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「ヒーローではないけれど」 - 正義の味方よりもただ家族のために闘うお父さんがいい

★★★★★

「久しぶりにチャン・ギヨンが観たい」くらいの気持ちで観始めたのですが、想像以上に面白い作品でした。「ムービング」しかり、超能力もの(超能力ファミリーもの)は最近のひとつ流行りなのかもしれませんが、このドラマでは超能力者一家のポク家は現代病でボロボロになっていておよそヒーロー感はありません。そんな彼らと詐欺師ファミリーとの不思議な対決から、家族愛によって再生していく姿が描かれる新感覚の物語。スガシカオの「正義の味方」をどことなく思い出しました。

マヌム(コ・ドゥシム)は予知夢の超能力を持っていましたが不眠症でもはや力を出せません。彼女の家族たちもみな現代病を患ってお先真っ暗。自分が幸せだった時間にタイムスリップできる息子のギジュ(チャン・ギヨン)はうつ病な上にアル中で、飛び先になるような幸せな時間がありません。飛行能力を持つ娘のドンヒ(スヒョン)は元はモデルだったほどのスタイルだったのに、過食症で肥満に歯止めがかからず飛行なんて夢のまた夢状態。さらにギジュの娘のイナ(パク・ソイ)は中学生になりますがいまだ能力を持っている気配がありません。

そんな中、海に落ちたギジュをダヘ(チョン・ウヒ)という女性が救います。彼女に感謝したいと思っていたマヌムですが、なんとマヌムが通うマッサージ店で働いていたダヘ。しかも何をしても眠れなかったマヌムがダヘの施術で深い眠りに落ちたのです。そんなマヌムの夢にポク家の指輪をはめたダヘが現れ、マヌムは彼女が一家を救ってくれる存在だと確信することに。

ダヘを家に招待するマヌムは、事故で亡くした妻との時間に閉じこもったままのギジュとダヘを引き合わせようとしますが、ダヘに向けられるのは疑心暗鬼の目ばかりでした。

しかし実はそんなダヘ、詐欺師一家の娘だったのです。資産家であるポク家を狙って送り込まれた刺客であるダヘは、マヌムの心を掴み、じっくりポク家に入り込んでいくことに。ギジュとイナと巧みに距離を詰めていきますが、彼らの過去は想像以上に壮絶でした…。

ダヘがゴリゴリの詐欺師というのが最初からパンチが効いています。そしてギジュの病み方もかなりのもの。どう転んだらこのふたりにロマンスが生まれるんだろうと思わされた序盤ですが、ふたりの運命は複雑で、マヌムの見た夢はやはり予知夢なのです。もちろんそのファンタジーな展開もこのドラマの面白さですが、肝になるのはやはり家族愛。母を喪って腐り果てている父親を哀しくも冷めた目で眺めているイナと、それでもイナだけは大事なギジュ。ダヘの登場でこの父娘の関係も動き始めます。

ダヘはダヘで自分を引き取り育ててきた詐欺師の親玉・イロンを母と呼び、他にも家族のような詐欺師仲間たちとなんとも言えない絆の中に暮らしています。正常ではないけれど何か情のようなものがある不思議な関係。ポク家との対立の中でそれぞれが家族としての関わりを確認していくことになります。

かつてのギジュは能力があっても結局何もできない自分に絶望していましたが、家族への想いから力を取り戻した彼は、家族のもとへ辿りつくために今度こそ最後まで諦めずに闘います。そしてそんなギジュを家族として抱きしめるダヘ。エンディングまでとても温かくて陽だまりのような作品でした。おすすめです。



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