニーよって、手にできた勝利!
3、理想的な勝ち方かサッカーか~勝ち(価値)~
理想的な勝ち方ではあったが、岡山が理想とするサッカーではないだろう。もし、この試合の秋田戦のサッカーが、岡山の理想とするサッカーであれば、開幕からこの戦い方を採用しているだろう。
しかしながら、この試合に関しては、この戦い方が一番、勝利の可能性が高かったと感じていて、試合前にロングパスを主体とした攻撃で、戦って欲しいと考えていた。後半の動きに関しては、理想的とするサッカー像である。
では、対戦相手である秋田の選手や監督は、この試合をどう考えているのか、見ていきたい。
この秋田の敗因に関しては、岡山が引き分けてきた中でも類似している点があるように感じる。やはり、サッカーでは、どうして負けたのか、どうして勝てなかったのか。体感的には、似た敗因が多い。多くのレビュアーは、ここに対して、深く掘り下げて行く中で、次節に向けて、どうすべきかという考察をしている。
ただ、岡山から見れば、秋田は秋田のサッカーをしてきたように感じた部分もあるが、やはり、サッカーはメンタルによって、内容が大きく変わってきて、勝敗をも左右する。長崎戦での4失点が、結果的には、岡山に追い風となった。岡山目線では、感じる事が難しい秋田のサッカーの変化を、秋田の選手は、強く感じていたのかもしれない。
そう考えると、岡山にとって、エースである7チアゴ・アウベスの復帰と8試合ぶりの勝利というのは、上位を追走するきっかけになる可能性もある。岡山にとって、心の支えにしたいのは、1試合しか負けていないことだが、ここをどう評価して、今日の勝利に繋がったのか分析した上で、山形戦に備えていくこととなる。
他のクラブから岡山を観た時は、やはり強力な外国籍選手が、所属するチームである。それは、やはり23ヨルディ・バイスや7チアゴ・アウベスという攻守の要、そこに8ステファン・ムークや9ハン・イグォン、99ルカオといったタイプの違う強力な外国籍選手が揃っている。9ハン・イグォンこそ苦しんでいるが、22シーズンの活躍を見ると、何かきっかけを掴んで、ここからアピールして、勝利に貢献して欲しい選手だ。
そこをこの試合では、秋田に対しても強み、武器として、戦うことができた。そこは、やはり一定の評価したい点である。しかしながら、秋田からすれば、やりたいサッカーができていた訳で、そこをどう封じるか、少なくとも前節の長崎のような爆発力を岡山は、秋田に対しては、発揮できなかった。前半のシュートも0本であったという事実。ここを重く受け止めていかなければならない。
本当に、選手が変わっても秋田のサッカーは、変わらない。徹底した反復練習と厳しいフィジカルトレーニングが、その裏にある事が想像できる。ただ、練習時間をどう使うかという観点で、同じ練習を岡山がやってそれが、勝利に繋がるかとは別である。
明確な秋田スタイルがあるからこそ、そこに則した編成とチーム強化ができる。そこを改めて感じた。
ただ、岡山が、戦術的多様性や個性的な選手を巧く活かしていくというサッカーである以上、秋田のサッカーから学ぶべき点も多く、今後に繋げて欲しい。
今後の岡山が、秋田スタイルのように、「理想的な勝ち方」と「理想しているサッカー」が、同じぐらい「価値」があり、「勝ち」に直結させる独自スタイルを確立させるのか。
それとも理想とするサッカーに「価値」を見出し、その延長上に「勝ち」があるのか。
岡山が、「頂」を目指すのであれば、どこかで、決断していかなければならない。
4、勝利を貴方に届けるために~12(+1)~
麓さんとのやりとりの中で、岡山スタイルとは何か。またそこを明文化していく必要があるのか。もしくは、明文化される時はくるのか。
私は、サッカースタイルだけに目を向ければ、岡山スタイルとは明確であると感じている。
「豊富な運動量・諦めない姿勢・粘り強い守備」この3つのワードは、監督が変わっても変わらない武器であり、岡山のサッカースタイルである。
ただ、ファジアーノ岡山サポーターとすれば、この3つは、どこのクラブの常識であり、これが、岡山スタイルだと言っても、それは、基本であり、「岡山スタイルじゃないよね?」と指摘されても仕方ない。
ここで、秋田の吉田 謙 監督の言葉と、岡山の23ヨルディ・バイス、6輪笠 祐士のコメントから岡山スタイルについて、考察していきたい。
やはり、秋田のサッカーは、堅守速攻をフィジカルとロングパスを軸とした速攻を核とするサッカーではないだろうか?そういったサッカーだからこそ、やるべきことはシンプルであり、そのサッカーを体現する上で、これだけシンプルな言葉に命を吹き込める吉田 謙 監督は、今の秋田の強さを作り上げるのに、非常にマッチした監督であると改めて感じた。
その秋田と比べると、岡山のサッカーは、的を絞り辛く、なかなか見えてこない。ただ、23ヨルディ・バイスの言葉にも6輪笠 祐士にも共通している点があった。
サッカーとしてのスタイルは、このコメントからは感じられない。「お互いにロングボールが多くなった。」という言葉が示すことは、ロングボールを蹴ることは、岡山のスタイルではなく、そうすれば、勝利に近いと判断して蹴っていたということである。
続いて、6輪笠 祐士のコメント。
6輪笠 祐士の勝因もやはり気持ちであった。岡山のサッカースタイルは、明文化が、最も難しい気持ち(感情)を武器に戦うチームであることが、ここから感じられる。
8試合ぶりに勝利に繋がったのは、どういった形でも良いから勝ちたいという気持ちであった。それが、ここから伝わって来る。
「豊富な運動量・諦めない姿勢・粘り強い守備」。これのみでは流石に、岡山スタイルとは声高々に発進することは難しい。
では、岡山らしいワードから、岡山スタイルの明文化に私なりに挑戦したいと思う。
ファジアーノ岡山のクラブ理念である
「子どもたちに夢を!」
2010年のチームスローガンで、今もシティライトスタジアムに垂れ幕のある
「Driving evolution for the next 100years ~100年続くクラブのDNAのために~」
ファジアーノ岡山史上で、最も共感と支持のあった23バイス選手の名言
「我々はファジアーノ岡山なので、絶対に諦めることはない。」
この3ワードを詰め込んだ
「100年夢を諦めないDNA」
これが、現段階で、筆者が考える岡山スタイルだ。
選手が監督が、サポーターのために、最後まで全力で諦めずにプレーする。
サポーターやファンも選手や監督が、勝てるように各自の応援スタイルで、最後までチームを応援する。
ファジアーノ岡山というクラブは、11人の選手に加えて、+1の監督、サポーター、ファンなどと共に、全ての人達と心を一つにして勝利を目指せるクラブだ。
序盤戦で苦しい順位でも、22シーズンでプレーオフで悔しい敗戦があっても、ファジアーノ岡山は、決して夢を諦めない。
試合では、選手、監督、サポーター、ファンが、ピッチの11選手の+1の選手のように、共に勝利を目指して戦える。
全ての人が主役で他の人のために戦えるのが、ファジアーノ岡山だ。
試合が無い日もフロントの方々が、選手や監督、サポーターが、万全の状態で戦えるように準備している。
試合当日もボランティアの方やフーズの方やスタッフが、試合以外も最高の試合にするために、準備している。
ファジアーノ岡山では、ピッチで戦う11選手ではなく、12選手で戦う。(+1)の12選手で、戦えるチームだ。
8試合勝てなかった岡山が、12節で、苦しみながらも勝利できた。
12節というサポーター番号の数字の節で勝利できたのは、偶然かもしれないが、この勝利のために、夢を実現するために、全力で1試合1試合諦めずに戦って来た。
8試合勝てなかった期間も、選手や監督、サポーター、ファンが諦めていれば、負けていたかもしれない。
ファジアーノ岡山というクラブは、選手や監督、サポーター、ファンが変わっても、決して変わらない強さがある。
それは、これからも次世代へと受け継がれていくだろう。
「100年夢を諦めないDNA」
それが、創立当初からファジアーノ岡山というクラブに流れ続ける血(強さの原動力)だ。
勝利を貴方に届けるために、ピッチで戦う11人を孤立させない12人(+1)の気持ちで戦える。
それが、ファジアーノ岡山というクラブだ。
それは、これからかもずっと変わらない筈だ。
子供たちの夢を!
ファジアーノ岡山ファミリーは、夢を負い続けるだろう。
「勝利を貴方に届けるために~12(+1)~」
「100年夢を諦めないDNA」
ファジアーノ岡山公式HP
2022 J2 第39節 ツエーゲン金沢戦 監督・選手コメント
は、こちら(別サイト)。
URL:https://www.fagiano-okayama.com/news/p1473057915.html
文章=杉野 雅昭
text=Masaaki Sugino
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