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オマケでもらった本がガチだった話。

そのイベントは、地域の伝統工芸品を販売しているだけでなく、その場で職人さんが実演しているという。お土産売り場のちょっと高級ゾーンにあるようなものって「へぇーすごい技術だねーキレイだねー」と見るだけで買わないし、正直もらってもそんなに嬉しくない。しかし作っている所は見てみたい。作っている人と会って話ができるこの絶好のチャンスに、ガチ職人好きの私は会場の体育館に赴いた。【会津ブランドものづくりフェア】


伝えていく

これを作れるのは一人しかいません!という巨匠がゴマ粒よりも小さい七福神を木彫りしていたり、東京から移住してきましたという人が過疎の村の伝統を受け継ぎ植物から糸を紡いでいたり、実習でつくりました!という漆塗りの展示を学生本人が説明していたり、蒔絵を描くおじいさんの手元に釘付けになっている幼稚園児がいたり。そう、このフェアは単に販売目的のマルシェではない。伝統文化工芸を後世に伝えていこうという主旨がまっすぐに胸に刺さる。

こうやって伝えていくんだな。
道の駅に商品だけポンと置かれてもわからない。「キレイね~でも高いね~」で終わってしまう。その価値、どうして作られ今に残るのか、背景や思いを伝えることの大切さよ。

私は大いに関心し、ゴッドハンドの職人さん方とも色々お話をして、地域おこし協力隊の若者が作ったという漆塗りのマドラーを購入した。バイカラーのモダンな配色で、てっぺんは何故か肉球の形をしているという、いかにも若者らしいアイディアが可愛らしかった。「師匠に教わりました!地元の漆を使っています。」並み居る本物の職人さんに混じって肉球マドラーを作って売るその若者の屈託のない笑顔に、この土地の柔らかい風土が表れていた。

ガチの婚礼

出口の近くには小冊子が山と積まれていた。その本に釘付けになった私は「あの、、この本は?」と聞くと「来場アンケートを書いた方に差し上げています」という。

アンケート?? ハイ書きます、すぐ書きます。

私はアンケートを書き、2種類あった本を見比べていると「もうじき終わりだから両方差し上げますよ」と2冊ともいただいた。ノベルティで無料なのに大量に残っていたその本とは、

【昭和村の婚礼料理調査及び再現報告書】
【天明八年巡見使饗応料理調査及び再現報告書】

婚礼料理はウェディングメニュー、饗応料理はパーティーメニューだ。再現した料理の画像がなんとも麗しい。

私は外に出るとまずはクレープを購入し、ベンチに座ってそそくさと婚礼の本を開いた。

昭和33年3月31日 本名家婚礼

朱塗りのお膳や器に盛られた料理の数々。山深い田舎の限られた食材で、工夫を凝らし手間暇かけて作られている。ひとつひとつの料理に意味があり、縁起を担いで新郎新婦の幸せを祈る気持ちが込められた、ご馳走。

小笠原流礼法に則ったお作法や地域の慣習も色濃く、結婚式(祝言)の儀式を厳粛に大切に執り行ってきたことがわかる。本には3組の婚礼のメニューが載っていた。文化2年(1805)、明治27年、昭和33年、基本的なところは同じでも少しずつご馳走の種類が増えている。やっているうちにどんどんエスカレートしていくのは世の常だ。もう見るからに家族や近所の人の負担が大きくて大変そう。この地域では昭和44年に『会場』ができて大きく変わっていったとある。その会場の名は『生活改善センター』。家でやるのは大変だから会場で簡略化してやろうという、今も昔も同じ考え方ではある。

グチと反省

その『会場』とやらの婚礼も、生活改善センターから55年の間にどんどんエスカレートしていき、今や混沌として収拾がつかない。いったい何をしたいのか、本来の目的を忘れ、見失い、とりあえず惰性と流行と商売で成り立っている。

結婚式というと今でも「堅苦しい、手間がかかる、面倒だ、慣習が古臭い」などと言われるが、時代に合わせて『改善』を繰り返し、少しずつ形を変えてきた。「堅苦しくなく、手間を省いて楽チンに、新しい価値観で」。その上、楽しく美しく脚色演出する。それは会場(業界)の創意工夫と努力の賜物に違いない。脈々と受け継がれてきた婚礼文化、そのひとかけらでも継承していく気概を見失わない限り。

先日、業界のオンライン座談会を視聴していたら、某結婚情報誌の人が、伝統とか文化とかいう考え方が「怖い」と言っていた。例えばご祝儀を熨斗袋に包む、その水引の色や形など、基本的な事を伝えたうえで応用するよう促すというようなことを言ったプランナーに対し、某結婚情報誌の人は「今後プランナーは結婚式に必要なくなる」と言った。水引の話をしたプランナーや業界の重鎮は、一瞬閉口したように見えたが、そうかもしれないなという諦めも滲んでいた。

そのくらい収拾がつかず、カップルに「何でやらなきゃいけないの?」と言われても致し方ないし、答えられないのである。

ヤバい、クレープ食べながら泣けてきた。
婚礼は他の伝統工芸品のように形に残せない無形文化だ。どうやってその価値を伝えていく?この本がアンケートのノベルティ扱いとはいったい。。。

ウェディング業界よ、職人さんの爪の垢でも煎じて飲むなりして反省せい。(自戒も含む)


現場からは以上です。


※このフェアに行ってから約1か月。書き始めたら止まらないのでは?という大方の予想通り、長くなりそうなので一旦おひらきにします。


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