誰が勝手にそんなことを決めたのか / 「サイダーハウス・ルール」
ヒューマンドラマの名作といえば「ショーシャンクの空に」を挙げる人が多いが、1999年の映画「サイダーハウス・ルール」も推薦したい。本作は1985年に出版されたジョン・アーヴィングの小説が原作だ。現代の作家であるジョン・アーヴィングは"19世紀らしい物語"を好む作家で、劇中でもチャールズ・ディケンズの「大いなる遺産」に言及していたように、この「サイダーハウス・ルール」という映画そのものもディケンズの「オリバー・ツイスト」の変奏曲である。
主人公ホーマーを演じたトビー・マグワイアや、本作でアカデミー助演男優賞を受賞したマイケル・ケインの演技もさることながら、やはり当時24歳のシャーリーズ・セロンが美しいということを言いたいだけである。
こうしたストーリー重視の文学は最近珍しくなった。
しかし、この映画は中絶という重いテーマを扱っている。キリスト教で今日まで続く議論だ。リンゴ農園の農夫たちが住むサイダーハウスのルールを白人が勝手に決めているように、女が子を産むか中絶するかという重大な事柄について、誰が法律を制定しているのかという問題提起である。
これはなかなかの佳作であり、過小評価されているものの多くの人に推薦したいので、これ以上ネタバレにならぬよう今回はこれにて。