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(計画)コミュ二ケーションルールを決定する

プロジェクトの発足に伴い、

 ・なぜやるのかを決めて(目的の定義)
 ・やるべきこと/作るべきモノを決めて(スコープ特定)
 ・いつまでにやるかを決めて(スケジュール設定)
 ・誰が担当するのかを決めました(役割定義)

仕事に関わらず、家庭内の家事でも、旅行でも、友達との遊びでも、大抵の集団活動では決めることです。

でも、問題を起こすプロジェクトでは、たったそれだけのことをですら、まず

 決めません

そして

 決めても守らない人が出てきます

なぜか、大人になるとそれが許されると思う人が出てくるのです。これは若手や新人だけでなく、中途半端に権力を持ってしまった管理職層や、時には経営層でも起こりえます。

ほぼ100%そうなっていることでしょう。

言ってみれば、

 料理もまともにできない男子が、
 レシピに手順が書かれているにも関わらず
 ロクに見ようとせず、目分量で料理に挑戦しました。
 挙句の果てに調理中、味見すらしないで作りました

と言っているようなものです。
はたして、美味しい料理ができるでしょうか?

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ハイ、ムリデシター!

ルールや手順を決めればそれでいいかというと、そんなことはありません。上記の通り、ルールや基準、手順があったとしても、それを遵守しようとしない人がいればそれだけで、無いのと同じです。

そしてそれはプロジェクト活動だけのことを指しているのではありません。

複数人で共同作業を行うこと…すなわち

 組織的行動/集団的活動すべてにおいて

共通して言えることです。
その中でも

 ・なぜやるのかを決める
 ・やるべきこと/作るべきモノを決める
 ・いつまでにやるかを決める
 ・誰が担当するのかを決める

の4つは、何事を行うにしても必ず大前提として決めなくてはなりません。

当然のことながら、途中で変更が入り、後で変わってしまうことはあるかも知れませんが、それは「変更しないと当初の目的が果たせない」と判断した場合のみに限ります。個々人が勝手に判断したのでは意味がありません。

役割定義に沿って、その判断と決断に責任を負うべき人が判断した時にのみ、効力を発揮しなければなりません。

まずは、この点に強い義務感や強制力を持ちましょう。
そうしなければ、社会的集団活動は基本的に無理です。

ここまでのルールに則って、「自身の役割」すなわち労働義務に準じれるものだけが次のステップに進めます。

コミュニケーションルール

みなさんの中には、

 「コミュニケーションは人と人とのハートが大事!
  ルールなんか作るとなんだかギクシャクして
  プロジェクトの風通しが悪くなるのでは?」

と感じる人もいるかも知れません。実際、感情と義理人情だけで何とかしようとする人は今の時代にも存在します。

それはそれで一理あるし、メリットもあるのですが、それだけでは圧倒的に不十分です。感情や人情は言語化することが困難で、多くの人に同じ質を再現させることが不可能に近いからです。どんなに「努力しろ」と言っても、具体的にどう努力すれば、同じ成果が導き出せるのかが説明できないのです。だから、属人性の塊である「感情」や「人情」に頼るわけにはいきません。

もちろん、だからといってプロジェクトにおけるすべてのコミュニケーション方法をルール化、手順化しておくべき、という訳ではありません。

『計画』の段階で決定すべきなのは、重要な会議の開催方法や共通的に利用できるコミュニケーションの手段などであり、プロジェクトにおける基本的なコミュニケーションを効率化したりミスを軽減したりできる範囲に限られます(もとより、すべてのコミュニケーションをルール化するなんてことは不可能です)。

それすらも感覚的に嫌う人はいるかと思います。

しかし、考えてみてください。そう、"知性ある人間"を自負するのであれば、感情や感覚だけに頼らず、考えましょう。

ある進捗報告会で

 Aさん「いい感じに進んでます」
 Bさん「80%です」
 Cさん「1日遅れです」

とそれぞれがそれぞれの単位で現状報告したとして、あなたがマネージャーだったとしたら、それで適切に状況を把握できますか?

あるいは、あなたはお客さまの立場だったとして、

 開発側「今週は思わしくないから報告はやめて、来週報告すればいいや」

と言ったように、報告したりしなかったりとされて、安心して開発を任せられますか?

必ず、必要最低限の『基本部分』はルール化しなければ、誰もが自分勝手な尺度で判断してしまって、ステークホルダー間のインターフェースは混乱するだけなのです。真っ先にマネージャーにとって面倒なことになるでしょう。自分なりのやり方が確立してしまって、嫌がる中堅やベテランが出てくるかもしれません。

しかし、若手や外注の方に聞いてみてください。

まともな情報連携やルール化もされず、説明もロクに無いまま、「アレやっといて」「コレやっといて」と言われた人たちがどれだけ不満を持っているか。

コミュニケーションや情報連携をまともに整備してくれただけでどれだけ働きやすいと感じているか。

基本部分でルールを確立した上で、さらにプロジェクトにオープンで明るい雰囲気を作り、メンバー間の主体的で自由なコミュニケーションを活性化すること、その“合わせ技”ができるプロジェクトマネージャーが優れたプロジェクトマネージャーと言えるのです。


会議体を定義する

それでは早速コミュニケーションルールを決めていきましょう。
まずは“会議体“の定義を行ないます。

なぜ会議体が最初に出てくるのか。

それは、この会議体の設定の仕方1つでプロジェクトの負担や生産性、果てには経費が大幅に変わるからです。言い換えれば、成功も失敗も、会議体のあり方1つでその内容が大きく変わるということです。

私が過去に経験したプロジェクトでは、週1回行われる会議体の内容を少し変えただけで利益率が3%改善されました。

一般的なIT企業…なかでもソフトウェア開発業の平均利益率が5~7%と言うことを考えれば、これが如何に大きな数字かおわかりでしょう。

もちろんプロジェクトでは多くの会議が必要に応じて随時開催される訳ですが、計画段階であらかじめ決めることができる重要な会議については計画段階で以下のような項目を定義しておきます。

・会議体の名称
・主な議題
・開催日時/頻度 
 (※1回限りは「開催日時」、定期的な開催はその「頻度」を定義)
・開催場所と利用する設備
・参加者と会議における役割
 (※司会進行役、議事録の記録者など)
・会議で利用する資料

「計画段階であらかじめ決めることができる重要な会議」はプロジェクトによってもちろん異なるのですが、ほとんどのプロジェクトの場合では最低限以下の3種類の会議体が必要になります。

図23

以上の点を踏まえ、会議体の定義例を挙げると次のようになります。

図22

これはごくわずかの一例です。私ならさらに半分にします。

この例では、定期的な報告会を毎週チーム単位で行った後にプロジェクト全体でごくわずかな時間行い(No.2と3)、さらに毎月1回プロジェクトスポンサーに報告している(No.4)ことが分かります。

ただの報告であれば、いちいち会って話はしません。
経費と、移動時間と言う非生産的な時間帯が勿体ないからです。

ここで重要なことは、情報連携頻度やその内容が「それで充分である」と言う確証が持てるかどうかということです。

ただ単に、「不安だから」と言う理由で頻繁に打合せを開きたがる人もいますが、打合せはそもそも"非生産活動"ですので、実施すればするほど、参加する人たちの生産性を損ね、膨大なコストを消費します。

「会議の開きすぎ」
「会議の長続き」

で破綻してしまうプロジェクトも珍しくありません。

昔、Sier+協力会社A+協力会社Bの3社でテレビ会議を用いて進捗報告会をしていた時のことです。ここで仮に、私のいた当時の会社を協力会社Aとします。

その時、協力会社Aでは、マネージャーがあまりよろしくなかったのか、自分では何も把握できておらず、結果的にメンバー全員およそ10名が報告に参加させられました。その間、全員の作業は止まるわけです。

これだけでも、相当無駄な時間の使い方ですが、協力会社Aの報告が30分ほどかけてやっと終わったかと思ったら、その後の協力会社Bの報告にまでなぜか全員付き合わされることになりました。しかも、協力会社Bが進捗遅れが発生しているとなった瞬間、SIerのマネージャーがキレはじめ、そこから延々と2時間ものあいだ説教が始まったのです。

私も当時はまだ20代。メンバーの1人でしかなく、テレビ会議で見えているだけに立ち去ることもできずにずっと自分に関係のない説教に付き合わされることになりました。

結果、協力会社Aはその会議体のために、延べ20時間以上…すなわち約3~4人日の進捗遅延を起こしたわけです。

会社のお金、あるいはお客さまのお金の中から、数十万ものお金を私欲で費やしたのと同義です。これらはすべて、協力会社AおよびSIerのマネージャーが、会議体の何たるかを知らないままにマネジメントした結果と言えるでしょう。

会議体には必ず目的(費用に見合った意義)が必要になります。

わざわざスケジュールにしわ寄せまで作りながらも、必要だからこそ行っていることです。目的も明確にせず、対効果も考慮せずに、無作為に行っていいものではありません。

しかし、会議体の本当の目的も知らないマネージャーやリーダーは、必ずこう考えます。

 「自分(知りたい人)が、聞くための会議である」

と。通常、マネージャーと言っても、メンバーの活動を大抵目の前で見ているはずです。自分の机から少し観察していれば、順調そうか、問題がありそうかは見当がつきますし、出勤直後や昼食前後、帰宅前の一言二言の雑談程度で、進捗状況なんてわかるはずです。

けれども、会議体の目的がわかっていないマネージャーやリーダーは、普段、管理らしい管理を全く行わない代わりに会議体ですべて根掘り葉掘り聞けばいいと思っています。

つまり、"会議体"は「自分の管理のためにある」ものだと勘違いしているのです。

ですから、そういう会議では必ずメンバーの人たちにとって苦痛でしかなくなってしまうのです。参加者全員にとって本当の意味で有意義であるためには、

 誰のための会議体か
 どんな意味/価値があるのか
 無ければどんな問題が起きるのか

等がわかっている必要があります。決してマネージャーをはじめ、一部の能力不足者の自己満足を補うために、メンバーに負担を強いる場ではないのです。


コミュニケーション手段のルールを決定する

会議体の定義と併せて、プロジェクトで共通的に利用するコミュニケーション手段のルールを決めておきます。

プロジェクトにおけるコミュニケーションの代表的なルール項目を以下に挙げておきますが、プロジェクトの作業を進めてみたら「こんなルールも決めなければならないね!」とか、「このようなケースに対応するためにルールの見直しが必要だね!」いうことが結構出てくるものです。

プロジェクトを進めながら都度ルールを追加・変更すれば構いませんので、特に規模の小さいプロジェクトではあまり厳密で面倒なルールを最初から決めておく必要はありません。

・ 電子メールを送付する際のルール
  − Subjectのつけ方
  (最初に“[○☓プロジェクト]“の文字列を入れるなど)
  − 添付ファイルの圧縮方法/上限サイズ/サイズがオーバーする場合の
   分割方法/暗号化方法など
  − 専用のメーリングリストを作成するなど
・ グループウェアなどの情報共有システムの利用ルール
・ 議事録の作成・配布ルール
  − 議事録のフォーマット/利用するテンプレート
  − 議事録の送付期限と送り方
   (会議後2日以内に出席者全員に電子メールで送付するなど)
・ 書類を回覧する際のルール
・ プロジェクトの関係者間の質問・回答の管理方法
 (メールやり取りを行い、その経緯はQ&Aリストを使って管理するなど)
・ 緊急時の連絡方法
 (連絡網と各メンバーの緊急連絡先など)

これらは非常に基本的なルールであり、計画段階であらかじめ定義しておくことで、プロジェクトの作業が始まってからアタフタしなくても良くなることがわかりましたでしょうか。

何も決めないということはフリーダムと言うことです。無計画と言うことです。それを居心地がいいと感じる人もいるかもしれませんが、若手を中心にそれが不安で不安で仕方がない、と言う人も数多く存在していることを忘れないでください。

 無計画、無定義、自由奔放

それで成功し、それで評価され、それで給与がもらえるならそれもいいでしょうが、コミュニケーションルールをフリーダムにした組織は、決して長続きしません。

コミュニケーションルールの決定とは、わかりやすく言えば

 どうやって報連相すれば、

 チーム活動に支障が出ないか?を決める

ということです。「チーム活動に支障を出してまで報連相ルールを決めない」ことも、「チーム活動に支障が出るような報連相ルールにする」ことも、マネジメントとしてあってはならないことなのです。

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