日本の政治と金(第4回)
自民党、派閥、議員へと流れる金
政治と金の問題を考えるにあたり、ここでは政治家や政党にはどれだけの金の出入りがあるのかを見てみましょう。改めて調べて分かったのは、いずれも想像していた以上に巨額の収入があるということです。
そして中身がチェックができないブラックボックスの金がいくつもあるため、もはや日本の政治と金については「何でもあり」という現実が見えてきたのです。
国会議員はどれだけ収入があるのか?
まず始めに国会議員を見てみましょう。国会議員は「歳費」と名のいう給料をもらっています。原資は我々が払っている税金ですね。その額は1人年額でおよそ2200万円になっています。
さらに「調査研究広報滞在費」という名目で年額1200万円を受け取っています。
このほか公設秘書3名分の給与としておよそ2000万円前後を受け取っているので、合わせると5400万円ほどになります。月額では450万円ですね。これは一年生のヒラ議員でも同じ金額です。
さらに国会議員にはJRの無料乗車や、選挙区との飛行機代無料が選択的に選べるなど、様々な議員特権があります。
上記の「調査研究広報滞在費」に関しては使い道を公表しなくてよく、余ったとしても返還する義務がありません。そのため正しく使われているかのチェックが一切できないため制度のずさんさが問題視されているのですが、今日まで改善されずに来ています。
ここまでは国庫つまり税金からの支出ですが、それ以外にも献金を受けたり、「政治資金パーティー」を開いたりして多くの収入を得ています。
また主に自民党では党や派閥から政治家個人に渡されるお金があります。金額は数十万円から幹事長の約10億円までと幅があるようですが、これに関しては改めてお話しします。
政党にはどれだけの金が入るのか?
次に政党にはどれだけのお金が入ってくるのでしょうか。最もお金を動かしている自民党の場合を見てみましょう
政党に対しては税金から「政党交付金」として現状総額で315億円ほどを支払っており、自民党分では160億円ほどになります。
また「立法事務費」という名目で政党に支払うお金が総額55億円ほどあり、自民党には30億円ほど支払っています。
ここまでは税金からの金ですが、別に企業・団体からの献金があり、自民党本体ではおよそ24億円を受け取っています。
このように税金からの交付金と企業・団体献金という、二重取りの状態になっているのは、前回話した通りです。そしてこれらがどんぶり勘定されているので、税金が正しく使われているかがはっきりわからない状態になっています。
自民党の派閥が動かしている金
自民党の場合、お金を動かしている組織がまだあります。それが今回問題になっている「派閥」ですね。
2022年では自民党に6つの派閥があり、派閥の収入は総額で約12億円ありました。その8割が「政治資金パーティー」によって調達したものです。
上の表は収支報告書を集計したものなので、「裏金」分は入っていません。最大派閥の安倍派では、5年で6億7千万円の裏金があったので、単純計算すると単年度で3億円を超える収入を得ていたと思われます。
問題だらけの政治資金パーティー
現行の政治資金規正法では、派閥や政治家個人が企業・団体献金を受け取ることは禁止されているのですが、政治資金パーティーを隠れ蓑として企業・団体献金を受け取っている実態は、前回述べた通りです。。
こうした派閥のパーティー券を購入して資金を拠出しているのが、企業や各業界団体といわれているのも前回記した通りです。
そして政治資金パーティーに関しては、20万円以下の購入者では名前を公表しなくてもよいという「抜け穴」が作られています。そのため誰が金を出しているのかは、ほぼわからない状態になっています。
政治資金パーティーは派閥だけでなく、政党や政治家個人でも開催している実態があります。
その中で閣僚に関しては、政治資金パーティーを自粛することが大臣規範により規定されていますが形骸化されており、岸田首相などは2022年に1億5千万円ほどのパーティー収入を得ているのですから、何をかいわんやです。
ブラックボックスの政策活動費
次に「政策活動費」の問題を見てみましょう。政策活動費とはあまり耳なじみのない言葉ですが、これは党から党幹部などの個人に渡される金のことであり、今回の改正論議の焦点にもなっています。
東京新聞によれば、2022年度に自民党は14億円ほどの金を政策活動費として幹部らに配っていました。大変な金額なわけですが、二階元幹事長については5年で「50億円」もの政策活動費を受け取っている実態が明らかになりました。自民党の幹事長など幹部に渡っている政策活動費については、主に選挙時の陣中見舞いや関係議員への資金援助に使われていると見られています。そしてこの金が自民党幹事長の強大な力の源泉となっているのです。
驚くべきことですが、政策活動費に関しては、受け取る側の政治家個人には記載や報告の義務がなく、完全なブラックボックスの状態なのです。これほどの大きな金額が、しかも税金が含まれている可能性があるにもかかわらず、何に使われているか一切報告されないのです。
こんなことがまかり通っているのが、今の日本の政治の実態なのです。
「官房機密費」の闇
政策活動費よりさらに闇の深いブラックボックスがあります。それが「官房機密費」です。
これは内閣官房長官の判断で使える金であり、月平均で1億円ほどの支出があるといわれています。その中で「政策推進費」の名目であれば使途を表に出す必要が一切なく、年間で10億円程度使っているといわれています。
これらは本来、国の政策運営に使うものですが、目的外である自民党議員の選挙費用にも出しているといわれ、野党対策、マスコミ対策、そして官僚にも渡っているなど、自民党が自由勝手に使っている疑惑があります。
いずれも闇の中なのですが、以前に野中広務元官房長官がテレビ番組のインタビューに対し、野党工作や複数の政治評論家にも金を配ったと答えています。そして田原総一朗氏だけは受け取らなかったといい、当の田原氏も金額は1000万円だったと証言しています。このようにして自民党は評論家、ジャーナリスト、新聞記者などに現金を配り、不利な言論を封じ込めてきたことがうかがわれます。
また中国新聞によれば、元官房長官を務めた人物が選挙応援の時に、官房機密費から出した100万円を候補者に渡したと証言しています。
自民党はこれを否定していますが、官房機密費が選挙対策に使われている疑惑は以前から指摘されているところなのです。
(全6回)
(#017 2024.05)