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【写真】港のある町:巡り日2025/02/17
「なんとなく撮りました」では作品にはならない
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この写真は、先日、私が所属している土浦写真塾の撮影会で撮った、土浦市港町のとある風景だ。
手前の女性と、2台の軽バン、スマホを片手に歩いてくるスーツの男性の配置で奥行き感を出せそうだったので、それ以外のことはとくに考えずにシャッターを切った。
後日、同写真塾の定例会での講評に出してみるも、あまり好評価は得られなかった。そもそも私自身が「なんとなく撮った」のだから、当然である。
「歩いている人物を入れると作品っぽくなるかも?」と思って撮ったものは、得てして作品としては今一つなのだという。
というか私自身も、そう言われるのをわかっていて敢えて出した面もある。
やはり、「なんか良さげ。見て見て!これ、どうかな?」という、自分でろくに考えていないのに、見た相手に考えさせようというスタンスは、100%NGとは言わないまでも作家として無責任だ。
高評価を得られなかったことに私はむしろ安心し、納得した。
タイトルを考えることで作品が変化する
とはいえ、まだこの写真の可能性を捨てきれず、Instagramに投稿した。そのまま載せたのではなく、先生からのアドバイスに基づいて、縦長に切り取って出してみた。
Instagramに投稿するにあたり、私は初めてこの写真のタイトルに頭を捻った。
第一案で、そのまま素直に「土浦市港町にて」と浮かんだとき、その場所が単に地名としての「港町」だけでなく、本当に「港がある町」であることに思いが至った。
土浦市在住の私には、Uber Eatsの配達以前から何回も見てきた港町だ。この写真の景色の左側に数十隻のボートを係留した港があることを知っている。
だが、港湾施設や船舶を一切画面に収めていないこの写真からは、どこか「港のある町」の気配が漂っていないだろうか?と思った。
タイトルは作品の重要な要素だ
どこが港町の気配を気配を作るのか?
改めて写真を見ながら考えてみる。
まず主役の手前の女性だが、車道の真ん中を歩いている。軽バンやビジネスマンが行き交う中心市街地の風景としては珍しい。
2台のうち、手前の軽バンは、後ろに徒歩の男性がいることから、路駐していると思われる。つまり、画面内の4つの動的要素(人と車)のうち、3つが忙しなく仕事をしているのだ。画面の右側に限って言えば、建物や標識が立ち並ぶことから考えても、これは地方都市の中心市街地の風景だ。
影の向きは右方向だ。しかし、左から伸びてくるはずの「建物の影」が無い。そこに建物が無いのは、公園や空き地があるからか?しかし、それなら手前の女性がわざわざ道の真ん中を歩いたりはしないだろう。左側に「建物も人も入れない場所」が広がっているとしたら、そこは湖か河川があるからなのか?
以上、1〜3までの考えを巡らして、写真の左の外に広がるそれが湖なのか河川なのかは分からなくなってくる。そこで答えをポンと後押しするのが、タイトルの「港のある町」だ。
最初は「ただ撮ってみました」程度の写真だったが、そこには少なくとも、撮りたくなった「心の動き」と、シャッターを切った「意志」がある。そこから諦めずにタイトルをつけることによって、この作品は初めて意味を持ったのだ。