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女はつらいよ / 「ボルベール〈帰郷〉」

いわゆるエンターテイメントよりもアートに寄っている映画の方が好きなので、前回の記事「ニュー・シネマ・パラダイス」に続いて今回はペドロ・アルモドヴァル監督の2006年の映画「ボルベール〈帰郷〉」について書く。イタリアやスペインの映画には、生きていく上での心の力がよく描かれている。
この映画は、3つの異なる世代の女たちの物語だ。母イレーネ、ライムンダ(ペネロペ・クルス)とソーレの姉妹、そしてライムンダの娘パウラ。実家はラ・マンチャ地方の村であり、主人公のライムンダたちはマドリードに住んでいる。物語は、パウラがライムンダの夫パコを包丁で殺害してしまうところから展開する。この物語はスクリーンにほとんど男が登場しない。女だけの世界だ。
伯母のパウラが亡くなり、ソーレが葬儀に出席すると、実家の近所に住むアグスティーナが現れ、3年前に火事で焼死したはずのイレーネを見かけたという話を聞かされるーー。
それぞれの登場人物は互いに隠し事をしており、取り繕うために嘘をつく姿が描かれる。そしてここには、母と娘の関係、姉妹の関係があり、同時に性暴力、近親相姦、そして死が絡んでくる。ラ・マンチャの村では迷信が広く信じられ、どこか夢のような世界として描かれる一方、マドリードは"日常"を表している。イレーネたちの世代は迷信を信じており、ライムンダとソーレはそれを否定しつつもどこかで信じているように描かれ、パウラはまるで興味を示さない。
このように街や登場人物を対比させるように映しながら、物語の終盤でライムンダとパウラの意外な関係が明かされるという、ちょっと観客を突き落とすような筋書きになっている。法律という側面から見ればイレーネ、ライムンダ、パウラはともに犯罪者に違いないのだが、しかし同時に被害者でもある。男の身勝手な行動によって人生を狂わされた女たちを裁くことができますか、と問いかけられている。そして、迷信深いアグスティーナの最期を看取るというイレーネの罪滅ぼしによって、この物語はうまく閉じている。
さて、本作は世代の異なる登場人物たちがそれぞれの人間関係に悩みつつ、そこに性と死が描かれている。むきだしの人生を撮りながら、しかしコメディの要素を入れることで、"暗い映画"にならないよう仕上がっている。明るい色調のネオレアリズモといったところだ。惜しくもパルム・ドールは逃した作品だが、僕はとても良い映画だと思う。アルモドヴァル監督は1990年の映画「アタメ」も良かった。ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞した新作が先月スペインで公開されたそうなので、そちらにも期待したい。


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