ホラーじゃないだろう / 「キャリー」
前回の記事「第七の封印」では信仰がテーマになっていたが、宗教の副作用を扱った映画といえば1976年の「キャリー」だろう。ブライアン・デ・パルマ監督の出世作であり、原作者のスティーヴン・キングにとっても初めての映画化だった。
この映画は、16歳のキャリー・ホワイトのテレキネシスが注目されやすいものの、母親のマーガレットがキリスト教を盲信し、娘の教育に悪影響を及ぼしている様が描かれている。
キャリーが学校でいじめられるような性格になってしまった要因が母親にあるという視点はとても重要だ。娘が何かをすると悪魔のせいだと罵る教育をしていれば、キャリーは現実の世界を楽しむことができなくなってしまう。いじめに加担した生徒たちがテレキネシスによって罰せられるシーンは、信賞必罰というメッセージを観客に伝えているが、本作の主旨がキャリーによる"母殺し"にあることは明らかだろう。
それが宗教であれ似非科学であれ、頭の悪い者は適切に扱うことができず、他人や我が子に迷惑をかけてしまう。コロナごときの流行病で大騒ぎした日本の大人たちは、キャリーの母親と何も変わらない。なぜなら、自分の行いが"正しい"と信じて、他人に迷惑をかけているという意識など微塵もないからだ。
「キャリー」はホラー映画として分類されているようだが、僕にとって本作はこうした教育の問題を扱っているヒューマンドラマである。テンポよく物語は進み、98分があっという間だ。ポップコーン映画として気軽に推薦できる佳作である。
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