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「明日」 - 人が抱える苦しみを多様に紐解く美しい死神たち

★★★★+

錚々たる美男美女キャストと「死神が人助けする」という情報から想像していた世界観より、ずっと苦しい人生を生きる人々の物語でした。テーマが「自殺者の自殺を止めること」ゆえに、毎回死のうとしている人々が出てくるわけで、当然その人々には死を望むほどの理由があるのです。毎話のその表現が意外と妥協がなく(時折穏やかなエピソードも混ぜられていますが)、ずっしり積もってなかなか辛いので途中少し気持ちが折れそうになったりもしたものの、本質的には優しい作品だと思います。

資格はたくさん持っているのにどうにもこうにも就職先が決まらず辛い日々を送っている青年チェ・ジュヌン(ロウン)は、ある日たまたま自殺しようとしている男性を救おうとしたところ川に転落、死神の手違いで昏睡状態に。「半分人間、半分幽霊」という状態になってしまいます。ふたたび目覚めて人生に戻るためにあの世の死神による会社「走馬灯」の仕事を手伝う契約を結びます。

ジュヌンが配属されたのはピンクの髪にド派手なファッションの美女ク・リョン(キム・ヒソン)がチーム長を務める危機管理チーム。あの世の人口が増えすぎるのを防ぐべく自殺しようとする人を止めることを任務に背負う、少し変わった死神たちの仲間に入ることになります。定時退勤を絶対に守る冷静沈着なイム代理(ユン・ジオン)、エリート集団の引導チームを率い自殺者を決して許さない冷徹な死神パク・ジュンギル(イ・スヒョク)など、クセの強い死神たちの中にあって熱意あふれるジュヌンはこんな形でもようやくできた就職に邁進しますが、自殺しようとする人々と向かい合う仕事はそんなに甘いはずもなく…。

ロウンのキャラクターが他のドラマで見てきたイケメン路線とは違って、図体が大きくてよく喋ってやかましいけれど真っすぐで心優しい(そして情けない)青年。なんというか、もともとロウン本人に抱いていたイメージにとても近くて面白かったです。もはやあの顔面をもってしてもイケメン感が醸されてないことにむしろ感服。本来ロウンの演技が好きなので、これもまた良いなぁとなりました。毎回最初はちょっと考えが浅くて鬱陶しい正義感を見せがちなのが、他の人々の言葉を聞いて人の気持ちの本質を理解してゆく。そんな変化を巧みに演じています。

一方でイ・スヒョク演じるジュンギルの群を抜いたかっこよさは一層に際立っていました。ときめき要素はジュンギルに集約という感じでしょうか。死神が似合いすぎてて、もう登場しただけで卒倒しそうなオーラを放ってます。初めこそ扱いづらい堅物みたいな立ち位置でしたが、人一倍情に厚く性根が腐った人間を許さないタイプ。実は想像以上に深い意味のある役回りであることが明かされてゆく後半は回を重ねるにつれますます男前ぶりに拍車がかかり、持ち前の声の存在感も相まってすっかり耳目を奪われてしまいました。時代に応じた装いもそれぞれ最適に着こなしてしまうあたりがさすが。意識とともに移ろう顔つきがとても好きです。

そしてある意味すべての世界観を背負っているのがキム・ヒソン演じるリョン。彼女の一筋縄で行かないキャラクターもまた、見るほどに手触りある魅力を感じるものです。たくさんの人の魂のエピソードを撚り合わせてゆく本作ですが、行きつく先となるリョンとジュンギルの因縁はそれだけでも引き込まれる物語。そしてそれを成立させているのが何よりもリョンの存在の美しさでした。死神として長い時を生きてきて、現代的なファッションもノリもサラッと吸収していながら、根本的には芯が強くて、情に流されることはなくとも苦労に裏打ちされた慈愛を持つひと。笑顔をめったに見せないのに優しさが伝わるのがとても素敵だなと思いました。そしてなんといっても綺麗。アクションをこなす姿は凛々しくてこれまた死神がハマります。

リョンが人間だった頃を描く時代劇パートや(特に日本人としては)少々観るのが辛い戦時中のストーリーもあり多少の胆力こそ要りますが、死後の世界はもちろんファンタジーなので、とにもかくにも舞台が広大で壮大です。けれどそれらを無理なく同じ作品の中にまとめあげ、酸いと甘いを共存させる質の高い物語。とりあえず最初はノーマークだったリョン×ジュンギルの沼が思いのほか深いので改めてその視点で一周しようかなと思います。


▼素敵すぎて卒倒するジュンギル



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喜怒哀楽ドラマ沼暮らし

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