「今、別れの途中です」 - 別れを乗り越えたとき、別れの先にあるもの
★★★★
主演がソン・ヘギョ × チャン・ギヨンで舞台がファッション業界。キャスト、設定、いろいろな意味で「正しいドラマ!」と思った一本です。華やかな世界でスマートに働くハンサムなヒロイン。誰もが心惹かれてしまうのに深い恋愛に入り込まないイケメン。ふたりを結びつける必然のような運命…。ひと昔前の「月9」みたいな期待感が生まれます。
韓国の一流ファッションブランドでデザイナーとチームリーダーを務めるヨンウン(ソン・ヘギョ)は38歳のバリバリ仕事をこなす有能美女。冷静な現実主義者で、恋愛にはのめり込まない主義です。
そんな彼女が、超売れっ子のファッションフォトグラファーであるジェグクと出会います。初めは偶然に、そしてまた再会し、とあるピンチをジェグクに助けてもらう場面があってどこかジェグクが気になっていくヨンウン。ジェグクはジェグクですっかりヨンウンが気に入っている様子です。
まさに運命みたいなキラキラの出会いで、そのまま恋愛モードに一直線かと思われますが、ヨンウンが恋を遠ざけているのには実は理由があり、それは10年前に負った傷のせい。もう一度本気で恋愛をするには彼女の心の壁はあまりに高いのです。そして距離が近づく中で明らかになる、ヨンウンとジェグクの予想外の因縁。それでも恋を諦められなくなっていくふたりは、やがていつかの別れを前提に、それまで愛し合うという選択をするのです。
タイトルの「別れの途中」が意味するのはまさにこんなふたりの選んだ道。そんな風に思わされる中盤。しかしそれと同時に、ふたりの周囲の人間関係の中にもあちこちで「別れに向かう」場面が生まれていきます。それは恋愛に限りません。
このドラマは全体的に、どうしても存在する避けられない別れに対して後悔がないように、思う存分今を生きる、精一杯愛する、各々のそんな姿を描いていくのです。突如訪れて何もできず過ぎ去ってしまった別れへの未練と対比しながら、必死で足掻く登場人物たちの輝きを見せていく物語。
正直、ヨンウンとジェグクの恋模様だけに焦点を当てて見ていると恋愛ドラマ鉄板の運命が連続する序盤のわりに必要以上に悩んだり苦しんで見えてフラストレーションを感じてしまったのですが、女同士の強い友情や夫婦の絆に視界が広がっていくと単純な男女のラブストーリーを作りたいわけではないのだなと思うようになりました。別れと真摯に向かい合うことで、物理的には実際の別れを迎えたとしても、ある意味で「別れを乗り越える」ことができるのかもしれません。そしてそうなったとき、絆はただ愛し合うそれよりも確かな存在になる気がします。
ヨンウンの会社の代表の息子役で出てきたEXOのセフンが、ちょっと抜けてるけどヨンウンの良い弟分の役割をうまく醸していて癒されました。最終回のラストシーンには2PMのチャンソンも少しだけ特別出演していて隅々が豪華。
ジェグクが撮ったヨンウンやその友人たちとの写真がとても素敵で、天才的なカメラマンの恋人という設定っていいなと妙なところでしみじみ。その他にも全体に情景が美しく、ひとつひとつの画が印象に残るドラマでした。
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チャン・ギヨンの年下彼氏っぷりが刺さる場合は「恋愛ワードを入力してください」は必見です。
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