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求められるのは自己組織化

セルフマネジメントとは、直訳すれば「自己管理」、或いは「自律」といいます。体調管理や作業の進行などを進めるために、自分自身を適切に抑制・管理することを指します。中でも社会人においてはこの

 自分自身を適切に抑制・管理すること

と言うのが非常に重要視されています。

難しいことを言っているような気もしますが、実現の難易度はともかくとして、理屈自体はとても簡単です。

 自分の行動を自分で計画し、
 自分の決定には自分で責任を持ち、
 自分の計画は確実に行動する

ということを感情や欲求に振り回されることなく(抑制)、またその状態を常に把握し、決定や計画とズレた場合は即座に是正する(管理)ことが維持できるようになることを指します。

つまり、「自分の面倒は自分で見る」と言う至極明快なことを実現しようということです。自分の肉体の各器官を一つひとつの機能を持った部品だと考えれば、身体全体はさながら1つの組織体のように捉えることも可能です。

実はこれは実際に実現してみるとなると、言葉で言うほど簡単なことではありません。

特に「自分自身を"適切に"」管理するということは、自分自身の能力を最大限活かし、無駄を削いで、活用するということが必要になります。ただ自分でなんとなくスケジューリングして、その通りに行動するだけ良いというわけではないのです。

昨今では特に、どんな内容であれ"責任"を個人で持ちたくない...と言う弱い意識が根強く存在します。

自信の無さの表れと言ってもいいでしょう。

本来であれば自分の行動には自分で責任を取るものですが、学生の頃がそうであったように、個人の行動を親であったり、学校であったり、自治体であったり、社会が責任を肩代わりしてあげるこの過保護な現状を無意識のうちに社会人になっても当たり前と感じるようになってしまっているため、

 「責任の取り方が判らない」
 「今までの行動や決断に自信がない」

という若者が増えてきているのです。いえ、若者だけでは無いかも知れません。多くの大人が責任を持たない立ち位置にいることを望んでいるのです。

これには仕方の無い側面もあります。

バブル崩壊期以降、年齢構成に歪みが大きく出てしまったことや、採用抑制期(学生側から見た「就職氷河期」)と呼ばれる時期が長くなって(失われた20年)しまったため、人員不足による教育費削減などもあって、

 正しく指導されたことの無い上司、先輩

と言う層が確実に溝としてできているために、若手を指導・教育できる人材が不足しているという背景があります。

また、ダイバーシティ(多様性)の進行に伴って主に価値観の多様化が進んだために、一昔あるいは二昔前の教育手法だけでは追いつかず、教育そのものにも多様なニーズが増大していることが1つの要因となっています。

そうした背景から、新入社員はともかく入社3~5年目にあたる『若手』と呼ばれる人たちまでもが自分自身の面倒すらまともに見れていない...と言う異常な社会事情が蔓延することとなりました。

15年ほど前は

 3年で中堅、5年で一人前

と言われていた時代がありました。実際、これはきちんと意識的に仕事に取り組むことが出来れば、仕事の難度や負荷の高低に関わらず、実現可能な数字と言われています。5年で一人前になるからこそ、そこで自己を確立してしまう為に、状況変化の速いITサービス産業では35歳定年説まで生まれることになりました。しかし、最近では30歳でもまだ若手であると思い込んでいる自称若手社員は多いのではないでしょうか。

ですが、社会人となった私たちに対して、「わからないから」「自信が無いから」と言う理由で代わりに責任を取ってくれる人が、企業が、社会があると思いますでしょうか。答えは「No」です。最初から判っていたことです。

セルフマネジメントの根幹となるものは「心」です。

心が成熟していれば、自分自身をある程度イメージ通りにコントロールすることは容易です。実際にマネジメントを行う上での記述的なノウハウは、一般的なマネジメント手法と何ら変わりはありません。通常の業務で行うマネジメントを最小規模である『自分』個人に対して行うだけなのです。

それでも最も困難とされるのは、心を制御する術が明確に存在しないことに起因します。

たとえば

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といったケースはどうでしょう。

計画的に予定を開けていたのであればともかく、急に誘われて仕事よりもプライべートを優先したケースと考えてください。この場合、期日に対する業務達成度...と言う意味では100%達成していると言えますが、自分で引いた計画からはずれてしまっています。

これは、自分自身の欲求を制御していると言えますでしょうか?

無論、「飲みニケーション」が悪いというわけではありません。中には上司や取引先に誘われて断れない(やむを得ない)ケースもあるでしょう。

しかし、これが"大学時代の友人からの誘いであった場合"はどうでしょう?
別に飲み会でなくても構いません。ライブに行く予定が入った、ゲームを買いに行きたくなった、デートの予定が入った等、自分にとって「より行きたい方」の予定が仕事とブッキングし、しかも仕事の方は期日まで間に合う算段ができる場合、

 あなたは計画を優先しますか?
 それとも自分の欲求を優先しますか?

実際にはこの依頼以外にも仕事を抱えているかもしれませんし、ひょっとしたらこの後大きな問題が起きて、大幅に計画がずれ込む可能性もあるかもしれません。それでも自分の欲求を優先して大丈夫な算段はできていますか?

セルフマネジメントは計画実現性を第一としているわけではないので、この場合、どちらが正しいとは言えません。しかし、こうした決断、行動に伴う責任の所在や、責任の取り方などについても、自分自身できちんと判断する覚悟を以って仕事に取り組むこと、それがセルフマネジメントとなります。

一昔前、高度成長期時代と呼ばれる頃はマネジメントそのものが体系立てられていなかったため、日々の仕事をがむしゃらにこなすだけで、不足分は人情や根性でなんとかなっていました。そうした文化が根付いて、今でも一部の業界ではそうしたバックボーンを持っている部分も決して無くはありません。

しかし、仕事の仕方そのものが洗練されてきて、さらに欧米風のシステム(仕組)も多く導入されるようになった昨今、トップダウンマネジメントに身を委ねて、不足分をただただ人情や根性でどうこうすると言う仕事の仕方は推奨されていないどころか、最悪の場合、企業を破綻させてしまうことにも繋がりかねません。

特に私たちの属する「ITサービス産業」におけるシステム開発は、仕事の単位を『プロジェクト』で分割し、管理する手法が基本となっていますが、これもまた、ITと言うものがそうであるように、あるいはプロジェクトと言うものがそうであるように、本来は外資系企業や欧米企業の手法を取り入れたものです。

つまり、私たちに求められるセルフマネジメントとは、

 プロジェクトに対するセルフマネジメント

を求められているのだと解釈してください。

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Takashi Suda / かんた
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