_6_こころ

#6 罪悪感との向き合い方を考えさせられる物語:こころ

こんにちは!すがっしゅです。

ソラニン第6回で取り上げるのは、本マガジン初の古典!
夏目漱石さんの「こころ」です。

古典は古典になっているだけあって、表現が洗練されている感じがあるなぁ、と個人的には思っています。感情を色んな表現で例えて正確に伝えようとしている作品が多いな~と。
現代作品はどちらかというと、短い言葉で感情を正確に言い当てる名作が多い気がします。

まぁ古典・現代の二元論で語るのはアレですが。笑
さてこの「こころ」も、人間の負の感情がえぐり取られるような、
リアリティのある名作でした!

★ある学生とある先生の話

この物語は、大きく前半と後半に分かれます。
前半では、ある大学生が偶然出会った先生との話が描かれます。
先生、といっても教壇に立ってる訳でもなく、実家の財産で生活が事足りるから特に仕事もせず、家で書物を読んでいる人です。笑

その学生が、偶然 避暑地で出会ったその人に、勝手についていき、先生と慕います。打ち解けて、そのうち学生は先生の家までよく遊びにくるようにもなります。

ある日、先生の家に行くと先生は出かけていて留守。先生の奥さんに尋ねると、先生はお墓参りに言っているとのことでした。学生は奥さんにお墓の場所を聞き、先生の下に向かいます。
お墓参り中の先生を見つけ、学生が合流すると、先生は驚きます。
そして、先生は学生にこう話します。

「このお墓参りは毎月必ず行っている。」
「昔の友人の墓だ。」
「この墓にはいつも一人で行きたいのだ。連いてこないでくれ。
 妻さえもまだ連れてきたことはない。」

★先生の自白

この小説は、大きく2章の構成に分かれます。
1章は学生と先生の出会いと一緒に過ごした日々について。
そして小説のほぼ半分を占めるのが、先生から学生に宛てた手紙です。

先生の墓参りに関する注意の後、学生は、先生が何故墓参りにこだわるのか、不思議でした。学生はその真意について先生に問いかけますが、教えてもらえることはありませんでした。
その秘密が、第2章で、手紙に綴られ打ち明けられます。

友人は自殺した。その自殺の理由が自分にあるのだ。
先生は、手紙でそう自白していくのです。

★人の悪と罪悪感について

この物語は、友人を自殺に追い込んでしまった先生の苦悩を描いています。

若い頃って、どこか心の中で、自分は正しい!真っすぐな人間だ!
と過剰に信じきっているようなところ、ありませんでしたか?
この先生もそうで、自分という人間は当然、私利私欲に惑わされることない公正明大な人間だ、と信じ切っていました。

ある時、先生は財産の問題で人に騙されることがありました。
他人は信じられない。正しく真っすぐなのは自分だけだ。
より一層、先生は自分のことを信じるようになります。

ですがある時、事件が起きます。
私欲のために友人を陥れ、その結果、友人を自殺へと追い込んでしまうのです。まさかそんな大事になるとは、先生は夢にも思っていませんでした。
自分でも自分の愚かさを認めるしかありません。
そして先生は、他人はおろか、自分さえも信じることができなくなり、
ついに人間そのものを信じることができなくなってしまいました。

月日が経っても、その孤独な考えが消えることはありません。
そしてまた、友人を殺した罪悪感も一向に消えません。
何かに挑戦しようとしても、罪悪感がストップをかけます。
お前は普通に生きる資格がある人間なのか?と。
先生は罪悪感に苦しみ続けているのです。

★あなたは、罪悪感にどう立ち向かいますか?

この小説は、全ページの5割にも及ぶ分量を使って、
先生の罪と罪悪感についてひたすら描いていきます。
(ちょっと病みそうになりますね・・笑)

この物語は、「人間には誰しも私利私欲があり、汚い部分もある」ということを読者に伝えてきます。と同時に、「罪を犯した時、どう立ち向かっていけば良いのか」を大きな声で問いかけてくるような作品です。

人間だれでも罪を犯したことがあると思います。刑務所に入れられるようなことはなくても、小さな罪であれば誰だって犯してしまったことはあるのではないでしょうか?
そして時に、始めは小さいミスだと思っていた行動が、受け手には大きなダメージを与えていることもある。

人は時に、大きな罪悪感と同居して生きていかなければいけません。
自分を認められなくなったそんな時、生きていく力になるのは何か?
そう問いかけてくる作品です。

私は、「自分をさらけ出せる、自分を叱ってくれる、でも許して包み込んでくれる、そんな誰かの存在」なのではないか?と思いました。
それは夫婦なのかもしれないし、家族、友人かもしれない。無条件で自分をさらけ出せる誰かがいれば、それは生きていく力になります。

先生は、罪を犯した後、孤独でした。奥さんにも秘密を明かしません。
先生は奥さんの綺麗な心に惚れたのでした。綺麗な心と思い出を持つ彼女に、自分自身が汚い人間であることをさらけ出すことができなかったのです。ですがそのために、先生はたった1人で苦しみ続けることになります。

この先生だって、奥さんに全てを語ることができれば、
罪悪感を力強く乗り越えることができたのかもなぁと思います。


とまぁ、そんなことを考えさせてくれる物語でした。
人間の罪と、罪悪感との向き合い方について考えさせられます。
「罪と罰」なんて古典がありますが、この小説をそう名付けても良いんじゃないか、と思いました。笑
(罪と罰、まだ読んでないですけど…)


以上。ぜひ読んでみてください!
「ソラニン」第6回「こころ」でした。読んでくれてありがとうです!

ではまた!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?