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釣りがしたくなる / 「リバー・ランズ・スルー・イット」

Eventually, all things merge into one, and a river runs through it.
(いずれ、全ては一つにまとまって、そこに川が流れているのさ)

Norman Maclean

まだ無名の売れない俳優だったロバート・レッドフォードは、1969年の映画「明日に向って撃て!」でのザ・サンダンス・キッドの役によってイケメン俳優としての地位を確立し、それから数多くの映画に出演してきた。監督や製作者としても成功したレッドフォードが1992年に発表した「リバー・ランズ・スルー・イット」は、ハリウッドらしくない静かな家族のストーリーであり、モンタナ州の美しい自然の撮影が目を引く作品だ。
この物語は"ほとんど実話"である。シカゴ大学で教授を務めていたノーマン・マクリーンによる家族の思い出を記した"小説"が原作だ。スコットランドからの移民である父親は長老派の牧師であり、兄ノーマン(クレイグ・シェイファー)と弟ポール(ブラッド・ピット)がモンタナ州ミズーラで育っていく様子をじっと見つめている。
こうした話は当たり前だが"眠い"作品であり、本作もまた途中で何度も寝そうになるものの、良いストーリーであることは確かだ。ここには白人が好む"運命"への眼差しがある。芸術家のように生き、フライフィッシングの天才とも言えるポールが、ギャンブルによって結局身を持ち崩してしまう様は、まるで逃れられない糸を本人が手繰り寄せているように感じられる。
ブラッド・ピットは本作の前年に「テルマ&ルイーズ」でのJ.D.役で脚光を浴びたばかりであり、ポールの役によってイケメン俳優として認知された。監督を務めたレッドフォードが「明日に向って撃て!」で飛躍したように、「リバー・ランズ・スルー・イット」がブラッド・ピットというイケメン俳優を確立したと言える。
124分は少し長すぎるように感じられるものの、ロバート・レッドフォードはこうした家族の物語を監督することが好きらしい。本人はサスペンスや犯罪ものの映画に出演することが多いので、その反動かもしれない。ドッカーンもカーチェイスもない静かな自然の中のストーリーが珍しく見えるほど、近頃の映画が派手になりすぎているとも言える。そういう意味でも、本作は人に薦めることのできる一作だ。

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