和菓子と”彩”時記『ハロウィン』
お菓子屋さんだったり雑貨屋さんだったりがにわかにオレンジに染まる秋。私が小さな頃は紅葉やイチョウの意味合いでのオレンジだったように覚えているのですが、現代ではハロウィンのカボチャ、ジャックオランタンのオレンジであることがほとんどのようです。
この2首からもうかがえるように、ハロウィンは日本でもクリスマスのようなイベントごとのひとつとして市民権を得たと言っても過言ではないのでしょうか。エレベーターの中に複数の魔女が乗り合わせた様子や、「人の仮装をしているのだ」と言って通す人を想像すると、思わずくすりと笑いがこぼれてしまいます。
とはいっても和菓子とハロウィンに何の関係が?と思われる方も多いのではないでしょうか。秋の和菓子と言えばそれこそ紅葉やイチョウ、松茸、栗やコスモスの意匠がメインですが、近年はハロウィンらしいカボチャやおばけ、マミー(ミイラ)をデザインしたものも増えています。なんとゾンビの姿をしたお菓子もあるほど!
老舗の和菓子屋さんでも上生菓子、干菓子問わずさまざまなハロウィンモチーフのお菓子を販売されており、先日も稲豊園様の日本の妖怪をモチーフにした『どうだ?怖い菓!』というハロウィン和菓子がネットで話題になっていました。かっぱ、口裂け女、から傘お化けの3体を模したお菓子は怖さと可愛さだけでなく、それぞれの中身や味もこだわられており、食べるのがもったいないような気持ちと美味しそうで早く食べたい気持ちがせめぎあうこと間違いなしです。
そしてそんな和菓子たちは、秋のお茶会の席でもお見かけすることがあります。
私が通っていた大学では、10月末から11月初旬の間の金土日の3日間で大学祭が行われていました。そしてそのうちの2日間、茶道部は茶会が開くのが習わしでした。ちょうどハロウィンの時期のため、学祭ではハロウィンイベントを開催しており、私も茶道部と兼部していた別サークルの模擬店の売り子として仮装を楽しんだものです。
そして茶道部でもお茶菓子としてハロウィンに関連した和菓子をお出ししていました。ジャックオランタンやおばけのお菓子を見た学生達からは「かわいい!」と歓声が上がり、目を輝かせながら「写真撮ってもいいですか?」と半東(※1)へ質問される方も多かったのを覚えています。
私が所属していた茶道部では、とても綺麗で美味しいお菓子とお店の方々のお人柄に惹かれ、学校から少し離れたお店に茶会のお菓子をお願いしていました。
そのお店は、直方市の商店街の中にある『大塚菓子舗』さん。次のお茶会はどのお菓子にしようと悩んでいると、お菓子の写真を見せながら優しく相談に乗ってくださったのを覚えています。(ホームページのトップにあるコーヒー大福がほんとうに美味しかったです!)
こちらの大塚菓子舗さんでもホームページにはハロウィンの和菓子を一つのジャンルとして掲載されており、その姿を見た瞬間一気に大学祭のお茶会を思い出して懐かしくなりました。
和菓子という日本の伝統文化は海外のものや新しいものを自由自在に受け入れる懐の深さと、そのものらしさと和菓子らしさを両立させる器用さを持ち合わせていると私は考えています。
これまでに紹介してきた『水無月』や『おはぎ』のように古くから受け継がれた物語を持つお菓子、『花筏』や『光琳菊』のようなずっと存在してきたモチーフながら、それぞれの職人や菓匠のこだわりが光るお菓子もあれば、ハロウィンやクリスマスのような海外の文化を取り込み、新しい形となって愛されていくお菓子もあるのが和菓子の素敵なところ。そして、もっともっとと和菓子のことを知りたくなってしまう理由の一つかもしれません。
……と、こうやって締めるとなんだか最終回のように思えてしまいますが、まだまだ素敵な和菓子を紹介していきたいと思いますので、これからもどうぞよろしくお願い致します!
◎今回登場したお店
・あづま屋 様 → http://www.kyushu-cake.com/nagasaki/lemiel/stats/access.html
・大塚菓子舗 様 → https://www.ootuka-kasiho.com/
・稲豊園 様 → https://www.tohoen.com/
・シャトレーゼ 様 → https://www2.chateraise.co.jp/
(文・写真・絵 あーちゃん)
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