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否定を表現する場合の注意点
世の中、いろいろな文章を読んでいるとそこかしこで見られる
「否定演算子(NOT)」
具体的には
「〇〇でない場合」
「〇〇以外の場合」
などと表現されますね。たいていの人はなんとなくそのまま読んで、そのまま理解しようとしていることだと思います。
ですが、なぜわざわざ否定を用いて表現しようとするのでしょうか?
プログラミングなどアルゴリズムを日頃から用いている人ならわかるはずです。あえて否定文を用いると無駄に理解しずらくなるし、テストなどのケースパターンで抜け漏れが発生しやすく、品質にも影響を与えかねません。そしてその原因は人の「読解力」や「理解力」「イメージ力」に依存しないとコミュニケーションとして成立しない表現法になっていることです。
そもそも関係代名詞ほどではありませんが、こうした否定句を用いる場合はその前提を明確にしておく必要があります。
たとえば、選択肢にA、B、C、D、Eの5種があったとしましょう。
事前にこの5種が存在していることや、5種それぞれの特性を理解している人であれば、いきなり「Aでない場合」「A以外の場合」と言われてもコミュニケーションとして成立するでしょう。お互いに脳内で各パターンが共有されているわけですから問題はそうそう簡単に起きません。
しかし、具体的にどのような選択肢があって、それぞれにどのような特性があるのか説明もなく、いきなり「Aでない場合」「A以外の場合」と言われても言われた方はなんとなくしか理解できません。日本語としては普通に見えるため、なんとなくわかった気になりやすいのも問題です。当然、説明する側に抜け漏れがあっても気づけませんし、組み合わせのパターンなどをイメージするにも限界があります。
否定句(NOT)を使えば表現する方は楽ですが、ただそれだけです。
それ以外にメリットはまったくありません。
そのくせデメリット(リスク)だけは恐ろしく大きくなります。
どうしても否定句を用いたいのであれば、すべての選択肢を明らかにし、それぞれの特性を説明する…というステップを踏んだうえで「〇〇以外の場合」と表現しないと、かならず話し手と聞き手の情報格差による認識齟齬が生じると考えていただいて差し支えないでしょう。
さきほど「関係代名詞ほどではありませんが」と言いましたが、まさにこのポイントが該当します。関係代名詞「あれ」「これ」や「それ」の元となるものが何であるのかを事前に伝えて関係性を示しておかなければ、代名詞として成立しないのと同じなのです。
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とはいえ、そもそも否定句なんてものは使わなくても表現はできるものです。
「A以外の場合」ではなく「B、C、D、Eの場合」と表現すればいいだけなんですから。たったそれだけで「他に何があるのか」は自ずと明確になりますし、それぞれの特性ごとの吟味が必要と思われれば「B、C、D、Eそれぞれの特徴を教えてください」という話に進展することでしょう。
これは、仕様書や設計書、テスト仕様書などの文書などでも同様です。
特にIT業界は(労働人口の減少に伴い、多少の見直しはされているものの)いまだに『理系出身者を優先する』企業は少なくありません。私が見てきた中小企業、大手企業でもまさにそういった管理職層は目立ちました。まー、採用担当はそこまで偏った人ってそういないんですけどね。
そして理系出身者には、日本語が下手な方も多数います。
いえ、ボキャブラリが少ないとかそういうことを言っているわけではなく、相手をしっかり見据えたコミュニケーションを得意としていない方が、文系出身者と比べても多いように感じます。
元々の資質もあるのでしょうが、少なくとも理系の高校・大学などでは「国語」…特に書き手の思考を理解、把握する情緒などを深めるような教育や、文法や行間の意味や使い方などを理解する教育はほとんどされていませんから、当然と言えば当然です(していても興味がないから理系に進んでいるんでしょうし)。
私自身が理系大学の出身者ということもあって、同じ出身の方とは接点が多かったこともあって、多少の偏見が含まれているかも知れませんが、そういった傾向があると思っています。
だからこそ、IT業界のエンジニアと呼ばれる人たちは、ふわっとした曖昧なニュアンスでのコミュニケーションを中心にして、徐々に厳格な仕様書や設計書を作成してこなくなりました。
まったく作成せずに、別のコミュニケーション方法ですべて補填できるのであればそれでもよかったのですが、中途半端に仕様書や設計書を残すものだから、それをきちんと読もうとする発注者…顧客とはいつもどこかで認識齟齬の問題を起こします。
コミュニケーションに用いる表現には、可能な限り「否定句(not)」を利用しないように心がけましょう。それだけで齟齬の起きる確率は大幅に改善されるはずです。
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