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ダイアン・キートンが素晴らしい / 「アニー・ホール」

I would never want to belong to any club that would have someone like me for a member.
(僕のような奴を入会させるようなクラブには絶対に所属したくないね)

Alvy Singer

#MeToo運動の時に袋叩きにされたウディ・アレンは、養女への性暴行などペドフィリア体質であることがもともと知られていたのだが、このムーヴメントによって息子のローナン・ファローからも糾弾され、アメリカで映画を撮ることが事実上不可能になってしまった。
そんな変態ウディの才能を世に知らしめた映画が1977年の「アニー・ホール」だ。アルヴィ(ウディ・アレン)とアニー(ダイアン・キートン)の恋愛模様を撮ったコメディでありつつ、神経症のようにブツブツと早口で語る様や、ユダヤ人であること、ニューヨークという街と西海岸との違い、そして第四の壁(fourth wall)を何度もあっさりと破る手口など、いろんな要素を詰め込んだウディの福袋のような作品だ。
劇中でも何度かフェデリコ・フェリーニ監督について言及されていたように、この映画は要するにウディ・アレンの撮った「8 1/2」である。自伝のようでありながら、その内容を皮肉るような視点から描いたファンタジーだ。マクルーハンやカポーティが本人として出演したり、アニメの白雪姫の魔女を登場させたり、現実と空想の境をわざと曖昧にしている。そもそもアルヴィという人物がウディ本人に思えてくるし、タイトルのアニー・ホールとはダイアン・キートンのことである。アニーはダイアンのニックネームで、ホールとは本当のファミリーネームだ。つまり役者たちが"本人"を演じているように撮りながら、観客に向かってアルヴィが語りかけることで、現実の世界と映画の境界が分からなくなっていく効果がある。こうした表現は才能のある者だけが成功させる難しいテーマであり、黒澤明は本作を好きな映画として挙げている。後に黒澤は「夢」を撮った。
また、フロイトの思想への言及やユダヤ人であることなど、精神の側面からアルヴィを描くことにも力を入れていた。どんな行動をしたのかということより、その行動の動機や、相手の発言への感想など、普段は描かれることのない部分をアルヴィにとにかく"語らせる"という手法が成功している。冒頭の写真のシーンでは、アニーとアルヴィがセリフを語りながら、しかし全く異なる心の声を字幕で表示するという冗談もやってのけた。
アニーの独特の服装も大変高い評価を受け、多くの女が真似したという。この格好はダイアンが自分で選んだものであり、ウディは服装についてダイアンの好きなようにさせていたそうだ。
ニューヨークを愛するウディは西海岸とハリウッドを嫌っており、本作がアカデミー賞の作品賞を受賞しても、授賞式に出席しなかった。劇中でも「あいつらは賞をばらまいてばかりだ」と悪態をついていた。
毎年のように映画を発表し続けていたウディは、スペインやフランスで映画を制作している。才能に恵まれていて、なおかつどうしようもないクズである。

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