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楽しい時間へ C'est parti! / 「TAXi」

「ドイツ人なんか大嫌いだ」というフランス人の本音をそのまま映画にした「TAXi」は、リュック・ベッソンの作品の中で最も素晴らしい。「レオン」も確かに良い映画ではあるものの、本作のバカバカしさは他のコメディなどを圧倒し、続編が次々と作られたことからも勢いが分かる。
プジョー406を改造してマルセイユを駆け回る無免許のタクシー運転手ダニエル(サミー・ナセリ)が、マザコンのダメ警察官エミリアンと組んで、ドイツからメルセデス・ベンツ500Eでやって来た武装強盗団"メルセデス"と公道でカーチェイスをする、という本当にただそれだけの映画である。エミリアンの上司にあたるジベール署長は"くそドイツ人"というスラングを連呼し、ダニエルの彼女リリー(マリオン・コティヤール)は大麻入りのケーキを焼き、ほとんどのシーンはマルセイユの公道を使用したカーチェイスだ。
これぞ映画である。シリアスなんて皆無の、バカ全開を本人たちが大真面目に演じているから素晴らしいのだ。007シリーズも真っ青のカーチェイスを演じたのは、フィリップ・アリオーやジャン=ピエール・ジャブイーユら元F1レーサーや、ル・マン24時間レースで活躍したアンリ・ペスカロロなど、錚々たるフランス人ドライバーたちである。そして撮影ドライバーはWRCで活躍したジャン・ラニョッティだ。フランス人たちが意気込んでこのバカな映画を撮影したことが分かる。
こういうシンプルな映画が最近は political correctness のせいか減ったように思う。くだらないことである。嫌いであることと差別することの"区別"もついていない輩が増えたせいだろう。僕はドイツと関わりのある時期があったので、少しドイツ贔屓なところがあるのだが、この映画は大好きである。ドイツ人を戯画化して笑えるように作られている。だいたい、主人公がドイツ人の強盗につけたあだ名は"アインシュタイン"である。
これは僕の持論だが、何かにつけ"不謹慎"と言う人は知能が低い。物事を遠くから見たり、他の視点から見たり、そういった作業が苦手な証拠である。つまり、ユーモア、あるいはブラック・コメディを楽しめず、政治的に正しいことに興味のある方々はMARVELでも観ていればいいと思う。だいたい、ちょっと足りない方々ほど"行儀が良い"ものである。

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