2時間を超えたらあかん / 「ドクター・スリープ」
続篇はつまらない、という定説はほぼ間違いない。こう言うと「ゴッドファーザー PART Ⅱ」はどうなんだと訊かれそうだが、あれは主役をマイケルに移して前作の物語を継続させているので、続篇というより「ゴッドファーザー(の続き)」である。
1980年にスタンリー・キューブリック監督が発表した映画「シャイニング」は、原作の小説を書いたスティーヴン・キングが物語の改変を気に入らなかったことが知れ渡っていた。そのせいか知らないが、おそらくキングはファンサービスの一環として2013年に「シャイニング」の続篇に当たる小説「ドクター・スリープ」を発表した。この小説の映画化が2019年の Doctor Sleep である。
舞台は「シャイニング」からおよそ30年後、主人公の"ドクター・スリープ"とはオーバールックホテルで呑気に三輪車を漕いでいたダニーことダン・トランス(ユアン・マクレガー)だ。ダンは自らと同じ能力"シャイニング"を持つ少女アブラと知り合い、シャイニングの力を欲しがる超人のような女ローズ・ザ・ハット(レベッカ・ファーガソン)たち一味と対峙するーー、という、漫画のような展開の話である。
これがファンサービスであると言えるのは、映画「シャイニング」で強調された"狂気"ではなく、あくまでもシャイニングという超自然の力に支点を置いた物語だからだ。キングがキューブリックの映画を嫌った理由は、シャイニングという力がホテルにも宿っているという側面をほぼ消されたことだった。ただ、この映画がここまで有名になった原因は、キューブリック監督がそうした超自然の力ではなく、人の精神の恐ろしさを強調したことによるものだろう。
2019年の映画「ドクター・スリープ」は、キングの原作をほぼ忠実に再現している。しかし、いかんせんストーリーが漫画ゆえ、レベッカ・ファーガソンの帽子が似合ってますね、ということの他に感想が見当たらない作品である。主人公ダンが少女アブラと助け合い、悪いローズをやっつけました、以上、である。哲学もテーマも愛もヘッタクレもない。ダンがアルコール依存症を克服するという話は前作の父親ジャックに引き続き、キング自身の体験を投影したものだろう。
ちなみに、キングはもう76歳だ。そろそろ引退すべきである。次男と共著で小説を書いたりしている場合ではない。偉大な才能なのだから、引き際も美しくあってほしいと願う。
レベッカ・ファーガソンは「ミッション:インポッシブル」シリーズでのイルサという当たり役を得て有名になり、「グレイテスト・ショーマン」や本作への出演を果たした。最近では「DUNE/デューン 砂の惑星」にも主要キャストの1人として登場している。いかにも白人が好みそうな、骨格を感じる顔付きのスウェーデン人だ。僕はもっと柔らかい印象の女優の方が好きである。
「ドクタースリープ」はこの内容にもかかわらず152分という長さであることも拙かった。100分にできる話だし、これが100分ならもっと興行収入があっただろう。2時間を超えても構わない作品とは、名作に限るのだ。