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#2 「罪悪感」というテーマに最適すぎた「手紙」パート:こころ

こんにちは!すがっしゅです。

マガジン「イエスガッシュ!」第2回目の投稿です!
今回取り上げるのは、夏目漱石さんの「こころ」です。

「こころ」から伝わってくる作品のメッセージは、
「罪悪感に侵され、自分を認められなくなった時、生きていく力になるのは何か?」ということでした。
これについては、マガジン「ソラニン」第6回で語っております…。

このメッセージを、読者に対してより鋭く刺さるような表現技法が、まさに
「こころ」には詰まっています。今回はその辺を語ります。

☆小説の半分が「手紙」パート

この話は大きく2部構成になっていて、
前半は、メインの登場人物「学生」と「先生」の出会いや毎日が描かれ、
後半は、「先生」から「学生」へと宛てた長~い「手紙」となります。

後半の「手紙」パートによって、
先生の過去の話や自白が描かれ、物語のオチへと繋がっていきます。
湊かなえさん「告白」のように、手紙の中で先生がひたすら語っていく中で、先生の過去の風景が流れていくようなイメージです。

で、この「手紙」パートなんですが、
なんと小説全ページの5割、半分にも及ぶのです。

この小説、ほとんど先生の手紙を読んでいることになるんです。笑

☆「罪悪感」「自白」に最適な「手紙」表現

この小説のメッセージ、つまりは「What to say」は
「罪悪感に侵され、自分を認められなくなった時、生きていく力になるのは何か?」ということ。

この「What」を強く読者に伝えるための、
表現技法として、「全体の半分にも及ぶ先生からの手紙」は、
まさにベストな表現なのではないか、と思いました。

「手紙」パートは、先生の過去の話、つまり罪悪感にまつわる話を自白する、という内容。過去の罪を自白する、という内容に対して、「手紙」という表現はまさにぴったりだと思うんです。
なぜなら、何かを人に「実は…」と告白する時、口頭で伝えるというのは憚れるから。愛の告白なら恥ずかしいし、罪の告白なら、その後にショックを与えることを想像すると言いづらい。

しかも、小説の半分を「手紙」に当てている、というのも、本当に最適。
なぜなら、罪の告白をするときは言い訳が長くなるものだからです。
こういう背景があってやってしまった、とか、こういう思いで仕方なくやってしまった、とか。どうせ自白するなら、罪の理由をしっかり話して自分を正しく伝えたい、と思うもの。
そのリアリティを、手紙の長さで表現しているのです。

この表現を選択したあたり、本当に秀逸だなぁ、と思いました!
例えるなら、「勉強をしろ!」と厳しくしかる父親にむかついたが、実際に父親自身も仕事のことで夜中勉強しているという姿を、ふすまの隙間からこっそり見て知った娘、という感じ?笑
つまりは「伝えたい内容」を、しっかり「背中」で語っているということです。罪悪感について語る「What」を伝えるのに、「先生はついに自白した。先生によると~で…」みたいな感じで表現してしまうと、「ついに」感がないだろ!と思ってしまう。
でも、全体の5割のページ数を割いて「手紙」として自白内容を表現していると、「自白っぽい」と思いますよね。「伝えたい内容」が、「長文の手紙」という「事実」によって、しっかり読者の腑に落ちるのです。

☆表現は「背中」。メッセージは「中身」。

リアリティがなければ、どんなに良いことを言っても心に刺さりません。
ビジネスでいうと、広告もそうです。最近、「人として善いことを言う」だけのブランド広告というのが蔓延しているな、と個人的には感じているのですが…(愚痴)、
そういうブランド広告でもそうで、そのメッセージにリアリティがなければ、人の心を動かすことはないのです。

物語作品も同じで、感情を描く限りはリアリティを出すことは必須。
そして表現技法とは、まさしくメッセージという「中身」をリアリティある形で伝えるための、「背中」なのです。
口だけガミガミ注意して自分のことは脇に置くお父さんが娘さんから嫌われるように、中身で良いことを言っていたとしても、表現がわざとらしかったり、架空の嘘の世界だなぁと感じるようなものではダメ。

そういう意味で、「こころ」は素晴らしいなと思っています。
罪悪感というテーマに最適すぎる「手紙」パートでした。
手紙形式という「背中」で、心に刺さったんだなぁ、と思います。

同じ感想を持ったのが、去年大ヒットした映画
「カメラを止めるな!」です。この作品は「What」「How」共に素晴らしすぎたのですが、特に「How」が素晴らしすぎる「背中」で、傑作でした。
※別マガジン「ソラニン」第1回で語っています…。


以上、マガジン「イエスガッシュ!」第2回
「こころ」でした!ぜひ読んでみてください~。

ではまた次回!

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