日本ーサモア戦でなぜ試合が80分超えても終わらなかったのか~ラグビー見る専が読むラグビー規則~
「え、そんなルールあんの」
「そんなルール運用あるの」
いつもの通りこれ値札がついてるけど無料です。
この記事、サモアがなぜ自陣からスクラムを選択したのかとか、そういう話ではありません(※)。念のため。
サントリーの畠山選手はじめ現役選手が「やってる俺らがルール知らないから見る側は知らなくても大丈夫」というのはよく見るのですが、でも同時に嵐ファンの皆様がラグビー試合観戦に参加いただき始めたときよく見たのも「ルールが分かって見たら楽しいんだろうな」という話だった、いったいこれはなんなんだろうね?「よくある試合展開」がわかると違うんじゃない……?というのは過去記事のお話。今のワールドカップは15人制なので、あの過去の記事には「モール」の話を追加する必要はありますがそれはさておき。
ラグビーにおける場外戦 ~レフェリーの「解釈」~
紳士のスポーツでレフェリーがピッチ上の神であってもいろいろあります。いや、むしろそこまで含めて紳士の「イギリスの」スポーツといえるかもしれない。アイルランドのオフサイド判定どうこうについていうと、アイルランドにとって不利な判定だったといいつつも、日本代表チーム/サンウルブズのこれまでのプレーを見ていると、ディフェンス時物凄くラインオフサイド取られていたのを知っているわけで、たぶん日本も取られてたし同じ基準でやってたんじゃないですかね。知らんけど。
それから昨日ニュースに出ていたのが、日本ーサモア戦最後のスクラムでのノットストレートについてスコットランドHCのコメント。
スクラムは味方側に入れるような裁量あるだろ!という話なんですが、そもそもその裁量を決めるのはレフェリーなんですな。確か記憶に基づくと肩幅一つ分くらいの許容が慣例的にあったはずですが、さすがに日本側から45度くらい角度つけて入れたら見逃すわけにいかんのでは。
この件を聞いて真っ先に思い出したのがセリーナ・ウィリアムズの騒動。シリアスな場面でフットフォールトなんて空気読めよ!!的な激高をしたのか、コードバイオレーションにも引っかかってポイント失って試合落としたアレです。
反則とらないのも裁量ではある
そんな反則取るな!ということでいうと、取らなくてドラマが成立したのはかの2015年ワールドカップ南アフリカ戦であるかもしれません。
ここで出ているスクラムのアーリープッシュの話もそうなんですが、最後のヘスケストライの前のリーチの突進、ハイタックルであるとアシスタントレフェリーが指摘しています。だけれども、ガルセはアドバンテージすら出しませんでした。勿論後々にアシスタントレフェリーのコールを採用することはあったでしょうけれど、ペナルティの連続がここまであったので、ペナルティを南アフリカが出すようならペナルティトライが視野だった、という状況でした。そこら辺どう思っていたかはガルセの腹の中です。
レフェリーが目立つ試合はロクなことがない、気障な笛とかよくいわれますが、そういえば日本-スコットランド戦のレフェリーはBen O'keeffeという『わりと有名な(※2)』人です。どうなるんだろ。
また、ラグビーのレフェリーについてはこんな論考も。そもそも反則スレスレでやってるのにレフェリーどうするの?というあたり含めてやっぱり紳士のスポーツだなぁと。なお同じ著者が先のアイルランド戦をレビューしていますが、日本の攻撃時ラックのクリーンアウトが黒めのオフザゲートだという指摘をしてます。
なお南アフリカを破った試合を全編見たい人はこちら。W杯公式が配信しているので何の心配もなく見ることができます。
……しかし、いくらレフェリーが試合を作る、フィールド上では反則だらけといったところで、結局何かわからないことがあったとき、一応ラグビーにもルールブックがあるわけで。で、あのサモア戦ではラストプレーの宣告があったにもかかわらず、試合が数プレー続いたように見えました。さてそれはなぜなんだろう?
いわゆるラストプレーとは?
ラグビーの試合を見ていると、これがラストプレー、プレーが切れるまでは続行!ということは実況のアナウンサーがよく言います。負けてる側が攻めてペナルティ獲得、ペナルティキックをそのまま蹴り出してもプレーは継続、ってのは頻出で、
大まかには攻守が入れ替わらなかったら継続って覚え方すると良いんですが…その説明だとインゴールでのパイルアップどうすんだ、となったりします。そして今回のサモア戦のスクラム攻防もそれ。
ラグビーのルールは法の世界でいうと慣習法であるとか、慣例的にここまでは認められる不文律があるとか、そういう話はlawyerに任せるとしてですね、
とりあえずそのへんの書かれてないことを知るにも書いてあることがわかってないとダメだろう、ということで条文を見てみました。
ありました。試合時間を規定した第5条の7です。
残り時間がなくなった後にボールがデッドになったら各ハーフは終了するが、以下の場合を除く:
トライ、または、タッチダウンの後、残り時間がなくなる前に与えられたスクラム、ラインアウト、または、試合再開のキックが終了しておらず、ボールがオープンプレーに戻っていない場合。スクラム、ラインアウト、または、試合再開のキックが正しく行われなかった場合を含む。
残り時間がなくなる前にサモアにスクラムが与えられ、これがオープンプレーに戻るまでは試合は続行。そしてサモアのスクラムはまさに「正しく行われなかった」ノットストレート。
だから攻守が入れ替わっても試合は終わらず、と読めそうです。
なんとなくなんですが、オープンプレーに戻ってない以上、スクラムの押し合いでサモアがコラプシングとか起こしても試合終わらなかったのかも?と思いますが、ここは文章読解の問題になりそうなので、あとはプロの方お願いします。
次回予告
このラグビーのルール読んでみようというネタ、構想は遙か前だったんですが、なかなか生活が激変して書くことができませんでした。
そもそもなんでそういうネタ書く気になったの?という元祖の記事が、時間がとれればupされます。願わくば日本-スコットランド戦の前に上げたいな……
2019/10/14追記
ようやく書きました↓
※サモアの選択
蹴り出してプレーを切ればよかったのにサモアは戦うことを選んだ!という言説が結構あふれましたが、勝ち点争いを考えたとき彼らに蹴り出す選択はなかったはずです…というのもちゃんと出てき始めたかな。
※2審判の笛どうこう
JSPORTSでの解説中に大西将太郎さんが『イライラするかもしれませんねー』とか言ってた辺りから察してください。でもオキーフの笛の下でサンウルブズちゃんと勝ってるんですよ。あと似た事例。アルゼンチンのレフェリー、フェデリコ・アンセルミはわりと日本代表/サンウルブズファンから怒り勝ってる気がしますが、ちゃんと彼の下でもサンウルブズは勝ってます。
なお、開幕戦のロシア戦、ナイジェルは世界的にも評価が高く、日本ファンの声も悪くなかったりとまあいろいろ。レフェリーのまとめサイトとか誰か作ってくれないかな…
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