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ひとりで勝手に判断してしまう

いますよね。
正直、私もそういう部下を相手にするのはちょっと苦手です。

自身に相当量の裁量を任されていない限り、個人で

 「あーするべき」
 「こーするべき」

と言う理屈を中心に勝手に判断してしまう…上司としては最も面倒な社員の1つです。私も、どんなに初期能力が低くても、素直でありさえしてくれれば、一人前に育成できる自信がありますが、部下にするならせめてこのポイントだけはまともであってほしいと思っています。

実際には、ルールや一般論が正しいものだとしても、もっと正しいことや、同じ正しさだとしても違う手順となっている…というモノはよくあることです。「正しさ」は1つではありません。

しかし、ひとりで勝手に判断してしまう社員は、自分の中で「正しい」と思ってしまうと、それ以外を認めません。こういう社員は必ず他の社員と軋轢を生みます。

昔、ある会社に見積りの提示を行った際、担当の方は即答をしませんでした。

 「上司に確認のうえ、早めにお答えします」

と丁重に答え、後日丁寧な回答をしてくれました。その時、その会社は「さすが」と思えました。おそらく、コミュニケーションに関する社員教育はそれなりにできているのでしょう。上司も、そういったことに気づかいができているのかもしれません。

逆に、あるトラブルプロジェクトでは、マネージャーと言う肩書きの人がいながら、金額などについて、上司に確認(エスカレーション)したうえで回答をする人は1人もいませんでした。個人で勝手に判断して

 「〇〇してください」
 「××やっといて」

などとスコープに無い作業を適当に振っておいて、後で請求されると「そんな金はない」「そんな作業、聞いてない」と上司が怒り出す…結果、お客さまと開発会社との間で、『作業内容と金額』の齟齬について、トラブルになったわけです。

ちなみに、最近、私のもとに来るトラブルプロジェクトにもちらほらこの手の問題が来ます。しらんがな。お客さまの窓口を担当されている方が決裁者ではないことなんて多々あります。その場で即断されるような場合は、まず間違いなく『上司とコミュニケーションが取れていない』リスクを考慮すべきなのに、それをしていなかったがために、後々請求について揉める結果となって、長期戦にもつれ込むケースです。マジでしらんがな。

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こういう組織構成にあって、課長、部長、本部長がなにもせず、マネジメントもロクにしていない状況で、問題が起きたから何とかしろ…と言われても。そもそも品質じゃないし…。

まだ、揉める程度ならいいのですが、請求されてきた金額を支払われないようになった…なんて事案すらあります。現場の担当者が勝手に判断してしまったことで、最終的に金額がプロジェクト発足当初とはまるで違う場合…と言うのは今なお多い問題です。

この手の事故は、おそらく毎年述べ数百件以上起きているのではないでしょうか。私の狭い了見でも、年間数件は耳にします。そして、たいていが大きな損害金を出すような問題に発展しています。この類の問題だけで、ここ10年遡れば、おそらく1兆規模のムダが発生しているんじゃないですかね。


それに対し、当事者である担当者はノーコメントを貫くことも少なくありません。聞く限りでは、企業としてこうしたトラブルを避けるための教育をしていなかったりするようです。大手SIerでもそんな教育をしている…と言う話は聞きません。

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もともと、B2BのIT業界は、多重下請け構造となっているケースが多く、実務レベルの仕事は中堅~中小零細企業が多数を占めており、会社の規模によっては、そもそも教育そのものが行き届いていない傾向にあります。私自身、1次~3次までなら普通にこなしてましたし、関わった…ことがあるのは13次請けと言うものがありました。まだ、多重派遣が禁止される前だったかも知れません。

そうした結果、このようなトラブルを起こしてしまうことも多々あるのです。これも偏に

 コミュニケーション不良

が巻き起こしたものと言えるでしょう。
その要因として次のようなものが考えられます。

ビジネスの基礎力が低い

 上司に1日に数回は報告する
 上司は報告に対し、できるだけ早く、正しく答える
 悪い話は、速やかに上司に報告する
 「お金」が関与する話は、上司の判断を仰ぐ

そのプロセスで互いの考えや思い、意志、仕事のスキルやレベル、課題意識を確認できるわけです。そして間違っていないなら間違っていないなりに、間違っているなら間違っているなりに成長していきます。

言い換えると、「報告を受ける、回答する」といったプロセスを経て、情報を伝達する + 伝達した情報を共有すると言うコミュニケーション行為が十分に浸透していないようでは、互いに一定のレベルに達するのは難しいのです。きちんとコミュニケーションを意識して行動している人たちは、上司にきちんと報告を行い、お伺いを立てていることが殆どです。

上司からの回答はもしかすると、間違ったものもあるかもしれません。

しかし、頼りない上司であろうとも、報告し、回答を得るプロセスで、部下は何かを感じ、考えるものです。この試行錯誤の中で、しだいに判断能力を養っていきます。

これは、個人で磨くことは難しく、上司などとふだんから何度も話し合う中で身につけていくしかありません。上司に意見を言って指摘を受けたり、否定をされたりしていく中に学びがあるのです。ひとりで殻に閉じこもり、仕事をしていくと、なかなか身につきません。身につくのは判断力ではなく、

 独断力

です。責任が伴わないのに、自由気ままに判断/決断を行い、周囲に迷惑をかけるのは、もう無法地帯にいるゴロツキと何も変わりません。

一般的に「この人は判断能力が同世代の社員に比べると低い」と感じる人は、得てして上司との関わりがあまりない、あまり関わろうとしない人に偏る傾向があります。上司は部下育成に関心がさほどなく、事実上、育成を放棄しているようにも見えます。レベルの低い上司からは、低いレベルの部下しか生まれないのかもしれません。


ちなみに、私はある仕事を始めようとするとき、色々と手続きやルールを決めて、メンバーと確認(キックオフ)を必ず行いますが、その決め事の中には必ず『エスカレーション』の手順をハッキリさせます。

ルールや手続きが、メンバーに負担をかけないのはもちろん、メンバーも過不足なく情報の共有ができるよう務めることが、チームワークにおいて最も重要な要素の1つとなるからです。


自分を過信する

判断能力が低い人は、自分を過信する傾向が強いと言われています。

同世代の社員と比較し、仕事に対する実務能力はハッキリと見劣りしていることがわかります。けれども、自身を優秀と思い込んでいるフシがあるのです。

それも無理はありません。
誰もその人に何も言わないから、どんどん勘違いしてしまうのです。そして、十分なコミュニケーションもないまま、わずかながらの経験で得た基準や教訓などを「唯一」と信じ込んでいくわけです。コミュミケーションが少なければ少ないほど、得られる情報は自身の経験だけを頼りにするしかなく、10回問題を起こしても、それには目を瞑ることも自由。たった1回の成功で増長していくことも自由となってしまうのです。

そうしたことについて上司と話し合う機会がないから、さらに独善的になる。ひとりで仕事をして勝手に決断をするから、上司や周囲の社員からは仕事の状況や難易度、問題点がわからない。ある意味で、完全なブラックボックスとなり、ますます勘違いし、悪循環に陥る…という負のスパイラルの完成です。

このタイプは、ひとりで仕事をすることを「自主的(自分が主人)」であると信じ込んでいる場合すらあります。先輩やその上司らも、部下の育成には熱心とは言い難い現場によくあるシーンです。そもそも、熱心ならばもっと報告を求め、育成をするのですから。

上司に報告せずに、ひとりで判断し、決断し、トラブルが続くことを許容するような風土では、従業員の定着率は全般的に低くなりがちです。育成をしようとはしないくせに、問題が起きればその責任追及だけは人並み以上に行おうとするからです。

そしてわずかながら残った生え抜きの「過信社員」から、管理職や役員が誕生していきます。そうした会社を相手にするときは注意した方が良いでしょう。同世代の人と比べて大きく成長していく人を見たことがないため、ダメなことに気付けず、ダメなままでいる可能性が高いかも知れないからです。


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Takashi Suda / かんた
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