お客様が自然と集まる業態をつくる方法
宇宙一外食産業が好きな須田です。
今日は具体的な業態開発の手法をお伝えします。
その前に、業種と業態の違いをご存知でしょうか。
以外とご理解頂いていない方がいらっしゃって、先日もクライアントと打ち合わせをしている際に、議論がどうしても噛みあわないなぁと感じていた時に、失礼を承知で、業種と業態の違いをご存知か社長に伺ったところ、ご理解いただけていないことが判明し、業種と業態の違いをご説明させていただき、やっと話が噛みあったことがありました。
そもそも業態を大まかに捉えてしまう原因が、この業種と業態の違いをご理解いただいていないからかもしれないと、その時気付きを得られました。
業種とは、一般的に何屋さんかということ。
業態とは、どのような何屋さんかということ。
例えば、業種はお寿司屋さん、業態は回転寿司。
例えば、業種は中華屋さん、業態は麺飯専門店。
例えば、業種は焼鳥屋さん、業態は串焼き専門店。
この違いをご理解頂いていないと、業態開発を行う際に業種の開発をしてしまうことになり、具体的な業態にまでたどり着かないでオープンを迎えることになってしまいます。
さて、業種と業態の違いをご理解いただいたところで、
具体的な業態開発の手法の件ですが、鉄則があります。
それは大きな視点から初めて小さな視点へとストーリーを展開していくということです。
大きな視点とは、現在の日本経済はこういった流れになっている、日本を取り巻く世界の経済状況はこういった傾向になりつつある、その結果、今後日本経済はこのような影響を受けるであろう、すると、消費者の心理はこのようなことを感じるであろう、その感情が元でこういった消費行動をとるであろう。
そこにはこのような潜在的な不満があり、このような問題点があり、そこをどのように解決すると消費者の指示を受けやすいはずである。
それらを仮説検証した結果、実際にこのような動向が確認できた。
検証の結果、消費者からはこのような反応と意見を獲得できた。
この傾向は、今後5年程度は継続する可能性が強く、消費行動もそれに伴っていくであろう、ということを仮設検証していくことを大きな視点から小さな視点へのストーリーを描くと言います。
外的要素から内的要素へ以降していきます。
慣れてくるとこれらは、一つの流れとして感じることが出来、ストーリーとして語ることが出来ると思いますが、勿論初めから出来る人はほぼ皆無だと思います。
実際に会社内で業態開発をするときは、私は以下の提案をしております。
先ず、ホワイトボードを用意して頂きます。
サイズは出来るだけ大きいものを用意していだけるとよろしいですが、スペースの問題もあるので可能な限りでよろしいです。
次に何色かのマーカーもご用意していただきます。
色を変化させることによって思考も意識も変化させやすいからです。
スマフォは勿論です、ホワイトボードに書いたものをその都度撮影して頂きます。
最近では、ホワイトボードに書いたことをそのままプリントアウトできる機種もありますが、撮影は必ず実行して頂きます。
出来れば録音もお願いすることもあります。
ほんの小さな一言から大きな気付きを得られることもあるので、録音は重要です。
次に、既存店のデータをご用意していただきます。
既存店のデータを分析するとある一定の流れがわかります。
季節係数も、全体的な客数の推移と売上の推移、近隣に競合が出来た際の客数の減る期間と戻る期間など、ある程度の傾向が理解出来ます。
それらを踏まえて、新たな業態を開発していきます。
出店する地域の外的要素から分析していってもらいます。
人口の推移、地域の世帯収入の推移、年齢分布など市のホームページや行政機関などから得られる情報を列強していただき、なんとなくのイメージではなく数値で理解認識して頂きます。
経営は数値と理論ですから、この部分は非常に重要になってきます。
次に内的要素を踏まえて頂きます。
現在の月商と年商、ここ数年の推移、利益率と利益額、人件費動向、スタッフの平均年齢とスキル、リクルートの状況など店舗運営の現状を数値で把握してもらいます。
それらを踏まえて最初に行うことは、
お客様の潜在的な不満や問題点を抽出することから行います。
不満と問題点を明確にする理由はと言いますと、不満解消と問題解決は最も集客に結びつく事案だからです。
不満が無く問題点を感じないお店があるならば、お客様は自然と集まって来ることになります。
逆に言えば、何故お客様が集まらないのかというと、そこには不満が蔓延している状態であり、問題点がそのまま放置されているからです。
お店を運営している方々は、毎日の日常の景色になってしまっていて気付かないから、お客様が集まらない、お客様に敬遠されるお店になってしまっています。
これを見事に解決して、超繁盛店になったラーメン屋さんがあります。
一風堂さんです。
創業者である河原社長は、「怖い・臭い・汚い」と言われていた1980年代の博多ラーメンのイメージを覆し、女性が単独でも入りやすいスタイリッシュで清潔な店舗と、豚骨特有の臭みを消した濃厚な深みのあるスープと自家製麺を開発して大繁盛店となりました。
当時河原氏は、何故女性がラーメン屋に来ないかを沢山の女性にインタビューをしたそうです。
そこで共通した不満と問題点が「怖い・臭い・汚い」だと気付き、「サービスが良くて、臭くなく、綺麗なお店を作ればお客様は来る」と、確信したそうです。
その結果はご存知の通り、力の源カンパニーは上場も果たしました。
では、具体的な事例をとんかつ屋さんを例にしてお伝えします。
最初に、今のウチのとんかつ業態にどのような不満や問題点があるかをラインナップしていきます。
ホワイトボードに不満の欄と問題点の欄を作ります。
不満として上げられたのは、出てくるのに時間がかかる。味のばらつきがある。たまに肉が固い時がある。ご飯がもっと美味しいと良い。キャベツの盛りが少ないと言われたなどとします。
問題点として出てきたこととは、豚肉の安定供給に不安がある。仕入れ値が高騰してきて今の売価では利益確保が難しい。人件費の高騰が問題である。人数も集まらない。
客数が数年前を基準にすると数%下がっている。客単価は伸び悩んでいる。顧客の年齢層が上がって来ていて若い新たな客層が獲得できていない。お店の老朽化も目立ってきている。
料理長の高齢化も心配だ。など複数の問題点が見えて来ます。
これらを大きく分類すると、お客様が潜在的に不満に感じていることと、店舗側の問題点が浮き彫りになってきます。
不満と問題点が外的要素と内的要素に分類されます。
次に仮説を行います。
不満が解消されたならばお客様などのようなことを感じるか、不満の解消はお客様にとって大きな価値となるか、それらを実現するためにはどのような手段があるのかを仮説検証していきます。
不満の欄の“出てくるのに時間がかかる”という点を例にするならば、解消後にお客様はどのような感想をいだくか、どのようなメリットがあるかを列挙していきます。
提供時間が早いとお客者は嬉しいと感じる、すぐに商品が出るのでいらつかない、時間の無いランチでも安心して来店できる、出るのが早いという良い評判が立つ、お待ちいただいてもすぐに席にお通しできる、回転率が上がり客数を稼げるなどが出て来ます。
不満点解消のための具体的な可能性は、スピード提供のためには肉の厚みを薄くして大きく見せてみる、繊維を叩いて細胞を壊してみる、ジャカードを入れてみる、コンベアフライヤーを導入する、グラム数を変えてみる、下揚げしておくなど複数の回答が出てきます。
問題点の欄では、“豚肉の安定供給に不安がある”を例にしてみると、農家と提携して飼育頭数を増やしてもらう、新たに提携農家と契約をして頭数を確保する、新たな取引先を開拓する、新たな豚種も試してみる、県外からも取引を行ってみるなど、固定概念にとらわれずに新たな視点を持つことで飼育や提携や新しい品種、県外取引などいくつもの問題解決案が出て来ます。
こうやって一つ一つ不満を解消する方法と問題点を解決する方法を見つけていくと、自然とお客様が潜在的に喜ぶ業態が見えて来ます。
お客様が喜ぶ業態とは、お客様が自然と集まって来る業態となります。
実はこれ、実際に大分県の老舗のとんかつ屋さんで行った事例です。
こうやって一つ一つ、お客様が感じている不満を解消するアイデアを見つけて、現在抱えている問題点の解決策を導き出し、九州地方の経済圏の流れと地元の経済圏の流れを鑑みた結果、このお店は少し離れた市に2店舗目を出店することになり、3か月かけてマーケティングを行い、その後物件を取得して新たな店舗を新築開業させました。
この時の業態開発で得た経験とアイデアで既存店も同時に業態改善を行い、業績は2.6倍になりました。
今まで、なんとなくお客様から不満を聞いてはいたけれど打つ手もなく、問題点も分かってはいるけれど具体的な対応をすることもなく、じり貧状態が数年経過しており事業継承した若い経営者夫婦は不安にさいなまれていた状態でした。
実は、この若い経営者に私が最初にお伝えてしたことは、
お米のとぎ方と炊き方でした。
こんな小さなことから大改革が始まっていきました。
お米は、提携農家さんから玄米を仕入れて毎日精米し立てのご飯を提供しているにもかかわらず、お客様からはご飯が美味しくないとの声を頂戴しており、悩んでいるということでした。
確かに、炊きあがったご飯を食べると物足りない感じでした。
原因と解決先はすぐに予想出来たので、その日のランチから新しい方法で炊いたご飯を提供したところ、
「お米変えた? 美味しくなったね!」
と、嬉しいお言葉を頂戴したそうです。
ここにもお客様の潜在的な不満と内的要素としての問題点がありました。
お客様の不満はもっと美味しいご飯が食べたい、とんかつは美味しいのにご飯が美味しくないということでしたし、内的要素の問題点はズバリ、美味しいご飯を提供出来ないということでした。
解決策は美味しいご飯を提供することですが、方法を知らないばかりにず~っと悩んでいる状態でした。
解決策は至極簡単で、まず精米機を調べました。
精米時の設定とお米がどの程度熱くなるかを調べましたが、この段階では全く問題は有りませんでしたので、次にお米のとぎ方を調査した時に、予想通り問題点の原因がすぐにわかりました。
正しいとぎ方を知らなかったので、
折角の美味しいお米を、美味しくないご飯にしていました。
先ずお米をとぐ際にプラスチックのザルを使って、そのザルの中でお米をといでいました。
絶対にやってはいけないことをやっておりました。
またとぎ方も強く力を入れて何度もすすぎを繰り返しておりました。
その結果、お米は割れてしまい、すすぎ過ぎの結果旨味成分が流れ出したご飯になってしまいました。
正しいお米のとぎ方を指導して、浸水時間と水分量の定義をお伝えしたところ、美味しいご飯を提供することが出来ました。
その結果、お客様からは「お米変えた? 美味しくなったね!」というお言葉を頂く結果となりました。
業態開発をする際に、外的要素から初めて内的要素へ移行することは、こんなささやかなお米のとぎ方から不満と問題点を解消するようなことから始めていきますが、これが大きな結果に結びつけることとなります。
ご自分の業種を理解して、業態を開発する際には、大きな視点からの外的要素と小さな視点の内的要素へとストーリーを以降していき、潜在的なお客様の不満を解消して、不満をもたらしている内部に隠れている問題点を一つ一つ解消していってください。
そうすると、お客様が自然と集まるお店へと変貌していきます。
明日は業態開発繋がりで、ベンチマークする際に陥りがちな他店舗を調査する際の間違ったやり方をご紹介します。
きっと、同じ経験をなさっていることと思います