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「模範刑事」 - 死刑囚と刑事が交わす尊い約束を見守りたい人間ドラマ

★★★★+

放送中のシーズン2を観始めたらなかなか面白い気がして、シーズン1も観てみました。どんでん返しがある系のサスペンスではないのですが、明確な悪役がいて、良心を持った刑事たちが一心に真実を探し求めていくシンプルで丁寧な人間ドラマは見応えがありました。見るからにベテランなおじさん人情派刑事とイケメン若手キャリアというバディも守備範囲が広くてとても良かったです。

5年前に女子大生と刑事を殺害した罪で刑務所にいる死刑囚のデチョル(チョ・ジェユン)の死刑執行が近づいていました。しかしそんなタイミングでデチョルを逮捕した刑事・ドチャン(ソン・ヒョンジュ)のもとで起こる少女の失踪事件。なんとそのいなくなった少女はデチョルの娘で…。

デチョルは新たに同じ班に配属され相棒になった警察大学出身のエリート刑事オ・ジヒョク(チャン・スンジョ)とともに事件を追います。少女を殺害したと主張する謎の男も登場して状況は混迷を極めますが、その先に見え始める5年前の事件の真実。当時はデチョルが犯人だと信じて疑っていなかったドチャンでしたが、次第にその確信が揺らぎ始めます。

一方でジヒョクは訳ありな様子の従兄・ジョンテ(オ・ジョンセ)に疑いの目を向けはじめて…。

5年前の事件が冤罪なのだというのは早々に見えてきて、真犯人もなんとなく分かるのですが、死刑判決を覆す困難さや、そこに絡まる様々な人々の思惑を描いていくストーリー。単純に巨悪が権力を振りかざしているだけでなく、個人個人の人間的な事情が少しずつ積み重なって霧のように真実を遠ざけてしまっている。そんなつくりがよくできているなと思いました。みんなが少しずつ持っている弱さがデチョルの冤罪を晴らしてくれないもどかしさ。

冤罪に導いてしまった過去はあれど、ドチャンは人情あふれ部下の信頼も厚い良い刑事なのです。彼が死刑を控えたデチョルと交流していく中で芽生える信頼関係が、このドラマの色合いを決定づけているようなところがありました。展開自体は楽しいばかりではなく、だいぶ辛い気持ちになったりもするのですが、家族の愛情や友情もきちんと描かれていることに救われます。

ジヒョクはジヒョクではじめこそ冷徹キャラでだいぶ癖が強い感じで登場するのですが、彼には彼の重たい過去があり、根本的には人を大事にする優しい青年。デチョルやデチョルの娘のためにも奔走し、ドチャンといいバランスを見せていきます。デチョルの事件を追う女性記者のソギョン(イエリア)との間には次第に恋の予感も芽生えていき…。なんというかジヒョクの言動はいまいちフレッシュじゃないのですが、彼の清涼剤的な存在感が物語にほどよくエンタメみも残してくれていて、それでいて全体的には地に足がついた安心感ある世界観。良いドラマだな、という印象をもたらします。チャン・スンジョがミュージカル出身の実力派俳優というのも納得で、彼の声が妙に好きでした。

ジョンテはひたすら腹立たしいのですが、隙がなさすぎてもう少し振れ幅のあるキャラクターでも良かったかも?と思ってしまうのはオ・ジョンセだからかもしれません。さすがの演技力というか、視聴者が一瞬も同情しない悪役をばっちり演じすぎてしまっていて(笑)。ドチャンがそもそも強いキャラなのでそれと喧嘩せず主張しすぎない絶妙な陰になっている気がしました。「サイコだけど大丈夫」のあとの出演だったので役柄の落差が話題になっていたようですが、本当にどんなボールを投げられてもホームランで打ち返してくる役者さんのように思います。だからこそ物語の華を持っていくような悪役を演じても面白かった気がしてしまいましたが、やはり中心にはソン・ヒョンジュのどっしり構えた引力があってこそ。ベテランの主演、いいなあと感じました。

あとは死刑囚デチョルを演じたチョ・ジェユンが欠かせません。何よりもまず父親であるデチョルの姿に涙してしまいました。ほんと、デチョルとドチャンのシーンが印象に残ります。チョ・ジェユンも「SKYキャッスル」での役との差が激しくて(最初まったくピンと来なかったほど)びっくりしました。役者陣の演技だけでも十二分に満足できるドラマだと思います。というわけで期待を込めて、改めてシリーズ2に戻ります。



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喜怒哀楽ドラマ沼暮らし

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