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別に望んでいないけど了承したでしょ / 「タイタニック」

20世紀で最も興行収入のあった映画といえば「タイタニック」である。
こういう恋愛映画について何を語るべきか悩むのだが、もう散々あちこちのブログで撮影秘話だのシーン解説だの、みんなが書いていることだし、僕はタイタニックに関するブログらしからぬことばかり書こうと思う。
レオナルドはこの映画の前年に「ロミオ+ジュリエット」に主演しているが、この原作となったシェイクスピアの戯曲はご存知のように2つのファミリーの対立という設定が恋愛のハードルとなっていた。いっぽう「タイタニック」は分かりやすい貴賤の話である。画家を志望するジャックと、深窓の令嬢ローズ、そしてローズは望まぬ結婚を控えているというメロドラマのお手本のような筋書きだ。「嵐が丘」や「風と共に去りぬ」は言うに及ばず、女はメロドラマが好きなのだ。それはちょうど男がバカみたいなロボットやヒーローが好きなことと同じような一般論である。
あと、これは「ロブスター」のnoteの時に少し触れたことだが、女のなかで一定の割合の方たちは、実際に好きな人を彼氏や旦那にするわけではないという現実がある。男もそうじゃないかという意見が聞こえてきそうだが、一般論からいえば、男女の付き合いは男から誘うものである。付き合ってくれ、結婚してくれ、こうしたことについて男は"言い出しっぺ"になり、女は"了承する"方になる。つまり、女のなかで"別に望んでいないが了承した"ことのある人数がそれなりにいるのだから、ローズのような立場は感情移入しやすいのだろう。
また、自分が本当に付き合ってみたい相手と結ばれた経験のある方が少ないという現実もメロドラマの人気に一役買っている。結局のところ妥協であったり、相手の収入がどうの、もうn年も一緒にいるからどうの、そうしたことが恋愛を覆ってしまう人も数多い。
だから「タイタニック」という映画は、劇中の展開を少し変えれば、2人がボートで生還して結婚しても同じように受けたと思う。ジャックが太りすぎの女のせいで溺死したことによって、好きな人と死別するという悲劇に女が号泣するヒット作になったのであり、あのジャックの死がないハッピーエンドでも、脚本としては立派に成立する。
こういう"いいなぁ、こんな恋愛してみたいなぁ"のような映画を観るくらいなら、ポール・トーマス・アンダーソン監督「パンチドランク・ラブ」を観る方がよほど楽しく、元気をもらえると思うのだが、それはモテる人間の言い分なのかもしれない。じぶんで"求める"ことをしない限り、人生は何も動かないのだが、案外動かない人も多いのだろう。

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