2022ファジアーノ岡山にフォーカス41『Rodo to J1 22~23補強ポイント』Part4(FW編)
7チアゴ・アウベスと15ミッチェル・デュークの矛と盾のWエースで、攻守でチームを牽引した。一見、隙がないように見えるが、視点を変えて見ると、補強ポイントが見えてくる。雉プレスのファーストディフェンスのスイッチを入れる15ミッチェル・デュークのプレスと、チアゴタイムのような高い得点力を活かして、ゴールで試合を決める7チアゴ・アウベス。
ストーブリーグ(シーズンオフでの動向)のIN・OUT関係なく、チーム編成の観点から、こういった選手が加われば、よりチームを強化できる、既存戦力の隙をカバーできるという視点で、Part4(FW編)でも作成しました。
それでは、よろしくお願いします。
Part4(FW編)
1、ポジション動向
2、シーズン経過
開幕から中央適性の高いFW選手もWGで起用して、4-1-2-3にトライ。15ミッチェル・デュークの高さや強さを活かすために、巧い7チアゴ・アウベスや10宮崎 幾笑、推進力のある19木村 太哉やスピードのある39白井 陽人をWGで投入していくというかたちで開始し、15ミッチェル・デュークに代わり川本 梨誉が前から献身的にプレスをかけていくことで、90分間攻守にアグレッシブに戦うという基本スタイルの原型が、最初から見て取れた。
そして、初めてサイドの深いところのアタッキングサードの左右のサイドレーンに流れるのでなく、そこからの攻撃を軸とする戦い方を採用。言葉でのニュアンスの違いで表現すると、このゾーンに”流れる・使う"ことはあっても”仕掛ける・入っていく・入れていく”といった主体性がある戦いに、岡山史上初めてトライした。
開幕戦こそ快勝したものの”レーンを意識する”という4-1-2-3の最大の武器を活かし切れず、前線にスペシャルな選手を高い位置で起用できているというアドバンテージやDFラインにプレスを効果的にかけることができるという初歩的な部分でのメリットは活かすことはできていた。ただ、試合を重ねる毎に対戦クラブの組織的守備の完成度が少しずつ高まって行く中で、DFラインから前線に運ぶパスワークが巧く機能しないこと、ロングパスを主体とした単調な攻撃になる問題が発生した。更に、レーンを活用できないことで、前線の選手が孤立するというシーンも散見された。
攻守で安定して、組織的に戦えない中で、4-2-1-3にシフトして、チームとして安定してきたが、それでも粗がどうしても目立つ試合が多く、爆発力にやや欠けて、勝ち切れない試合が多く、負けはしないが、上位に留まることで精一杯であった。7チアゴ・アウベスと15ミッチェル・デュークの良さを活かし切れない試合が続いた。
そこで3トップを諦めて、4-2-3-1のステファン・ムークのフォローをベースに、15ミッチェル・デュークの運動量と強さの時間帯と7チアゴ・アウベスの巧さや決定力を武器にする時間帯、同時出場する時間帯に、前線での個の力を前面に出す形にもトライする。記録上は、4-2-3-1として残っているがイメージとして、4-4-2の強力2トップの時間帯のイメージが強い。
この時間限定の4-4-2は、開幕戦で輝いた悪魔の左足の7チアゴ・アウベスの決定力と得点から遠ざかっていた15ミッチェル・デュークのワールドクラスの強さと高さ、運動量が輝き始める。MFの8ステファン・ムークも7チアゴ・アウベスや15ミッチェル・デュークの近くでプレーすることで、盾と矛のWエースの持ち味を引き出した。9ハン・イグォンも徐々に出場機会を増やし、存在感を高めて行く中で、中盤のSHの時間帯とCFとしてプレーする時間帯もあり、FWよりのSHとして、突破力や得点力も光った試合もあった。
ただ、90分間で考えた時に、7チアゴ・アウベスのフル出場は難しく、15ミッチェル・デュークの負担も大きくなりがちであること、代表での離脱もあったこと。20川本 梨誉がこの穴を埋めようとしていたが、プレーオフ圏内を維持し、自動昇格を狙う位置を目指すには、まだ足りなかった。夏場の補強で、38永井 龍を期限付き移籍で獲得。
38永井 龍は、今季の岡山で最もストライカーらしいポジショニングや多彩なシュートパターンを持った生粋のストライカーであった。しかし、多くの決定機でシュートを放つも精度を欠き、ミートできなかったシュートも多く、1得点に終わった。38永井 龍の加入により20川本 梨誉が、群馬に移籍することとなっただけに、正直なところは、もっと得点して欲しかったというのが、本音である。
それでも38永井 龍のプレースタイルにより、7チアゴ・アウベスと15ミッチェル・デュークの2トップと38永井 龍と9ハン・イグォンのコンビの形に辿り着いた。このコンビ、この流れが一つの形として機能した時に、3-1-4-2のWエースの爆発力と、人数をかけた雉プレスにより、攻守で主導権を握る試合が劇的に増えた。得点力が高まったことで、勝てるチームへと変貌した。
一時期は、そのまま自動昇格圏に迫るかと思われたが、2トップを軸にした雉プレスを回避するクリアやロングパスの徹底や縦に素早く付けて行くサッカーに、雉プレスが諸刃の剣となり、2トップの個の力でゴールを重ねてきた得点力も後にスペースを空けないチームが増えてきた中で、壁を破れない試合が増えた。
雉プレスのショートカウンターやロングパス1本からの16河野 諒祐のクロスやセットプレーでの得点が決まり難い状況下でシュートを重ねるも決める精度が足りなかった。フィジカルやテクニックの個の力に頼った。いや個の力を引き出す戦い方をしてきた岡山として、1対1をなかなか作れない、複数の選手に囲まれる回数が増えて、ロースコアの試合で勝てないことで、これが勝負弱くなったことの原因の1つである。
また、根本的にチームスタイルが、ハードワークということもあり、東京Vのように11人とも巧い選手が揃ったクラブや秋田のようにフィジカルを全面に出すサッカーに苦しんだ終盤戦だった。
3、FW補強ポイント
FWに関しては、大きく分けて2つの選択肢がある。3トップへの再挑戦か2トップの形に磨きをかけるかである。どちらもできることが理想であるが、チームの編成に対して、適した戦いができなければ、100%の力を出し切れる試合というのは、どうしても限られてしまう。J1昇格という目標をクリアするのであれば、既存選手の動向次第の側面こそあるもののどちらの戦い方を選択するのか、もしくは失敗しても軌道修正できる余地を残しておくのか。方針を明確に、そして幅をどこまで持たせるかについての意志共有は必要不可欠といえる。
まずは、3トップに挑戦する場合は、ドリブルで仕掛けることができる選手は、必要不可欠である。今季の9ハン・イグォンや19木村 太哉、22佐野 航大、18斎藤 和樹は、WG適性が高い選手である。この4選手がコンディションが良い状態で戦えた時期は限られていたことで、4-1-2-3や4-2-1-3を断念したという流れは、極めて自然と言える。
シーズン終盤に出せた雉プレスのような守備も4-1-2-3や4-2-1-3でも可能であることを考えると、ストーブリーグを巧く戦うことができれば、もう一度挑戦する選択肢も有力となって来るが、ドリブラーはどのクラブも喉から手が出るほど欲しいタイプの選手であり、揃える事ができなければ、挑戦しない選択肢も持つべきである。
故にWGを採用する3トップに挑戦するには、一二にも百にも自らドリブルで勝負出来て、仕掛けられるドリブラーは、必要不可欠であり、ドリブラーのFWを多く獲得した場合は、それは、3トップに挑戦する可能性は高いだろう。また、3トップに挑戦できる選手が揃った場合には、シーズンの途中から2トップに変換した場合でもWGの選手を今季のようにWBや2トップの一角、選手次第ではIHとして起用することもできるので、2トップに移行することもできる編成とも言える。
また、2トップを継続する場合は、今季足りなかった足の速いストライカーは是が非でも欲しい。今季のFW陣で1本のパスに抜け出してそのままというシーンは、ほぼ無かった。7チアゴ・アウベスが近いプレーができるが、回数も限られて運動量も多くない選手なので、どうしてもカウンタ―を狙った割り切った戦いを採用し難い側面があった。
9ハン・イグォンがFWに移った時も近いプレーができていたが、SHやWBが主戦場の選手であった。そういった意味では、生粋の高速ストライカーの選手を獲得できれば、攻撃の形も増えて、チームスタイルとして幅が広がることは間違いない。
WGを採用する3トップであれば、ある程度1人の選手が1人で形を作る場面が生じてくるので、2トップであれば、相性が良ければ、適度な距離感でプレーすることで、2人だけで崩す事も可能となる。4-4-2のフィジカルを武器にしている秋田戦の今季と昨季の失点シーンがまさに、そういった代表シーンの一つと言えるだろう。
後は、チームとして2トップで戦う場合に、どういった方針で戦うかで獲得する選手や編成は変わって来る。ハードワークしていくのであれば、15ミッチェル・デュークのように運動量がある選手、得点力アップを狙うのであれば38永井 龍のようにラインで駆け引きして体を張れるストライカータイプの選手、テクニックや巧さを求めるのであれば7チアゴ・アウベスのような選手といった感じに、岡山の既存選手の動向や他クラブの選手の動向に応じて、動いて行く必要があるだろう。
4、FW編まとめ
もちろん、1トップという選択肢もあるが、今季の戦い方を見る限りであれば、チームの重心を前に置きたいという意向が見て取れた。前でのパワーをいかに出していくのか。先制点を決めて、追加点を狙って行く。そういったスタンスを貫き通したシーズンであった。
しかし、絶対がないのが、木山采配であり、木山マジックだ。1トップを含めて、色々な事に挑戦したシーズンだからこそ、成功した数だけではなく、失敗した数もかなりあった。だからこそ3位という過去最高の成績に辿り着くことができた。
ただ、守備の修正も行うとは思うが、2トップや3トップという得点ができる、相手陣地でプレーできる。そういったサッカーを模索していくと考えていくだろうと考えるのが、自然である。何故なら、形こそ変えたものの木山采配の中で、守備が攻撃の比重を上回ることがなかったからだ。
守備を重視するというよりは、安定を重視するという場面に留まり、人の壁を築いて、カウンターで逃げ切るという徹底した選択はとってこなかった。そういった方針で戦ったからこそ、1年戦った上で、どういったタイプのFW選手を獲得するのか、要注目と言えるだろう。
次回は、総括編を考えています。ポジションだけではなく、チーム全体で考えた場合の総括となります。こちらに関しては、現在着手できておらず、ストーブリーグの中で、動きはあると思いますが、巧く反映させつつ、内容がまとめられば公開を考えています。次回もよろしくお願いいたします。最後まで、読んで下さり有難うございました。
文章=杉野 雅昭
text=Masaaki Sugino
Part1(GK編)は、こちら(別記事)。
URL::https://note.com/suginote/n/nb2c66ac4365d
Part2(DF編)は、こちら(別記事)。
URL:https://note.com/suginote/n/nda136cac233f
Part3(MF編)は、こちら(別記事)。
URL:https://note.com/suginote/n/nde3bb894d920
アディショナルタイム(おまけ)
ファジ造語
参考
2022ファジにデータでフォーカス2
「中盤の真田丸(本山丸)」
2022 J2第2節 岡山 1-1 徳島 レビュー
は、こちら(別サイト:SPORTERIA)。
URL:https://sporteria.jp/blog/sugi8823/6905499896963403777
代表作
2021ファジアーノ岡山にフォーカス46
J2:第42節:ファジアーノ岡山 vs ジェフユナイテッド千葉
「有難う有馬さん、有難う椎名さん、有難うファジ」
は、こちら(別記事)。
URL:https://note.com/suginote/n/n511a1b501907
筆者紹介
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