「組織の力」を高めるということ
みなさんは、「会社」の存続意義って何かご存知ですか?
そう、「営利(利益)」を求めることです。
幸い会社とは「法人」とも言われますが、この表現が言い得て妙で、会社の営みを、人のそれと照らし合わせてみるとよくわかります。
まず、おさらいしましょう。
そもそも利益とは、どのようにして生まれるか?と言うと、
利益 = 収益 - 経費
となると思います。細かい話はちょーっと置いておいて、単純なP/L(損益計算書)を思い返してください。
これが、すべての基本にして原点です。この計算式を「何を当たり前な…」程度にしかわかっていない人は、おそらくきちんと理解できていません。この当たり前が基本にして究極なのです。
たとえば、この計算式を「人」に当てはめると
売上(収入) = 食事(栄養源)
経費(支出) = 生きる上での活動エネルギー
利益 = 成長要素
となります。会社に限った話ではなく、インプットとアウトプットが存在する環境下ではどこでも、なんでもこの考え方が成立するようになっています。
そして、企業が「利益」を求めるそもそもの目的は、その企業の成長経費に充てるためです。それが「人材育成」だったり、「設備投資」だったり、M&Aなどによる「企業買収」だったり、最終的には"経費"として計上されるために、
「どれだけ成長するために回せるか?」
と言う余剰金となります。もちろん、社員に対し、ボーナス等で還元して「従業員満足度向上」を図るもよし、です。とにかく利益がなければ、ただそこにあるだけ、ただ生きているだけです。
私たち人間の生活もそうですよね。得られる収入が「家賃」「光熱費」「食費」などの経費で全てを使いつくしてしまっていたら、どうでしょう?
嗜好品も買えず、貯蓄もできず、娯楽に回せる余裕もない…、もしも
収益 - 経費 = 0
となってしまっていたら、それは本当にただ死なないためだけでしかありません。おそらく、幸福とはかけ離れたものとなるでしょう。企業自身も同じで、利益がない経営・運営なんて幸福とは感じません。だから、どこの企業でも、生産部門に対しては、なによりも「利益」が重要視されているのです。
ただ、そう言う姿勢がごく「当然」である、と言い続けてきた人がいたんでしょうね。
「利益を最大限、重要視する」
という、誤解を生みだしかねない言葉によって、その意味を履き違えている人も非常に多くなりました。
「利益を最大限、重要視する」=「利益以外は度外視でかまわない」
と思い込む人が出てきたのです。
今一度、立ち返ってみましょう。
そもそも利益とは、どのようにして生まれるか?と言うと、
利益 = 収益 - 経費
となると思います。細かい話はちょーっと置いておいて、単純なP/L(損益計算書)を思い返してください。これが、すべての基本にして原点です。この計算式を「何を当たり前な…」程度にしかわかっていない人は、おそらくきちんと理解できていません。
と先ほど言いましたが、つまりこう言うことなわけです。
利益は確かに大事です。
最優先となるのもわかります。
利益を無視した運営や経営は企業の存続を終了させることにつながります。だから、かならず重要な要素の1つに数えられるのは間違いありません。
ですが、一方で
「利益さえ出してれば、それ以外はどうでもいいのか?」
と言えば答えは断然「No」です。これを「Yes」と言ってしまったら、利益を生み出す仕組みそのものが成立しなくなる企業が大半を占めるからです。
もし、「それでいいんだ」と言うなら、ただふんぞり返って座っているだけで1円の利益にも貢献していない経営者も、1円の利益にも直接寄与していない間接部署も、リモートワークが成立している企業の社屋も、すべて必要ないことになります。
ただの計算式でしか利益を見られない人は、ここで躓きます。
そもそも
「利益」が計算式の外側で"どのようにして"生まれるのか?
を理解し、その数字が最大値化する取り組みを行っている人は、世の中にいったい何人いるのでしょう?利益が売上から経費を引いた額だとは言いましたが、じゃあ、売上を上げるのは誰でしょう?
今、まさに生産部署で従事している方々ですよね。では、そういう部署で働いていらっしゃるみなさんは、自らの持つポテンシャルを最大限引き出せていますか?
「もっとこうしてくれれば、効率的に仕事できるのに」
「こういう所、先に教えてくれていれば、無駄なことしなくて済むのに」
「いまさらそんなこと言われても」
「もっと…」「もっと…」
そんな不満を1度も考えたことはありませんか?
私たちがお客さまに接する時もそうですが、私たちIT企業に仕事の依頼が来るのは、仕事を依頼してくれる人の現状に対する「不満」を解決できるからです。「不満」とは、現状に対する「よりよくする(改善)」ための大事なきっかけです。
お客さまの中に不満があるから、私たちは仕事にありつけますし、私たちの中に不満があるから、もっと良くするための「改善の余地」が残っていると言えます。私たち…主に生産部門において「売上」に直接的に貢献している人たちの不満や不安、障害を解消すると、当然ですが、今以上のパフォーマンスにつながります。
もし、あるお客さまの仕事をしていて、月あたりの単価が1名あたり70万/経費60万/利益10万だったと仮定しましょう。このとき、何かしらの手を加えて、
「スピードがあがった」
「品質が良くなった」
「コミュニケーションがスムーズにとれるようになった」
と言った改善がみられると、
・単価70万据え置きだけど、経費が50万程度で完遂できるようになった
→ 利益10万up
・経費は60万で変わらずだけど、単価交渉の末80万に引き上げてもらえた
→ 利益10万up
となることもあるわけです。そういった、「従業員が最もパフォーマンスを出せる環境を用意する」ことこそが、経営者、管理職、そして間接部門の仕事です。
あくまで、「売上」に直結した業務をこなしている従業員こそが最優先で、その人たちが「利益」を向上できるように、支援してあげなければいけません。
「稼いで来い」
「なんでこんな数字なんだ」
と偉そうに叱責するのは、管理職や経営層の仕事ではありません。そういう文句を言わなくても、社員が稼いでこれるようにお膳立てをしてあげるのが仕事のはずです。
ただはっぱをかけて文句を言うだけと言うのは、自らの役割を放棄し、他人に対して偉そうにしているだけの人がすることです。そう、無責任ゆえにできることです。
もし、そうした「収益」や「利益」に直接関わっていない人たちが、直接収益に貢献している人たちにとって、色々な側面から支援し、もっとも働きやすく、もっとも楽に(効率的に)、もっともパフォーマンスが出せるようにすれば、
いったい、稼いでこれる潜在的な売上の最大値っていくらなんでしょうね?
そして、現状稼いでこれている「収益」は、その理想に対して何%くらい達成しているんでしょうか。
この乖離分が、当社の潜在的な成長余地(ポテンシャル)であり、その余地を限りなくゼロにすることを目的とすることが、「利益」分を成長戦略にあわせて投資する先であるとも言えます。
たとえ労働集約型のビジネスモデルであっても、ただ人を増やせば、数字があがると言うわけではありません。そんな小学算数で事が成るなら、誰も苦労しません。新人や中途採用者が、そのポテンシャルを最大限活かせるようになるためには
「どんな教育をほどこせばいいか」
「どんな仕事を割当ててあげるといいか」
「どんな環境であれば、より効率的になるのか」
「どんなコミュニケーションにすれば、齟齬が起きないのか」
「どんな応対をすれば、モチベーションが高い状態で維持できるのか」
考えられる余地は多種多様に存在します。通常の業務において「お客さま目線」ができる人なら、こうした従業員に対する目線も簡単にできるはずです。「客観視する」という、ただそれだけのことで、こうしたビジョンを通した戦略が立てられます。
ビジネスの多くは、常に「お客さま目線」で応対するべき
…というのは、どの業界においてもフロントサイドに立ってお客さまのニーズを受け、仕様を詰めるような立場の人には必須とされています。そういう相手目線に立つ視点を、お客さまに対してだけでなく、従業員に対して向ける、それだけのことです。
なぜそうする必要があるのか。
それは、従業員も会社から一歩離れれば、一般消費者に早変わりするからです。従業員を大切に扱えない人間が、お客さまを大切に扱えるわけがありません。
こうすることによって、もっとも数字を出す人たちのパフォーマンスが向上しますし、その人たちを支える人たちの貢献も最大値化しますし、企業としてのさらなる目標や期待にも応えやすくなりますし、それによって、今まで以上にお客さまも満足する機会、満足させる機会が増えます。
組織全体の成果を底上げするのは、常に
「社員一人ひとりのポテンシャルが
最大化させられるだけの環境を用意できているか?」
で決まるのだということを知っておきましょう。
計画を立てるのも、手順を明確化するのも、標準や基準を作るのも、設備を整えるのも、優れた上司を置いて部下のエンゲージメントを高めるのも、すべてはそうした手助けになることを目的としています。
「守・破・離」の「守」をまず提供しているわけです。
既に「守」の領域を卒業した人はその殻を「破」り、そして最後には、自らの責任において、自らが正しいと思う方法を模索するために、「離」れるようになります。つまり、既存のビジネスモデルだけにこだわらず、新しい価値の創出が可能になるというわけです。
利益をただの数字としてしか見ずに、何も改善しようとせず、ただ「アレやれ」「コレやれ」と命令だけしているだけに従事すると、こうした足元を見失います。
お客さまが、現状の企業運用に不満を示して、他の企業に解決を依頼し、それを請けた側は、最も得意とする方法で不満解消を実現する…。
それによって、お客さまが何を得るか?と言うと、業務や事業の効率化や最適化が図られ、さらなる「収益」「利益」です。B2Bのビジネスによってお客さまに与えているものとは、そういうものです。
では、同じことを、社内のメンバーに対してもしていますか?
業務や事業の効率化や最適化が図られなければ、その彼らがもたらす「収益」「利益」が上がるわけがありませんよね。
従業員一人ひとりを「顧客」として見た時に、彼らには何一つ不満がない状態になっていますか?
もしも、ほんの些細なことであっても現状に対する不満があったとしたら、
それは、ひょっとすると、そのせいで
会社の利益を損ねている可能性が高い
ということになります。もっと出せるはずの数字を、不満を抱えさせている人間がキャップさせている、ということです。
その対策法として、社員を「説得」しようとするのは止めましょう。
「そう言うものだから」
「そう言うプレイだと思って」
「言っても無理だから」
「お前だけわがまま言うな」
言い方は人それぞれですが、一方的に説得しようとする行為とは、不満を持つ人に対して
「自分たちは何一つ改善しないけど、
お前は今後も不満を持ち続けていろ。
そのうえで今以上の成果を出せ。反論は認めん」
と言っているのと同義です。「説得」とは、言い換えれば
相手の要求に対する「拒絶」と一方的な「要求」
です。言葉を武器にして、相手を抑圧しようと、あるいは従属させようとしているのと変わりません。それで本当に、納得を得られるでしょうか。
みなさんは、お客さまが現状の不満解決のために引き合いをくださったとき、同じことをお客さまに言いますか?お客さまは何一つ解決されてない現状に対して、それで納得すると思いますか?
「納得」を引き出せない時点で、説得は失敗ですし、それを無理強いすれば、より信頼関係を崩すだけです。そもそも「不満」があるのに、その不満の源泉を解決しないで、一方的に納得させようだなんてこと自体が、非常に難易度の高い行為です。当然、十中八九失敗します。
「わかりました…」
という言質を引き出したところで、納得はしていないでしょうし、不満が残っている状態は変わりません。遅かれ早かれ、より悪化して問題が顕在化するだけです。
そもそも、
一人では解決困難な課題や問題を、複数人で一緒に解決しよう!
と言った目的に沿って人と人が集まったのが「組織」であり、そうして集まった組織の活動効率を最大限高めることが「組織力向上」です。この「組織力向上」に目を向けず、ただ人を増やせば収益があがる…などと思っていると、いずれ組織は必要なパーツがところどころ抜け落ちた無理のある体制となり、いずれ崩壊することでしょう。
組織を正常化させ、組織を構築した一人ひとりに最適な役割が与えられ、それらが有機的に連携されていて、全員が持つポテンシャルを最大値化する。
これを行わない人、行えない人は、どんな小さなチームであっても、組織運営をする資格はありません。
「組み立て体操」は土台となる下から崩せば全体も一緒になって崩れてしまうし、しかもそうすることは非常に簡単なのだ、と言うことを忘れないようにしましょう。