諦めの境地に入って工夫しない
一般的にプロジェクトと言えば、大抵の場合、多くの制約のもとで実行されるものです。
たとえば予算。
たとえば期限。
たとえば資源。
「目の前にあるモノだけで作りなさい」
と言われているようなものですからね。どんなに高い要求であっても、そのために必要なものを潤沢に用意してくれるわけではありません。常に渇々の状態で進めなければならないわけです。
「制約」とは、プロジェクトからは変更することができない条件のことです。この制約を元にしてプロジェクトが失敗してしまうパターンとして多いのは、この制約(に見えるもの)を疑うことなく、そして確たる工夫もなく諦めの境地で受け入れてしまうことにより、「失敗すべくして失敗する」というものです。
その最たる例でよく耳にするフレーズが
「お客さまがそう言ったから」
です。私たちプロジェクト活動をする側の立場は、お客さまの抱える問題や課題を"依頼(注文)"という形で請け、解決するのが仕事であって、お客さまの言いなりになることが仕事ではありません。そんな契約法も存在しません。
こと、契約が請負契約である場合、成果物責任以外に追加要求があれば請求対象になりますし、作業の進め方についてはこちらから提案し、説得し、誘導しなくてはなりません。お客さまに請負契約先の作業をコントロールする権限は、契約上存在しないのです。
また、お客さまを神様か何かと勘違いして、自らの専門性をもとに請け負ったにもかかわらず、その責任において成功させるための努力を怠り、お客さまの誤った判断に対して制止すべきところを制止せず、のちに大きな問題を起こしてしまったら、それはIT調停において請け負った側の重過失となる可能性があることは、以前説明した通りです。
『制約』として思い込んでいるだけで、実は制約ではなかったという条件も結構あるものなのです。
一例として、プロジェクトのスポンサーから「○円以上は出せない」と言われた時を想定してみましょう。この時、それが本当に制約になるのか一度考えてみてください。
たとえば、そのスポンサーの担当者様の上長にエスカレーションして改めて確認することはできませんか?
たとえば、そのスポンサーにプロジェクトで得られる成果の大きさを説明して、予算を追加することはできませんか?
たとえば、プロジェクトの成果を他社にも提供することでスポンサーを増やし、予算を追加することはできませんか?
たとえば、年度ごとの分割支払いや成果報酬型など、契約方法の変更によって一時的な予算枠に縛られないプロジェクトにできませんか?
検討できる選択肢は色々あります。ですが、そういった検討をすることも無く、実際には「面倒だからやりたくない」「担当者との関係を悪化させたないからしたくない」と言った理由の方が多いはずです。
しかし、そんな理由はただのエゴであって、到底ビジネスと呼べるような代物ではないことをみなさんは知っているはずです。
まずは、制約が本当に制約なのか。
様々な視点から検討してみましょう。
また、それが制約だとした場合、その制約の中で実現できる進め方・方法を考えなければなりません。先日の見積もりが良い例ですが、制約が多い中で目標を実現する方法を工夫して見つけ出す、または最後に本当に不可能だと見極めたらプロジェクトをハナからやらない決断を下すことがプロジェクトマネージャーの大きな役割です。
大切なのは、「発想を柔軟にして諦めずに工夫する」ことです。
経験や知識が不足すると、あるいは過度に知識だけが膨張すると、その中で考えることを止めてしまって、早々に諦めてしまう人が多く見られます。考えるべきは「やるか、やらないか」ではなく、「どうやったらできるようになるのか」です。
そもそも発想の根幹をそこに設定しない限り、諦めないことも、工夫することもできなくなってしまいます。