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強調したいのはドコなのか

 さらすような意図はないのですが、突っ込まずにいられないネット記事を読みました。最近(8月初旬)見たばかりなので、検索したら見つかるかもしれません。

 「コーヒーゼリーが食べたくなったら、コンビニに行くより早くつくれる」という感じの見出しで、時短でも裏技でもない、ごく普通のコーヒーゼリーのレシピが紹介されていました。
 逆に言うと、予備知識や予断なしに読めば、「あ、コーヒーゼリーって結構簡単につくれるのね」と思わせる記事でもあるのですが。

 しかし、一般家庭にそうそうゼラチンって常備されているんでしょうか。

 自分の認識だけを全てにするのは危険かもしれませんが、自分の場合、「必要があるとき買ってくる」のがゼラチン(時々寒天)の立ち位置です。
 寒天といえば(今はほぼ粉タイプかな)、2、30年くらい前、お昼の番組でダイエット法が紹介されたとき、欠品が相次いで、本当に普段から買って使っていた人が迷惑していたとかいないとか。そのくらいにわか・・・という言葉がぴったりな食材だと思っていました。

 何か普段と違う料理をつくろうと思ったとき、やれカイエンペッパーだ甜麺醤てんめんじゃんだといわれ、買いに走ったはいいけれど、その料理以外で使うことはあまりなく、もてあまし、挙句廃棄…みたいな。
 ただ、スパイスや調味料の場合、「〇〇でも代用できます」と付け加えてくれる親切レシピもありますが、ゼラチンの代用品というのは思い当たらないので、ゼラチンがない→ゼリーつくれない→コンビニで普通にゼリー買ってこよ…になるのが関の山でしょう。

 また、コンビニで売っているような、ちょっとボリューミーなトッピングのコーヒーゼリーが食べたい場合、ホイップクリームが必要です。これも生クリームを自分でホイップするか、最初から製品になっているものを使うかで、かかる時間も変わってきますが、いずれにしても、常備している家はあまりないと思います。

 ところで、クリームの上からチョコスプレーやカラーシュガーを振ってもかわいいでしょうが、これはお菓子作りが趣味の方なら、むしろ生クリームより常備率が高そうです。
 ついでながら、お菓子作りが趣味の方は、いろいろ考えるとゼラチン常備率も高そう。

 次に、ゼリーをつくるための所要時間です。
 コーヒー液をつくる、砂糖やゼラチンを液に溶かす。
 液の温度が高過ぎると冷やしても固まりにくくなり、低すぎると溶けにくい…メンドクサイ!
 それを容器に流しいれて、冷蔵庫で1~2時間冷やす→完成!ですと。

 トッピングは冷蔵庫で冷やし固めている間に用意すればいいので、時間はたっぷりありそう。
 さあ、ホイップクリームをふんわり泡立てるのです。
 お庭のハーブ畑にミントを摘みに行くのですっ。


そういえば、なぜコーヒーゼリーには高確率でミントの葉が添えられるのでしょう?
料理に添えられるパセリとか、「はじかみ」みたいなもん?

 いろいろ考えると、完成までに2時間半は要すると仮定しましょう。

 「コンビニに行くより早く」を実現するには、最も近いコンビニが片道75分のところという方でもないと、要件を満たさないのではないでしょうか。
 そういう住環境の方が車を使わないのは考えにくいので、車で75分となると、結構な距離進めます。

 ちなみに我が娘は、仕事の関係で北東北きたとうほくの某市に住んでいたとき、アニメくじを引くために、電車に乗って隣市のローソンに行ったことがあります。
 職場からアパートまで歩ける距離だったので、車はぼちぼち買えばいいやと考えていた段階でした。だから「いろいろ考えると、市内の店より行きやすい」状態だったのでしょう。
 
 「コンビニが便利コンビニじゃない」環境にお住まいの方もいらっしゃるので、「こんなのあり得ない!」とまでは言いません。
 ただ、「ゼラチンや生クリーム(もっといえば、コーヒーも外で飲む派の人は、家には何もないかも)を買いにいく必要がなく、かつコンビニが遠いので、行き帰りの時間でつくれてしまう」までの要件を満たす人は、それこそどのくらいいらっしゃるか。

 意外と簡単、手づくりって楽しい、わずか(?)な材料費で4人分つくれるからコスパもいい――あたりの切り口でよかったんではないかと。

 …と思ってもう一度冷静にレシピ以外の地の文を読んだら、「手軽にカフェ気分が味わえる」という趣旨のようで、コンビニのコの字も出てきませんでした。

 要するに、記事を書いた人と見出しを付けた人とで、認識に齟齬があっただけのようです。
 あるいは書き手が、「コンビニより手軽」という印象を与える見出しで、キャッチー感をねらったのかもしれませんが。

 X(旧ツイッター)で、ネット記事の引用ポストをリポストしようとすると、「まず記事を読んでみませんか?」と出てきたり、投稿者の認識に不審点がありそうな場合、コミュニティノートで注釈が付けられたりしますが、見出しや「端的に表しているっぽい短文」のみの判断は、やはりすべきではありませんね。

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