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盛者必衰:やがて企業が衰える理由:経済学の視点から:対策しないと潰れるぞ!



はじめに


やがて企業が衰える理由

はじめに

成長を遂げていた企業が後に衰退するという現象がしばしば見られます。これはなぜ起こるのでしょうか?
ビジネスの世界では、「企業の寿命は30年」という説があります。日経ビジネスが1983年に唱えた説です。統計を見ても30年前後で、解散したところが多い印象です。
昔は「3代目で店じまい」といっていましたが、最近は短命に終わる企業が増えてます。世の中が目まぐるしく変化するVUCAの時代になり、これまでの常識が通用しない不確実な時代になりました。不確実性が企業の寿命を短くしているのは間違いないようです。企業にとって試練の時代だと言えるでしょう。
ただ、何度も試練を経験した老舗まで廃業するなど、不確実性だけでは説明がつかないところもあります。この記事では、経済学の法則を用いて、その理由をロジカルシンキングで解明していきたいと思います。

この記事には企業の将来に悲観的な指摘があります。「問題点を見つけて、適切な戦略を立てることで、企業は持続的な成長を達成することが可能です」と言うことを言いたいわけですが、深刻な部分を論理的に指摘していますので厳しい内容になっています。メンタルに自信がない方は避けた方がよろしいかもしれません。特にスキル不足の人には耳が痛い内容が多くなっています。


1. 市場の飽和

1. 市場の飽和

企業が成長すると、その市場は次第に飽和状態に達します。新規顧客の獲得が難しくなり、売上の増加率が鈍化します。これは経済学の「限界効用逓減の法則」で説明できます。

限界効用逓減の法則とは、経済学における消費者行動の基本的な原理の一つで、ある財の消費量を増やしていくと、その財の限界効用は減少していくという法則です。

限界効用逓減の法則は、経済学における重要な概念です。この法則を理解することで、消費者の行動や市場価格の仕組みをより深く理解することができます。

限界効用とは、ある財を1単位追加して消費することによる効用の増加分のことを指します。例えば、空腹時に1杯目のコーヒーを飲んだときの満足度は大きいですが、2杯目、3杯目と飲むにつれて、満足度は徐々に小さくなっていきます。これが限界効用逓減の法則の典型的な例です。

限界効用逓減の法則は、他の多くの財にも当てはまります。例えば、1着目の服を買ったときの満足度は大きいですが、2着目、3着目と買うにつれて、満足度は徐々に小さくなっていきます。また、1回の旅行の満足度は大きいですが、2回目、3回目と旅行するにつれて、満足度は徐々に小さくなっていきます。

限界効用逓減の法則は、消費者の意思決定に重要な役割を果たします。消費者は、限界効用が大きい財から消費するように傾向します。例えば、空腹時には、1杯目のコーヒーの限界効用が大きいので、1杯目のコーヒーを優先して購入するでしょう。

また、限界効用逓減の法則は、市場価格の形成にも影響を与えます。限界効用が大きい財は、消費者がより多く購入しようとするため、市場価格は高くなります。一方、限界効用が小さい財は、消費者がそれほど多く購入しようとしないため、市場価格は低くなります。

市場は年月とともに飽和しますし、商品やサービスは飽きられてしまいます。限界効用逓減の法則の影響を避けるには、新製品を開発して新たな市場を作るか、消費行動を刺激する必要があります。企業が失速してからでは、新たな市場を作ることも消費行動を刺激する余裕もなくなってしまいます。勢いがある時に対策しないと、企業は衰退することになります。


2. 競争の激化

2. 競争の激化

企業が成功を収めると、その市場に新たな競争相手が参入してきます。これにより、市場シェアの獲得が難しくなり、利益率が低下する可能性があります。これは「完全競争市場の理論」に基づいています。

完全競争市場の理論とは、市場において売り手と買い手の数が非常に多く、各経済主体が価格を決定する力を持たない市場を分析する経済学の理論です。完全競争市場の理論は、経済学において重要な基礎理論であり、さまざまな経済現象の分析に用いられています。

完全競争市場の条件は、以下の4つです。

  1. 売り手と買い手の数が非常に多く、各経済主体が市場価格に影響を与える力がないこと。

  2. 財やサービスの同質性があること。

  3. 市場に関する情報が完全であること。

  4. 参入・退出の自由があること。

完全競争市場の理論における主な特徴は、以下のとおりです。

  • 価格は市場によって決定される。

  • 各経済主体は価格を受容者として行動する。

  • 生産量は効率的なレベルに達する。

完全競争市場では、各経済主体は価格を受容者(price taker)として行動します。つまり、売り手は市場価格で売らなければ売れず、買い手は市場価格で買わなければ買えないということです。価格は「需要と供給の法則」で決められることになります。市場価格をコントロールできませんので、競争相手の出現によって値下げを強いられて、その結果として利益率が低下するわけです。


3. イノベーションのジレンマ

3. イノベーションのジレンマ

企業は常に新たな商品やサービスを作り、新たな市場を作り出すイノベーションの必要があるわけですが、これには多額の費用が必要になります。企業が既存の製品やサービスに固執し、新たなイノベーションを見過ごすと、その企業は衰退の道を辿る可能性があります。これは「イノベーションのジレンマの理論」で説明できます。

イノベーションのジレンマとは、優良企業が、顧客のニーズを満たすために持続的イノベーションを追求する一方で、破壊的イノベーションを軽視し、結果的に市場のリーダーシップを失う危険性があることを説明した企業経営の理論です。

持続的イノベーションは、既存の顧客のニーズを満たすために、既存の技術や製品を改良するものです。優良企業は、持続的イノベーションを追求することで、競争力を維持・向上させることができます。

しかし、持続的イノベーションは、既存の顧客のニーズを満たすことに重点が置かれているため、新しい顧客のニーズや市場の変化に対応することが難しいという側面があります。

一方、破壊的イノベーションは、既存の顧客のニーズを満たすのではなく、新しい顧客のニーズや市場の変化に対応するために、新たな技術や製品を開発するものです。破壊的イノベーションは、既存の技術や製品を置き換え、新しい市場を創造する可能性を秘めています。

イノベーションのジレンマは、優良企業が持続的イノベーションに注力する一方で、破壊的イノベーションを軽視することによって、新しい顧客のニーズや市場の変化に対応できなくなり、結果的に市場のリーダーシップを失う危険性があることを説明しています。

イノベーションのジレンマは、1990年代以降のIT業界で、マイクロソフトやノキアなどの優良企業が、新しい技術を開発した新興企業に市場を奪われる事例を説明するために、広く用いられました。

イノベーションのジレンマを克服するためには、優良企業は、持続的イノベーションと破壊的イノベーションの両方を追求することが重要です。また、新しい顧客のニーズや市場の変化を敏感に捉え、それに対応するための組織や文化を構築することも必要です。


4. 内部の問題

4. 内部の問題

企業の成長に伴い、組織の規模が大きくなると、コミュニケーションの効率が低下し、意思決定が遅くなる可能性があります。これは「組織の規模の法則」により説明できます。意思決定が遅くなると、企業は変化に対応できなくなり、衰退の道に進むことになります。

組織の規模の法則とは、組織の規模が大きくなるにつれて、組織の構造や機能、そして組織内の人間関係などに変化が生じることを指すものです。
代表的な組織の規模の法則としては、以下のようなものが挙げられます。

2:6:2の法則
これは、組織においては優秀な2割の人材が全体の成果の大部分を担っており、平均的な6割の人材は優秀な2割の支援を受けながら働き、下位2割の人材は全体の成果にほとんど貢献していないという経験則のことを言います。

1・3・1・3の法則
これは、組織の拡大に伴って、組織の構造や機能も段階的に変化していくという法則です。具体的には、10人規模の組織から30人規模の組織に拡大する際には、1人あたりの役割や責任を拡大する必要があるため、1:3の編成にする必要があります。また、30人規模の組織から100人規模の組織に拡大する際には、部署やチームを新設する必要があるため、1:3:1の編成にする必要があります。そして、100人規模の組織から300人規模の組織に拡大する際には、さらに部署やチームを分割する必要があるため、1:3:1:3の編成にする必要があります。

バーンアウトの法則
これは、組織の規模が大きくなるにつれて、組織内の人間関係が希薄化し、仕事に対するやりがいが低下する傾向があることを指すものです。

組織の規模が大きくなるにつれて、組織内の人間関係は、単なる上下関係や職務関係に置き換わっていく傾向があります。その結果、仕事に対するモチベーションややりがいが低下し、バーンアウト症候群などの精神的な問題を引き起こす可能性があると考えられています。

組織の規模の法則を理解することは、組織の運営や管理にとって重要なことです。組織の規模が大きくなるにつれて、組織の構造や機能、そして組織内の人間関係などに変化が生じることを認識し、それに応じた対策を講じることが求められます。企業は年月とともに変化します。組織内の変化に対応できなければ衰退することになります。


5. テクニカルスキルの問題

5. テクニカルスキルの問題

企業の売り上げの大半は少数の社員が稼いでいる事実があります。つまり、大半の社員は企業に貢献していません。これは「スタージョンの法則」で説明できます。スタージョンの法則は経験則ですが、あてはまる企業が多いのも事実です。

スタージョンの法則は、SF作家シオドア・スタージョンが提唱した格言で、「全てのものの90%はカスである」という意味を持っています。この法則は、どのジャンルや分野においても、全体の大部分は平均以下の品質であり、優れたものは全体の一部分に過ぎないという事実を示しています。

この法則は1972年の編集者デイヴィッド・G・ハートウェルとの対談で初めて言及されました。スタージョンは、「SFの90%がカスだ」という主張ないし事実のもつ情報量はゼロであると述べています。なぜならば、SFは他の芸術/技術の産物と同様の質的傾向を示しているに過ぎないからです。

また、しばしばカス(crud)の代わりにガラクタ(crap)やクソ(shit)という用語が用いられます。パーセンテージについても揺れがあり、「94%」という文献もあったとのことです。

この法則は、一定の名作を生むジャンルには、常に多量の駄作があるという風に言い換えることもできます。多くの駄作の存在は、それらを受け入れる市場の存在を前提にしますが、それが存在しないジャンルは名作を生み出せません。そのような駄作は、駆け出しの制作者の修練の場でもあるからです。それを失ったジャンルは、後継者を失って先細りになりがちです。

スタージョンの法則はクリエイティブな分野だけでなく、他の多くの分野でも適用されます。経済の分野でも、全体の大部分の企業や商品が平均以下の品質であり、優れた企業や商品は全体の一部分に過ぎないという現象が見られます。これもスタージョンの法則が示す傾向と一致しています。

言い換えると、充分なテクニカルスキルがある有能な社員は10%しかおらず、残りの90%の社員はスキル不足で役に立たないことになります。しかし、有能な社員を確保するには、無能な社員も必要と言うジレンマにあります。無能な社員がいなければ、有能な社員は存在できなくなります。企業に無能な社員を受け入れる懐がなければ先細りになるということです。


6.ヒューマンスキルの問題

6.ヒューマンスキルの問題

スキル不足の社員が多いと、全体のモチベーションが低下する問題が発生します。人は他人の行動に影響されやすい傾向があるからです。無能な社員の存在は、他の社員の仕事に対するモチベーションや生産性を低下させます。

無能な社員が周囲の社員に比べて仕事の成果が低い場合、他の社員は「自分も頑張らなくても大丈夫だ」と考えるようになり、仕事への意欲が低下してしまうのです。また、無能な社員の存在は、周囲の社員の仕事を邪魔したり、仕事の質を下げたりする原因にもなります。これは「ソーシャルプルーフの法則」で説明できます。

ソーシャルプルーフの法則とは、人々は不確かな状況において、周囲の人々の行動や評価を参考にして、自分の行動を決める傾向があるという心理学の法則です。

人々は、多数派に合わせたいという心理を持っています。これは、集団に受け入れられたい、孤立したくないという心理が働くためです。ソーシャルプルーフの法則では、多数派が何かを選択している場合、その選択は正しいものである可能性が高く、自分もそれに従った方がいいと考えます。

ソーシャルプルーフの法則では、自分の価値観と近い人々が何かを選択している場合、その選択は正しいものである可能性が高く、自分もそれに従った方がいいと考えます。つまり、劣った社員が多いと、全体が同調してモチベーションが下がっていくわけです。

ビジネスの世界では、有能な人材を獲得することは、企業の成長や競争力維持のために重要な課題です。しかし、スキル不足の社員が多い企業では、有能な人材が集まりにくいという現象が起こることがあります。

この現象は、「類似性の法則」によって説明することができます。類似性の法則とは、人は自分に似た人や物に好感を持ち、親近感を抱くという心理法則です。つまり、スキル不足の無能な社員が多いと、さらに集まってくることになります。

スキル不足の社員が多い企業では、社員のスキルや能力のレベルが低いため、優秀な人材は、その企業を魅力的だと感じず、入社を希望しにくいのです。また、優秀な人材がすでに入社している場合でも、スキル不足の社員が多いことで、仕事のやりがいや成長の機会が得られにくいと感じる可能性があります。そのため、スキル不足の社員が多い企業では、優秀な人材が集まりにくくなるのです。


7.コンセプチュアルスキルの問題

7.コンセプチュアルスキルの問題

スキル不足の社員が多い企業では、経営者や管理職のリーダーシップが重要になってきます。スキル不足の社員を良い方向に導く必要があるからです。通常、成績が良い社員がリーダーシップを取るようになります。これは自らリーダーシップを取ることもありますが、多くの場合は上司の命令です。

しかし、有能な社員はテクニカルスキルに優れていますが、リーダーシップのヒューマンスキルはそれほどでもないことが多いです。必要とされるスキルが違うので、うまくリーダーシップが取れず、最悪のケースを招くことがあります。これは「フィネグルの法則」で説明できます。

フィネグルの法則とは、マーフィーの法則の一種で、主に数学や情報科学等の広義の自然科学全般にあてはまる法則です。マーフィーの法則は、「失敗する可能性のあるものは、失敗する。」という法則ですが、フィネグルの法則は、その中でも特に、「不確実性や偶然性が高いものほど、望ましい結果よりも望ましくない結果が起こりやすい。」という法則です。

まさに、VUCA時代の不確実性が、望ましい方向へ進みたいのに、あらぬ方向へ進んで最悪の状態になってしまう原因になっています。

社員のスキルに格差があることが問題なのですが、この格差の解消は難しい問題です。スキルアップの勉強をしている社員ほど身についていないのは、これもフィネグルの法則で説明できる現象です。

不公平なことにスキルを持っている人は、さらにスキルを獲得して恵まれますが、スキルを持っていない人は、持っているスキルでできる仕事まで失ってしまいます。これは「マタイ効果」で説明できます。

マタイ効果とは、成功している者が注目され、さらに成功する可能性が高まるという現象を指します。マタイ効果の名称は、新約聖書の『マタイによる福音書』の中に出てくる「持っている者は与えられてますます豊かになり、持っていないものは持っているものまで取り上げられるだろう」という言葉に由来しています。

マタイ効果は、ビジネス、芸術、科学、スポーツ、教育など、あらゆる分野で見られる現象です。

例えば、ビジネスでは、すでに成功している企業は、資金や人材などのリソースが集まりやすく、さらに成功する可能性が高くなります。また、芸術では、すでに有名なアーティストは、メディアに取り上げられる機会が多く、さらに有名になる傾向にあります。

マタイ効果は、社会の不平等を拡大させるというデメリットも指摘されています。すでに成功している者には、さらに成功するチャンスが与えられ、そうでない者には、チャンスが与えられにくいという状況が、社会の格差を拡大させる可能性があります。このため、社内の格差は拡大していく傾向にあり、有能な社員だけが優遇されることになります。結果として、大部分の社員のモチベーションを低下させて企業の衰退につながります。

極めつけは、能力以上のことは誰にもできないことです。能力主義の階層社会では、人間は能力の極限まで出世しますが、やがて能力を超えて出世しなくなります。企業は能力の限界まで市場を握りますが、能力を超えて市場に進出することはできません。

有能な営業マンが無能な中間管理職になることは、しばしば見られる現象です。これは営業にはテクニカルスキルが重要ですが、中間管理職はヒューマンスキルやコンセプチュアルスキルが必要になるからです。有能な中間管理職になれたとしても有能な経営者になれるとは限りません。経営者は特にコンセプチュアルスキルが重要になるからです。

したがって、有能な平(ひら)構成員は、無能な中間管理職になり、有能な中間管力は無能な管理職になり、有能な管理職は無能な経営者になるわけです。企業の規模は経営者の器(能力や懐の深さ)で決まります。経営者の器を超えた規模になるとコントロールができず、やがて迷走して衰退するわけです。このことは「ピーターの法則」で説明できます。

ピーターの法則は、能力主義の階層社会において、人は自らの能力の極限まで出世する。しかし、能力を有する人材は、昇進することで能力を無能化していく。そして、いずれ組織全体が無能な人材集団と化してしまう、という衝撃的な内容です。

具体的には、以下の3つのことが言われています。

  • 人は、現在の職位で有能であれば、昇進する。

  • 人は、昇進することで、より高い職位の能力を求められるようになる。

  • 人は、最終的に自分の能力の限界に達する職位に就く。

ピーターの法則は、組織においては、人事評価制度の機能不全や、無能な上司による部下へのプレッシャーなど、さまざまな問題を引き起こす可能性があります。それでも、ピーターの法則は、組織における人事制度や、個人のキャリア形成を考える上で、重要な示唆を与えてくれる法則であると言えるでしょう。

今までに数百社を見てきましたが、ピーターの法則があてはまる企業が多いのは事実です。特にワンマンな企業ではトップの器で規模が決まります。経営者にコンセプチュアルスキルがないと、有能な人材を活かしきれないか、ダメにしてしまいます。トップが自分に足りないスキルをカバーできる人材をブレインに迎えている企業は順調に大きくなっています。

ピーターの法則は、あくまでも一種の寓話ではありますが、ビジネスの現場を見ていると無視できることではありません。むしろ、経営者が最も考えるべきことだと感じています。

まとめ

経済学の法則を用いることで、企業が成長から衰退に至る理由を理解することができます。私たちが取るべき行動は、企業が衰退する将来を悲観することではありません。これらの理論を理解し、問題点を見つけて、適切な戦略を立てることです。これにより、企業は持続的な成長を達成することが可能です。


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