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あなたに向けて書く願いごと│『書く習慣』を読んで

11月半ば。ハローワークに行った日、帰宅、即、大泣きした。仕事が見つからなかったからじゃない。よくない対応をされたとかでもない。積もり積もった自分への怒りが悲しみへと分解されたとき、大粒の水玉になって布団に染みていった。

いしかわゆきさんの著書『書く習慣』を読み終えたとき、不思議とあの日のことが浮かんだ。
『書く習慣』は、文章の技術というより、自分の気持ちや感性を大切にする方法をひとつずつ知る本。いま、心が軽いのがわかる。あとがきには、こんなことが書いてあった。

「この本、とってもいい!」と思ってくれた人へ。
あなたに向けて書きました。

わたしのための本だった。

うれしくて、ありがたくて、だいじょうぶだと思って、心がもっと開放されていく気がした。

『書く習慣』を読み始めて、完璧主義を手放すこと、素直なアホになること、誰かのためではなく自分のために本音を書く大切さなど、文章を書く一歩目の示唆を多く得た。それで、さっそく素直なアホになろうと思って、リングノートを2冊調達。自分だけが見る「自分ノート」として、食卓と枕元にそれぞれ置いた。

何日か試してみて、気付いたことがある。書く文章が淡々としていて感情がこもっていない。「感情的になれない」。自分しか見ないという絶対の誓いを立てたノートだぞ。なのに開放されないってなんで。

アウトプットの練習を続けてみることにした。

前に進んでいるようないないような気分で過ごす中、ハローワークに行った日のこと。家にたどり着いたらなんだか気分が悪いから布団に入った。ペンとノートが視界に入ったから、横になったまま、手に取ってみる。相談のアポイントを一週間間違えた。恥ずかしい。なんでわたしは人の話を聞かない。やっぱりだめなやつだ、ずっとこうだ、ゆるしたくない。というようなことを、もっとずっと汚い言葉で、書いた。次第に涙がぼたぼた落ちてくる。字は暴れている。失敗はもちろんいやだが、小さなことで思考を飛躍させてくよくよする自分もきらいだし、今日の予定が変わるのもいやだし、でもこういうだめな自分に対してわたし自身がもっと優しくなってほしいと思っていることも書いた。気づいたら寝落ちていたらしかった。

「えーん」と泣いて、寝て、起きたらすっきりしているって、それは赤ちゃんじゃんと思ってびっくりした。と同時に、深い安心を覚えた。赤ちゃんのわたしをちゃんと見つけたし、ケアしたんだ。今までのわたしなら、「おとなだし、傷ついていませんけどね」と、現実にあるものをまるでないものかのように、ふたをしていたはずだ。ノートの実践をここまで続けてよかったと思った。わたしはいまでも、ちゃんと感情的になれる。

こんなふうに自分を出せるようになるために、『書く習慣』を手に取ってよかった。読んでよかった。Rollbahnのすてきなリングノートを見つけてよかったし、書く習慣の実践をはじめてよかった。安心をもらえてよかった。この経験を糧にして、もっとたくさんの素直なわたしに出会いたいから、のんびりとノートの旅を続けようと思う。

書くことに迷いや疲れを感じている、未来のわたしへ。
あなたのために書きました。
素直なわたしを抱えてそこまで歩いてくれてありがとう。ほんの少しでも「なにか書いてみようかな」と歩き出した頃のわたしを思い出してくれたら、うれしいです。


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