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フランスは捜査もオシャレ / 「クリムゾン・リバー」

フランスを代表する2人の俳優、ジャン・レノとヴァンサン・カッセルを同時に見たい方には2000年の映画「クリムゾン・リバー」(原題は Les Rivières pourpres)がオススメである。サイコ系のスリラーなので、嫌いな人はほとんどいないだろう。フランスでベストセラーとなった小説が原作であり、続篇もドラマも制作されるほどヒットした。
フランスのアルプスの麓にあるゲルノンという架空の街を舞台にして、猟奇殺人の謎を追うという典型的な刑事モノである。パリ市警から派遣されてきたニーマンス(ジャン・レノ)は奇妙な死体の謎を解くために、ゲルノンのおかしな風習について調べていく。いっぽう、近くのサルザックという町でとある少女の墓が荒らされ、小学校への不法侵入事件も発生する。これを担当するのがマックス(ヴァンサン・カッセル)だ。やがてこの2つの事件はつながっているかのように、ニーマンスとマックスは出会うことになるーー。
本作は優生学がテーマになっていて、1997年の映画「ガタカ」に通じるものがある。あちらはSFとして優生学が適用されている社会を描いていたが、本作はあくまでも優生学に対して反対する立場から物語が進んでいく。

ところが、優生学なんてナチスみたいだからダメだと脊髄反射する方も、出生前診断をするだろう。出生前診断は優生学の一種である。受精卵を調べることは優生学に当たらず、精子を選ぶことが優生学だなんて詭弁である。僕はある程度までの優生学は支持する立場なので、もちろん出生前診断はなされるべきだと思う。
たとえば、日本列島でそれなりの期間を生きてきた人なら、血が濃くなると子に良くない、という話は聞いたことがあるはずだ。これは科学の事実であり、古からの人間の知恵である。遺伝による疾患が多いことは医学の進歩によって証明されている。つまり、誰を伴侶にしても個人の自由ではあるものの、法律で禁じられていない親等だからといって結婚した場合、子に遺伝による疾患が現れる確率がはねあがるという"事実"を教えておくべきだ。これは優生学ではなく、転ばぬ先の杖である。僕の家では先祖代々、同じ村内から嫁をとらない、という決まり事があった。理由は一つ、アホができるから、である。我が家は自主的に優生学をしていたわけだ。
また、人間の身体で最も複雑な部分は脳であり、この欠陥もかなり高い確率で遺伝していると認識した方が、世の中の実情に即している。ナチスは青い眼やブロンドが"優れている"と言ったから話がおかしくなったわけで、特定の疾患は遺伝するものだという事実はナチスの敗北によって否定されるものではない。優生学とは、それによって個人の自由が侵害される時に問題にすべきものだ。妊娠することを強制的に禁じること、あるいは映画「クリムゾン・リバー」で描かれたようなことが優生学である。出来の良い人ほど伴侶を選ぶときに時間をかけているのは、こんな異性はいらない、という優生学をやっているからとも言えるのだ。
これは科学と倫理の対立である。子が病気を抱えて生まれて嬉しい親はいないだろう。だからこそ、血を濃くするな、お前の疾患は遺伝しやすいぞ、なるべく遠くの人と結婚しろよ、ということを世の中が強調しても、そんなに悪いことだと僕は思わない。こういうことは特に田舎でテレビCMすべきだろう。

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