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会社の寿命よりも長く活躍するプロフェッショナル
そう呼べる人材を、みなさんの企業はいったい何人抱えているでしょうか。
そしてそうした人材を流出しないよう、企業はいったいどのような取り組みをしているでしょうか。
もし、何もしていないのであればそう遠くない未来にいずれ衰退する可能性があることを示唆しています。
パフォーマンスの出しやすい(人的、仕組的、物理的、etc.)環境を整える
パフォーマンスに見合った適切な評価を実施する
基本的にこの2つさえ満たしていれば、社員のエンゲージメントは否応なく向上します。人的環境は人間関係起因のストレス源に関係するでしょうし、人的環境や仕組的環境は心理的安全性にも直結することでしょう。
もちろんこれだけがすべてではありませんが、最低限度これだけのことができていないと社会的倫理感のある企業としては認めてもらえなくなる時代に突入しているといっていいと思います。
私のように不適切な経営や組織運営が嫌になって辞める人もいれば、社畜のようにガムシャラに働いたせいで精神疾患など罹ってしまう人もいます。どちらにしても「人的リソース(量)」が減れば比例して売上も低下することになりかねません。特に「貢献度の高い人材(質)」に見限られてしまっては
・その補填に複数名採用すればコストが跳ね上がる
・最悪、事業自体が止まってしまう可能性もある
ということになりかねません。今後、企業は『いかにして優秀な人材を確保し、かつ確保し続けることができるか』に重点を置かなければならなくなっていくでしょう。それこそ優秀でない人材との差別化がより広がることになるとしても、です。採用などに力を入れている企業はすでにそのことを理解し、『いかにして優秀な人材を確保するか』に重きを置いている企業といっていいでしょう。
しかし、残念ながら後者『いかにして優秀な人材を確保し続けることができるか』という課題についてしっかりと取り組まれている企業というのはまだまだ少ないように感じます。その証拠に、転職率は基本的に年々増えています(転職率が低下するのは、景気が大きく落ち込む時期だけ)。
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そしてそれは20代だけというわけではなく、どの年代に対しても言えます。
なぜ転職率が向上するのか。「人間関係が嫌だから」「評価制度が腐っているから」などといったネガティブな要因もあれば、「ほかの企業のほうが待遇がいいから」「やりたいことができるから」なんてポジティブな要因もあるでしょう。具体的な理由はそれぞれでしょうが、端的に言えば
「今の会社にいたくないから(いてもメリットがないから)」
です。その割合が年々増えている…と数字が示しているのですから、『いかにして優秀な人材を確保し続けることができるか』という命題に対する企業の取り組みがどれだけ遅れているかは言うまでもないと思います。
もしも各企業がそういった取り組みを実施されていて、その成果が功を奏してさえいれば転職率は右肩下がりになっていなければおかしいわけですから。
逆に、何も言わなくても、あるいは何もしなくても会社に残ろうとするのは「貢献度の低い人材」「つぶしの利かない人材」が大半です。
「今のままでいい」
「今のままで満足している」
と自分自身に対しても、企業に対しても感じていれば、それ以上の成長も変化も求めませんし、努力しようという気にはなれませんよね。どんな立場になっても、どんなにスキルや知識を身につけても満足してしまった時点で停滞が始まります。
そういう人たちは、遅かれ早かれ企業に寄りかかって甘えるだけの存在となってしまいかねません。
働く者、特に知識労働者の平均寿命と労働寿命が急速に伸びる一方において、雇用主たる組織の平均寿命が短くなった。今後、グローバル化と競争激化、急激なイノベーションと技術変化の波の中にあって、組織が繁栄を続けられる期間はさらに短くなっていく。これからは、ますます多くの人たち、特に知識労働者が、雇用主たる組織よりも長生きすることを覚悟しなければならない」
しかし、会社としては寄りかかりの社員ばかりでは困ります。
今では想像もできませんが、古くは「働く」というとそのほとんどが肉体労働でした。そういう仕事しかなかったわけですから、当然定年と呼ばれる50代の頃にはくたびれ果てて、要求するパフォーマンスを出し続けるのも大変だったと思います。退職後もそれほど長く動き回れるわけではなかったことでしょう。
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けれどもまだまだ労働人口の多い時代でしたので、それでも企業のほうは盤石でいることができました。ところが今では
・働く者の過半が身体ではなく頭脳を使う知識労働者
・65歳以上の割合が徐々に多くなってきている
・30年後には6割以上が55歳以上
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となっていますし、未来予測も可能性の話ではなく毎年の出生数から割り出しているわけですから30歳未満の出生可能性はともかく、31歳以上の労働人口に限って言えば間違いなくそうなります。
しかも、企業その他の組織にとって唯一意味ある競争力要因は、ドラッカーがいうところの"知識労働の生産性”です。
ただ言われたこと、決められたことをその通りに従事するだけのお役所仕事、事務作業のようなものは知識労働ではなく肉体労働ですが、そういったものでは競争力強化の要因足りえません。既存にないアイデアや既存のあり方を改善する活動こそが唯一競争力たり得るのです。
それを左右するものが"知識労働者”となります。
肉体労働ではないからこそ定年が延びてもそれ以上に元気なままの人たちが企業の仕組みやあり方をそのままで放置せず、引っ張り、変化を加え、改善することこそが求められているのです。
すでに多くの企業の方が人よりよほど置いてけぼりを食らっている状況なのではないでしょうか。
競争に負け、あるいは競争に勝っても産業構造の変化とやらについていけず、それでも組織の仕組みを根本から見直そうとはしません。たいていは体制を見直すだけで、ルールも評価も、仕組みもなにも変えません。前職までも、余計なチェック作業ばかり増やしてパフォーマンスを劣化させている取り組みを何度も見てきました。
そうして労働生産性を落とさせておいて、しかし要求する成果は毎年右肩上がり…そんな取り組みにギリギリでついていかされている社員は、傍から見ていると
首に縄をつけ、つま先立ちの状態で馬車馬のように走らされている
状態のように見えてしまいます。立ち止まったり、転んだりすれば即座に首が締まる…そんな状態で長続きするわけがありません。
これからは企業ではなく知識労働者こそが事業存続の主役になっていくということは、彼らが自らの組織に繁栄をもたらすべき存在であるにとどまらず、組織の寿命さえ超えて活躍していくべき存在になったということでもあります。
旧態依然とした企業の器に収まらないということです。
それが顕著に表れているのが「副業の増加」であり「フリーランスの増加」なのでしょう。
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したがって、在職中はもちろん、退職後の第二の人生のためにも新しいキャリア、新しいアイデンティティ、新しい環境の用意をしておかなければなりません。
少なくとも労働者個々人の生活や人生、未来にかかわることです。その用意のために企業の古い体質や仕組みが邪魔になるのであれば、労働者はそのような企業に隷属し続ける必要はないのではないでしょうか。
ですが、企業=経営者にはなりえません。
ついつい勘違いしてしまいがちですが、実際のところ経営者は企業全体の細かいところまでつぶさに把握なんてできません。だからこそ「企業」とはヒエラルキー型の組織構造をしています。だからこそその骨格を支える管理職の質…ひいては組織運営のプロとして優秀な管理職を配置できる人事制度にあるといっても過言ではないのです。結果として管理職層が優秀であれば、企業がハリボテになることもありません。
すべて初めての挑戦である。むずかしいことではない。
だが、知識労働の生産性こそ、一人ひとりの人間、一つひとつの組織が成功を続けるうえで不可欠のものである。これからの数十年にわたって、知識労働者として活躍する人としない人、知識経済において繁栄する組織としない組織の差は、歴然となる。
まぁ重い腰をあげるまでに何十年と浪費してしまった私が言うのもなんですが、
・ともに歩んでいける企業ならば、そこで成長し続けるプロを目指す
・古い体質で変化を嫌う企業ならば、個人レベルでの対処を検討する
というのは考えておいたほうがいいかもしれません。
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