伝えるための基本「ゴールは何か?」
先に言っておくと
「理解してもらう」
「納得してもらう」
はゴールになりません。理解や納得してもらうだけで満足し、それ以上のことを期待しないコミュニケーションと言うものは、ビジネスにおいてはもちろん、日常においてもほとんど存在しません。
なぜこんな話をしだすかというと、
7/1のAM6時頃、私の母が緊急入院しまして。
その時点で、実家から連絡がきたのですが、症状が「高熱」「咳あり」ということで、コロナウィルス感染による重篤化も懸念されており、PCR検査の結果待ちだったのです。
個室ICUに連れ込まれたというのですから、相当な状態だったのでしょう。早々に実家に戻ることも考えましたが、コロナ感染の場合は感情だけで判断していいわけにもいかず、まずは診断結果を待つ…という結論になっていました。
で。
結局、PCRの結果は陰性。しかし、肺炎の症状、検査結果でも影があるうえに、ここ2日ほど高熱が出ていた…ということで、誤嚥性肺炎の可能性も検討しつつ、しばらくは入院とのことでした。コロナへの疑いも晴れたわけではないし、まだICUから出てきたわけでもないので、何一つ安心できる状況ではありませんが、それだけに
「今後」
について、ある程度ハッキリさせたかったのです。私も、転職活動とか色々ありますしね。予定・日程の調整だって必要になってきます。実家が宮城県にあって、最寄りの駅から徒歩1時間以上という片田舎で、私は現在愛知県に住んでいます。おそらくドアtoドアで最短でも5時間以上はかかるでしょう。そうそう簡単に行ったり来たりはできません。
ですが、わかったことと言えば、医者の診断結果だけ。弟からは
今後の医者の活動、結果がわかる目安・目途もわからん
見舞いや医者との会話を行う頻度、実家のやりくりについてもわからん
の一点張りで話が先に進みません。報告してオワリ…だったわけです。そんなことってありませんよね。情報を共有する以上は、共有する相手に「何かしてほしい」「何かあった場合を検討しておいてほしい」「準備をお願いしたい」等、何かしらの行動目的を生み出したいはずです。
仮に何一つ決まっていないとしても、「決まってない」のかどうかを伝えることができますし、「いつまでに決めるか」を答えることだってできるはずです。
でも、我が弟ながら残念なことに、何一つコミュニケーションというものがわかっていなかったのです…。
伝えた先にあるもの
たとえば、次の2つを比べてみてください。
A「営業部と連動して、より欠品に対して
迅速に対応できるシステムを開発したいのです」
B「営業部と連動して、より欠品に対して
迅速に対応できるシステム開発をしたいのです。
つきましては、営業の〇〇さんに部長からもお話しいただけますか」
さて、どちらが仕事をスピーディーに進めることができるでしょう?
「何のためにプレゼンをするのか」
「聞き手はどんなイメージか」
を考えたあと、次に考えるべきは「ゴールはなにか」です。このプレゼンを通して、
「聞き手をどういう状態に持っていくか」
「どこをプレゼンのゴールとするのか」
を言語化します。具体的にいうならば、聞き手が
・賛成にせよ反対にせよ、何らかの意見を表明してくれればいいのか
・共感してくれたらそれでいいのか
・動いてもらう必要があるのか
というように、聞き手が「どこまでやればいいのか」を決めるわけです。これを決めなければ、プレゼンなんて開く価値はまったくありません。言いたいだけの自己満足にしかなりえないからです。私たちはついつい、このゴールを強く意識することなく、プレゼンの準備を始めようとしてしまいます。
「プレゼンの時間が設定された、テーマは××についてだ、
おそらくこんなことを説明しなければいけない、
よし、資料作りを始めよう、
パワーポイントを立ち上げよう、
タイトルはどうしたらいいか…」
と、なんとなく手を動かしながら準備を始めたりしませんか?
実は、これは準備をするうえでの思考としては明らかに間違っています。すべてのプレゼンは、ゴールを達成するためにあります。聞き手のことを考え、聞き手をどういう状態にもっていきたいかを見定めてから、それを実行するために何をすればいいか、何を伝えればいいのかを逆算で考えていくのです。
計画は逆算的に
意外と、この「逆算」ができない人が多いのではないでしょうか。
たとえば、「計画ができない」、「計画した通りに進まない」あるいは「計画通りに進んでも問題が残る」と言うのは、逆算が苦手は、または逆算せずに計画している証拠です。昔、ある社員から、
「上司に対してどのように説明したらいいか迷っているので、
相談に乗ってほしい」
というメールをもらったことがあります。話を聞いてみると、自分が実行したいと考えていることがあるが、なかなか前進しなかったある活動を、上司に説明して理解してもらいたいとのことでした。
しかし、よくよく聞いてみると、そのプランを実行するにあたっては、上司にから「他部署に働きかけてサポートしてほしい」という希望もありました。そうだとしたら、目的として、上司に説明するだけ、上司が理解・納得するだけでは不十分です。
そこで「他部署のサポートを得る」をゴールとして設定し、そのゴールに基づき、上司にどのように動いてほしいのかを含め、すべてのシナリオを組み替えるよう、アドバイスしました。
そう、端的にいえば、冒頭の説明Aから、説明Bに変わったわけです。
こういう細かなことでも、「ゴール」を明確にするのは大切です。
「上司に、あるいは他部署に働きかけてほしい」というゴールは、私と話しているうちに出てきたものであり、当初彼は、
「なかなか難しい活動で、そんなに簡単に進まないだろうから、
理解してもらったら、あとはまた都度考える(依頼する)」
というスタンスでした。けれども、そのままプレゼンしていたら、おそらくその上司は話を聞いた後、
「うん、わかった。
それで?結局、君は何がしたいの?」
と質問したことでしょう。それに対し、「それについてはまた別途ご相談します」と答えていたら、また話が進まなくなるのは目に見えています。
そもそも、「理解してもらう」というゴール設定がおかしいのです。伝える側が、聞き手に、「理解したうえで、どうしてほしい」のか、君が動くのか私が動くのか、どうすればいいのか、etc.…その後の活動について明確化するということを必ず考えなくてはならないのです。
ここまでの説明をして、スッキリして自分のすべきことに打ち込めれば、その社員はおそらく将来大きく成長するでしょう。
それでも不安な人
稀に、ゴールを定め、その実現のためのシナリオを作り、リハーサルやレビューまで行って、しっかり準備しているにもかかわらず、「それでも不安が抜けきらずに、何か考え込んでいる」と言う人を見かけます。
そういう人は、ひょっとすると問題の根底にプレゼンの説明"内容"で悩んでいたわけではなく、本当はただ
・プレゼンをしたくない(⇒誰かに代わってほしい)
・文章考えることで悩みたくない(⇒誰かに文章考えてほしい)
・誰かに回答を作ってもらいたい(⇒誰かに解答用紙を作ってほしい)
と安易に思ってしまっているのかもしれません。その漠然とした不安や好き嫌いから、先輩や上司への相談と言う形式を用いて『他人を利用する』と言う選択をしようとしていることになるかもしれません。本人に自覚や悪意が無くても、です。
心当たりがある人は、よーく考えてみてください。不安をぬぐうためだけに周囲に頼り、周囲が善意によってどんなにアドバイスしてくれたり、手伝ってくれたりしても、
「でも…」
「不安で…」
と言い続けていると、最後には代わりにやってくれる人が出てきたりしていませんか?そして、そういう状況を少なからず期待していたりしませんか?
そういう人は、この相談と言う機会を作っても、自らが成長することはありません。むしろ、『他人を利用する』甘えばかりが募り、より酷くなっていく可能性が高くなります。
やるべきことをやる
そのための「支援」として他人に協力を要請する
はあってもいいですが、自らの責任や自らの仕事を放棄していいことなんて何一つありませんので、周囲のフォローをお願いする時は、その範囲をしっかり見定めておく必要がありますね。
余談
一通り、医者の診断結果を聞いたうえで、
私「で、直近で次にどういう予定になってるん?」
弟「わからん」
私「いや、医者の行動がわからんなら、こちらの予定は?」
弟「わからんって」
私「わからんはずないやろう、
今後何をどうするか、どうするつもりでいるのか、
決めてないなら「決めてない」ってわかるやろうが」
弟「医者からは検査の結果しかきてないねんから、わからん」
私「医者の話は聞いた。状況も把握した。それはわかった。
そんなことは一切聞いてないやん。
俺が聞きたいのは未来の話や。過去も現在ももうえぇねん」
弟「だからわからんって」
私「だれが未来予知しろっていったよ。
病院の動向や、おかんの病状について予測しろというてないぞ。
今後のおまえの行動について、計画を決めろって言ってんの。
おかんが入院してるのに何も決めてなってことはないやろ?」
弟「そらそうや」
私「ほな、直近の予定は?」
弟「お医者さんの言ってた症状h…
私「だから、それはさっき聞いたから。過去は聞いてないから。」
弟「お医者さんが言ったこと以上のことはわからんって」
私「誰もそんなこと聞いてないやろ!?
…ふー…あんな?
お前は俺にどうしてほしいの?
なんでおかんが緊急入院したことを俺に伝えたの?」
弟「そら家族やから」
私「ちがうやろ。家族やから…で終わりではなく、
家族やからこそ、やるべきこと、できることがあるからやろ?
無関係の人間につたえたりせんやろ?
じゃあ、家族というつながりでどんな関係性があんねん?」
弟「しらん」
私「そうやないやろ、お前何歳やねん。40すぎたオッサンが…。
保証人の件もあるし、いざという時の準備もせなあかんやろ。
そのための情報共有ちゃうんかい。
それとも、危篤とか今夜が峠とか医者に言われて、
駆けつけんでもいいとか思ってるんか?」
弟「そんなわけないやん」
私「なら、俺にもスケジュール調整があることくらいわかるやろ?
お前はお前さえ良ければ、他の人の人生はどうでもいいのか?
俺は俺の調整のために、お前らの予定を目安でもいいからしりたいの。
わかる?これ調整できんと、いざというとき動かれへんの。」
弟「…」
私「で、医者の今後の動向がわからんとして。
おまえとおとんの今後直近の予定は?」
弟「わからん」
私「いや、いやいや、次の身の振り方やで?」
弟「わからんって」
私「とりあえず明日、着替えを持っていくとかもないの?」
弟「それはやる」
私「だから、それを言えって言うてんの!
それはお前が決めたことで、未来の予定の話やろ!?」
弟「あー、わかったわかった」
私「で、それ以降は何も決めてないのね?」
弟「わからん」
私「もーえぇわ。いいか?
わからんいうなら、今から俺が決めるから、言うとおりにやれ。
一つ、なんでもかんでも報告はいらん。一度言ったら、聞き直されない限り、二度は言わんでいい。俺はそこまで耄碌してない。
一つ、遠地にいる以上、俺にできることは今のところ『準備』と『調整』以外に何もない。だから、そっちで「日程」について"決まった"・"わかった"・"変わった"ことがあったら、それだけ即連絡して。後は俺が調整する。もうそれ以外は期待せん。
今はコロナの影響もあって、遠地移動はしにくい。愛知からやと東京も経由するし…いやまぁ、飛行機って手もあるけど、仙台空港からじゃ病院にも実家にも行きにくい。それに、この先コロナ陽性ってことになったら、多くの人にも迷惑をかけることになってしまう。だから、まだ初診だけでハッキリとした結果が出ていない時点では、そうそう移動でけへんこと前提で考えんとならん。だからこそ…今後の目安や見通しが欲しいねんけど…。
まぁいいわ。最悪、そのへんは病院と俺が話をする。
一つ、当面は入院手続きと着替えや身の回りの世話だけしといて。状況がもう少しわかれば、俺も一度そっちに行くから。
それだけや。いいな?」
こんな感じのやり取りになってました…心底疲れる。
言いたいことを言いたいように言うだけの人って、まともに会話が成立しないという、いい例というか…身内の恥ですけど、参考にはなると思います。
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