飛んで火に入る夏の虫は可哀そう
専門性 ★
・ポイント
どうして、蛾は光に近づこうとするのか
なぜ、蛾は月の光には近づこうとしないのか
単純な生物は考えて移動しているのか
事前知識 特になし
動物は、植物と違って、うろうろ移動する。その移動はどのように決定されているのだろう。
私たちのような高等動物は考える。そして、目的地へと移動をすることがふつうである。では、単純な生物はどのように移動決定をしているのだろうか。
一つの移動決定の手段として、走性がある。これは、ある刺激に対して、一定方向に動く特性である。正の走性は刺激に対して向かっていく特性、負の走性は刺激に対して逃げていく特性である。
簡単に例を出して説明する。
あなたがとてもお腹が減っていている時に、とてもいい匂いがしたら、その匂いの方向に行ってしまわないだろうか?
逆にとてつもなく臭いものを見つけてしまったとき、一端離れませんか?
少し変な例であるが、前者を「いい匂いに対する正の走性」、後者を「激臭に対する負の走性」といえる。
単純な生物は、このような走性を利用して自分の行先を反射的に決めている。
ここで一つ、光の走性の話をしよう。
光に対して、正の走性である動物は、ミドリムシ、蛾、魚などがあり、負の走性である動物は、プラナリア、ミミズ、ゴキブリなどである。
この特性は知恵ではない。
生物が自ずと見つけて、その走性をもつものが生き残って、進化したから本能として獲得できたものである。
そのため、彼らの生活環を見れば、ある走性をもつ意義も見いだせる。
例えば、ゴキブリが明るいところを嫌わず、よく部屋や、横断歩道を横切っていたら、すぐに殺されてしまうだろう。
そのようなゴキブリは生き残れない。
他にも、ミドリムシは光合成ができるため、よく光合成ができる明所へと移動できるよう進化したのである。
ここでタイトルにもなった可哀そうな虫を紹介しよう。
蛾は光に対して正の走性である。しかし、直接光に向かうのではなく、なにか変な動きをして近づこうとしていることはお気付きだろうか。なんでこんな変な動きかたをわざわざするのか、というかそもそも、なぜ、月の光などには近づこうとしないのだろうか。
蛾は光源からある角度を保って近づこうとする。すると、ぐるぐると旋回しながら、近づくこととなる。
(わかりにくいならやってみてほしい。ある光源にたいして、常にあなたの左ななめ前に光源が来るように近づこうとしたら、光源の周りをグルグルしているはずだ。)
そのため、変な動きで近づくこととなる。しかし、月の光などの上空にある光などは蛾が多少場所を移動しようとも、蛾に対する光の当たり方は変わらない(光があたる角度が不変)。そのため、蛾は月に向かって飛んでいくことはない。
そもそも、蛾はこの特性はこの月の光などためにある。蛾は水平に飛行する為の指標として上空にある光を利用しているのである。
光に近づこうとする特性ではあるが、それは自らが水平に飛ぼうとするための特性というのが本質である。
そのために進化してきたが、自らを焼き尽くす炎へと近づいていく様はなんとも可哀そうである。
他にも、面白い走性がたくさんある。メダカは水流に対して正の走性、ヒトデは電気刺激に対して陽極側への走性もある。しかし、この記事で取り上げた走性ほど可哀そうなものはないのではないか。
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