#10 大人になると聞こえなくなる音に、耳を傾けよう:蜜蜂と遠雷
こんにちは。すがっしゅです。
今回は、恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」を紹介させてください。
直木賞を受賞した作品ですね。映画化もされています。
一言で言うと、とてもよかったです!
社会人も慣れてくると、ふと立ち返ることがありませんか?
自分って何がしたくてこの会社入ったんだっけ。
今もそこそこ楽しくやってるけど…これでいいんだっけ…等。
この作品は、後悔のような不安のような感情を持つ全ての大人に、
「あの頃を思い出そうぜ」と励ましてくれるような物語でした。
★大人になると聞こえなくなる“音”
「音楽」「ピアニスト」の世界を舞台に、
・かつては10代で天才と呼ばれたものの、突然引退してコンクールから遠ざかっていた女子大学生ピアニスト
・音楽の英才教育を受け、アスリートのようにピアノと向き合っている青年ピアニスト
・プロの道は諦めたものの、ピアノへの思いを捨てきれず再チャレンジ中の会社員ピアニスト
・突然音楽界に現れ圧倒的なパフォーマンスを披露したことで注目を集める、天才少年ピアニスト
等々、様々なピアニストが1つの国際コンクールに出場する物語です。
またピアニストだけでなく、彼らをサポートする師匠、審査員、スタッフ、調律師、コンクールをTV放送する記者…
それぞれの登場人物の人生が丁寧に描かれています。
そしてその中で物語の核となっていたメッセージが
「大人になると聞こえなくなる"音"に、耳を傾けよう」ということ。
子どもは、「やりたい!」と思ったことに素直ですよね。
思春期になっても、親に反対されようが「こうしたい!」という情熱を持っていることも多いもの。
だけど、大人になるとどうでしょうか。
作中では、
(一言一句同じじゃないですが)下記のような言葉がよく出てきます。
「みんな、自然の中に音を聞かなくなる」
「音を自分の耳の中に閉じ込めて、それを音楽だと思ってる」
「音楽を連れ出そう」
昔は自然に興味を持ったものに打ち込めた・自分の中の自然に従うことができたけど、大人になると、所謂「好きなことだけじゃ生きていけない」状態になります。
ある程度妥協して「どちらかと言えば好きなこと」を選んで生きていく、という人も多いと思います(もちろんそれは当たり前のことであるし、たまたまやってみたことが好きなことになる場合もあるので、何が正しいという話ではないのですが)。
私だって本当は、プロサッカー選手になりたかったです。
だけど、色々考えて別の道にたどり着いて今の仕事があります。
が、
ただ一方で、「本当にサッカーが好きなら、サッカーを仕事に」
という話は、100%無理な話でもありません。
(ビーチサッカー等 類似種目やったり、コーチやったりとか)
この作品が訴えかけてきたのは、
「大人になる中で、あなたが諦めてきたことはなに?」
「あなたの、本当の情熱はどこにあるの?」
ということ。
大人になると、社会の雑音ばかり耳に入ってきてしまって、
自分の中の自然が、素直な気持ちがかき消されることも多い。
だけど、その素直な“音”にこそ、耳を傾けるべきでは?
そんなことを伝える作品なのでは、と思います。
★読んだ人にだけわかること
ところで、もしあなたがサッカー選手になりたいけど
泣く泣く諦めて、会社員をやっている方だとして、
真剣にサッカー選手を目指してプロ目前、という同い年の人が
目の前に現れたら、どう反応しますか?
「どうせなれるわけない」「それは夢というか無謀だ」と思いますか?
それとも「おれだって、今からでも間に合うかもしれない」と思いますか?
作中で「劇薬」という言葉が出てきます。
この本を読んだ方なら「劇薬」という言葉の真の意味がわかるはず。
良薬口に苦し、です。
何が正解かなんてよくわからないし、
とりあえずやってみたことが「好きなこと」になることももちろんある。
だけど、
もし今のあなたにとって、何か心に引っかかるものがあるのなら、
現実的なハードルは一旦置いといて、
その音楽を、自分の耳の中に閉じ込めていた”音”を、
大事にしていきましょう!というお話でした。ぜひ読んでみてください。
以上、ソラニン第10回
「蜜蜂と遠雷」でした!ではまた。
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