2024ファジアーノ岡山にフォーカス35『 J2の選ばれし20クラブ~中盤から終盤戦へ~ 』J2 第21節(H)vs ザスパ群馬
1、連勝の気運は本物かどうか~組織戦の様相~
さて、勝ち点が、20節を消化した段階で、勝ち点9に留まり19位との差が大きく開いていて、苦しんでいるザスパ群馬を、ホームで迎え撃った岡山。順位通りの展開に・・・なるはずもなく、最後までどちらが点を決めるかという接戦で、今節も前節の熊本戦同様に、難しい試合となった。
それでも、岡山の試合をしっかりチェックされている方であれば、今の岡山が良い状態を取り戻しつつあるというか、9番 グレイソン 選手を軸としたサッカーから99番 ルカオ 選手を軸としたサッカーへの転換が順調に進み、そこに復帰した選手も上手く試合に絡めるようになりつつあるということを理由を説明できなくても感覚的に、感じ取れている方は多いのではないでしょうか?
今の岡山は、ベストの状態ではないかもしれないですが、現状の一つの最適格を発見できた中で、善戦できていて、勝ち点を着実に積み上げることができるようになってきている。内容を結果に反映できていない部分こそあるものの意気消沈していた苦しい時期から抜け出して、依然として厳しい状況でこそあるものの、光が指してきたという状況で、この試合のように、集中して90分間、継続して戦う中で、1プレーで勝ち切るというのが、岡山らしい勝ち方のように感じます。
両チームに大きな差がなかった中で、勝負を分けたポイントは、どこにあったのか。そういった視点で、この試合を振り返りたい。そのために、群馬にフォーカスを当てた中で、上位7チームの勝ち方の考察を交えて、J2での今後の岡山の戦いについて語っていきたい。
2、J2屈指の連結された組織力~ザスパ群馬~
この試合で、岡山が苦しんだ要因として、もちろん決定力というのはあるのかもしれないですが、それ以上に、群馬のサッカー一体感に驚かされた。涼しいピッチコンディションも関係していたかもしれないですが、群馬は、90分間適度な距離感を保ち続けて、間延びすることなく、一糸乱れぬ組織的サッカーをやりきった。
ビルドアップにしても距離感が良いことで、高い位置で何度も奪ってショートカウンターというシーンを簡単に作ることはできないですし、岡山陣地まで運ばれたと思うと、素早いクロスを入れてくることもあれば、バイタルエリアの所で、岡山のDFの隙を探すパスワークを展開していた。
剣道や柔道の間合いのような駆け引きというのがそこにはあって「11対11」のスポーツであるサッカーのはずが、両チーム共に一体感があるサッカーを展開できていたことで「1対1」の対戦のような攻防が続いた。
鹿児島戦では、岡山陣地に人数をかけて攻めるというフェーズを飛ばして、速攻を試みていたが、群馬は、遅攻でもしっかり攻めることができた上で、ボールロストしたとしても距離感が良いので、簡単に岡山の選手が攻撃に映るというシーンは、決勝点となる5番 柳 育崇 選手が、バースデーゴールなるヘッディングシュートを決めた後にあった27番 木村 太哉 選手のカウンターのようなシーンぐらいで、0-0で推移していた時間帯では、ほぼなかった。
もしかすると、組織面だけを考えると、見方によっては、群馬の方が良いサッカーができていたかもしれない。ただ、勝負を分けたのは、柔道の重さや剣道の高さ、長いリーチのような個の力。言い換えると「主体的」に主導権を握る術の多さにあったと言えるのではないでしょうか。
個の力も組織力もサッカーにおいては、重要で、どちらかが勝因になることはあってもそこに優劣はない。勝負を分けるのは、運も含めた総合力。運も味方にできる展開に持ち込める粘りや運も生じやすい回数を生み出せる力。僅差のゲームでは、その1つのシーンで決まる。
群馬が、勝ち点を思うように積み重ねることができなかったことは、やはり前任の大槻 毅 監督の騒動による動揺が大きかったのではないかと感じる。それでもヘッドコーチであった武藤 覚 新監督も既存のスタイルを踏襲し、継続性のもとで、手堅く戦うことができている。
組織的に戦うことが武器であった分、精神的な動揺が響いただけに、現状の勝ち点差というのは重く伸し掛かる部分こそあるが、昨シーズンのプレーオフに迫る勝ち点のサッカーを最後までやり遂げれば、奇跡の残留も十分視野に入る組織的サッカーができていた。
残留を目指す上で障害となるのが、離れ過ぎれている勝ち点とJ2のレベルの高さにある。焦れずにどれだけ平常心で自分達のサッカーを体現することができるか。もしかすると、それは試合に勝つこと以上に、難しいことかもしれない。
岡山としては、その群馬に勝つことができたことは素直に嬉しいですし、群馬が、岡山を苦しめて、勝利する可能性もある堂々たる戦いができていたこも事実であり、どうしてもネガティブな感情が膨らんで行く中で、群馬が、そういった感情を自制し、コントロールして、前を向いて戦うことができるかどうか。これは、想像以上に厳しい道ではあるとは思いますが、可能性は0でないと断言できます。
岡山としては、それだけ難しい試合でした。本当に勝つことができて良かった試合でした。繰り返しになりますが、試合では、順位は関係なく、11対11の戦いです。そういった平常心で戦えるかが、両チームが、現状の目標を達成できるかどうかのポイントとなりそうな気がします。
3、頂に近いチームとは?~岡山の勝ち方~
岡山は、1-0での勝利が多い…と思いますので、20節終了地点での7位以上のチームで、独自に集計して、調べてみたいと思います。
3-1、勝ち試合のスコア分布
3-2、勝ち試合の平均得点と平均失点
3-3、上位の勝ち方考察
1位〜3位までは、高い得点力がそのまま順位の差に直結している印象です。守備の堅さは、どうしても引き分けで終わった時の影響が大きく順位に繋がり難い印象があります。
一方で、千葉は、上位3チームに迫る得点力がありながら、勝ち点に繋がっていない印象です。ただ、千葉の場合は、大量得点での試合もありますので、その辺りの不安定さが、7位に留まってしまっている原因と言えますが、やはり地力を考えますと、かなりの力があるチームであると再認識できるデータとなっています。
中盤に追い上げを見せて、一気に自動昇格圏まで浮上した横浜FCは、攻守ともに最もバランスに優れていて、最も高い数値が示す通り、最も勢いがあるチームということがデータに現れていました。
長崎は、高い得点力で、守備に多少の隙があっても力押しできる試合があり、ルヴァンカップのように少ないシュート数で勝てる得点力。内容的に負け試合を勝ち試合に変えたり、引き分けにできる力があることを示しています。
そして、長崎に唯一勝っていて、横浜FCにも勝っているのが、仙台。勝ち試合は、僅差の試合が多く、爆発力こそかけるものの安定感が非常にあるチームで、2-1での勝利が5試合と、接戦でこそ力を発揮できるチームと言えるかもしれませんが、やはりこの7チームの中では、一番低い得点力が、響き勝ち点がそこまで伸びなった要因とも言えそうです。
清水は、自動昇格圏の2チームに比べて、少し状態を落としているのか。十分な数字ではあるんですが、得点でも失点でも長崎や横浜FCに届かなかった分、僅差での3位という位置に留まってしまっているようですが、攻守のバランスの良さ、堅実さでは、負けていない強さは、高い数値から読み取れます。
完勝が多いのが山口で、無失点での勝利が多く、岡山の次に平均失点が少なく、2位の横浜FCのように2-0での勝利が多いチームです。対戦相手に応じて戦い方を臨機応変に変えることができる戦術的観点の強さが、独自スタイルを極めたJ2の中でも自信を打ち砕くような勝ち方をしているチームと言えそうです。
3-4、岡山考察~頂への道~
そして、我らが岡山は、1-0が最も多く、10勝の試合の中で、失点したのは、2試合のみで、何れも1失点です。ここから見えてくるものとして、相手の陣地でプレーをするサッカーを体現できた時に、勝利に繋げることができている傾向にあると言えそうです。
上位3チームのような得点力こそありませんが、チームとして良い攻撃ができている。ここでいう良い攻撃というのは、ボールを失った時のネガティブトランジション(攻撃→守備の切り替え)の時に安定していて、そこから攻撃に移ることで主導権を握ることができていることを示していると思います。
だからこそ、勝ち試合で失点が少なくなっているということだと思います。しかし、主導権を握りながら攻めていても、上位3チームのように得点力のある選手が少ないことで、引き分けが多くなってしまっているのではないでしょうか。9番 グレイソン 選手が、今季絶望的ですから、その辺りの最後のところで、しっかり得点できることもそうですが、岡山の良さであるネガティブトランジションの良さであったり、前から後まで連動した守備ができるストライカーの選手を獲得できるかどうかが、逆襲の一手になりえると感じます。
今のメンバーで戦えるという声も一理ありますが、それでも現実的にストライカーが、人数的に足りないので(出場停止や連戦などもあると思いますから)、どうしても補強が必要なポジションではないかと思います。
チームとしては、今のメンバーで戦えている武器である、この試合の5番 柳 育崇 選手の得点力の高さのように、勝敗を左右する力を持った選手が、今季は揃っていますから、今活躍している選手に加えて、復帰してきた選手を上手く現状のベストメンバーに組み込みつつ、岡山の良さ、岡山の武器を前面に出すことで、勝ち点を積み重ねていくことで、より上を目指せる筈です。
この試合の群馬のように、1位〜20位まで、独自の武器を持った強いチームしかいませんから、38節とプレーオフを消化するまでは、「順位=強さ」ではなく、2024シーズンにJ2を戦える権利を得た強いクラブしかいません。つまり2024シーズンJ2ベスト20クラブが、集ったリーグですから、1試合1試合に一喜一憂することなく、微力ながらココロヒトツニにして、一戦一戦信じて戦っていきたいですね。
勝者として、敗者として、次の試合に繋げていく、それが最大限のリスペクトだと筆者は考えています。奢ることなく、萎縮することなく、怯えることなく、失敗しても、次に繋げていく。これしかないと思っています。
J2の頂へ!!
文章・図・写真=杉野 雅昭
text・figure・photo=Masaaki Sugino
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