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母の日のカルピス|♪にじ
カルピスは断然、原液を買う。
カルピスウォーターとかカルピスソーダではなく、濃縮された『カルピス』を好みの濃さに割って飲むのだ。当然、自動販売機では売っていない。スーパーで間違えないようによく見て買わなければならない。
ペットボトル飲料をグラスに注いで飲むなんてことはほぼ無い昨今、五感をくすぐるカルピスがその心地よさを思い起こさせてくれる。
カルピスあります
カルピスがまだ瓶だったころ。冷蔵庫の中、麦茶の隣に必ずあったカルピスは、茶色い瓶の全体が水玉模様の紙でくるまれていて中身が見えなかった。濃縮シロップが注ぎ口から垂れて瓶も紙もベタベタしていた。
氷を入れたグラスに原液を注ぎ、水を入れてカランカランとかき混ぜる暑い夏の午後。冬はお湯で割りふうふうと飲む甘酸っぱいカルピスは、ドリンク界で唯一無二の存在として、105年経った今もその地位を確立している。居酒屋のチューハイメニューにも、ファミレスのドリンクバーにも、カルピスは控えめながら「ここにいるよ」と顔を出す。
「セットのドリンクは何になさいますか?」
このGWに私はカフェの手伝いをしていた。混みあうランチタイムで、やっと食事にありついたおじいちゃんから逆質問される。
「何飲んだらいいんだ?」
「冷たいお飲物にしますか? コーヒー、紅茶、オレンジジュース、ウーロン茶、カルピス、、」
おじいちゃんは2回言った。「カルピス、カルピス。」
カルピスを人のために作ると、愛情ホルモン『オキシトシン』が多く分泌されるという。業務用はボタンを押すと出てくるマシーンなので特におじいちゃんに愛情は湧かないが、それでもカルピスを飲んでいるおじいちゃんはかわいい。
今泣いたカラスがもう笑った
私がまだ3才の頃。
母が入院することになり、私は伯母の家に預けられた。
夜に「ピス~ピス~」と駄々をこねているが何のことかわからず、伯母は母に電話をして「ピスってなんだ?」と聞くとカルピスの事だという。あ~そうか、カルピスか。
その時、本当にカルピスが飲みたかったかどうかは疑問だし、ピスではなくカルピスといえばいいのだと実はちゃんとわかっていた。愚図るのは、母がいない淋しさでしかないことはバレバレだ。それなのに母はいまだに言う。「あなたは小さい頃カルピスが好きだった」と。
母が幾度となくその話をするものだから、今でも実家の冷蔵庫を開けるとあの茶色い瓶があるような気がする。
「何かあったの?」なんて聞かず「カルピスあるよ」とからかうように笑う。
虹が 虹が
空にかかって
君の 君の 気分も晴れて
きっと明日はいい天気
きっと明日はいい天気
おやすみなさい。