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「彼はサイコメトラー」 - 等身大の主人公の難解な痛みと偽らない愛情

★★★★+

ジニョン(GOT7)の過去の作品をチェックしてて何気なく観始めた一本(どうしても「サイコメトラーEIJI」がよぎりますが)。単発の事件を解決していく探偵モノ的なストーリーかと思いきや、主人公が幼い頃に起きた事件から始まる思いのほか複雑なサスペンスで、ストレートに面白かったです。

イ・アン(ジニョン:GOT7)は幼い頃に父、母と3人家族で暮らしていた団地で起きた放火殺人事件で生き残った高校生。事件をきっかけにサイコメトリーの能力が身につき、触れた人や物の残留思念を読み取ることができます。そしてそんな11年前の団地の事件と類似した火災がとある病院で発生します。アンの能力を知っている刑事のウン・ジス(ダソム)は、アンがうまく能力と付き合っていけるようにと彼を解剖室にこっそり連れ込み遺体の残留思念を読み取らせようとしますがなかなかうまく行かず、「指輪をした女性」という曖昧なキーワードだけ浮かび上がることに。そして同じ11年前の事件の被害者で、火災の中からアンを救い今は検事となったカン・ソンモ(キム・グォン)もまた、病院の事件の捜査に関わっており、アンのことを案じている様子。そんな中、ひょんなことからアンは転校生のユン・ジェイン(シン・イェウン)にのぞき魔だと誤解されて大騒ぎになります。ところがこのジェインとアンには実は浅からぬ縁があって…。

登場から結構アンのキャラクターが軽く、いかにも高校生な感じだったのでポップな世界観なのかなと思いきや、アンとジェインの過去はなかなかにディープ、さらにソンモは実の兄のようにアンを可愛がっていますが心のうちがなかなか見えず謎だらけと、意外に人物設定や伏線など土台のしっかりした物語になっていて、純粋に展開が気になってどんどん観てしまいました。

アンの仔犬っぽいキャラクター、とても良いです。勉強はできないけれど愛嬌があって情には厚い等身大の青年(ドラマの中ではわりとずっとニートですが)。けれどその向こうには誕生日に両親を喪った哀しみや孤独に育ち喧嘩に明け暮れた時代があったり。野良犬が人に懐いたような愛しさがあります(そんなアンが飼ってるリアル犬のユキもとてもかわいい)。決して単純ではない天真爛漫さがジニョンの醸す雰囲気にぴったりなのかもしれません。こうして見ると「悪魔判事」のジニョンはすごく大人っぽく思えるなど。

対するヒロインのジェインは最初こそ世間に対してハリネズミのように毛を逆立てているのですが、直球で好意を向けてくるアンに心を開いていくことでどんどん可愛くなっていきます(そもそも美少女なのですが)。軸はサスペンスでありながら、主役ふたりのラブストーリーが安易にならずそれでいて青春の味わいもしっかりあってときめきました。何か奇を衒うようなことはないのですが仕立てのいい物語に感じられるのは、ふたりの誠実な演技あってのことかもしれません。

またキム・グォンのソンモも役柄の重要性はもちろんありますが、強烈な印象で焼き付きます。話が進むほどに難解なキャラクターですごいなと思いました。途中までまったく気づいてませんでしたが、このキム・グォン、「ナビレラ」でソン・ガンとの確執を見せる不良同級生を演じていた役者さんなのですね。言われてみるとそこでも細やかな心情表現が記憶に残っています。ちなみにソンモの高校時代を演じるのが「悪霊狩猟団: カウンターズ」のチャ・ビョンギュで、こちらも引力ありすぎる存在感。なかなか贅沢です。

警察・検察が出てくる物語はなんかどうしても権力との対立を一回は通る気がしますが、そういう部分もありつつこのドラマでは悪役の悪が一筋縄で行かず、深みがあって人の愛憎の難しさを思う結末を迎えます。納得感があって腑に落ちる良作品でした。


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喜怒哀楽ドラマ沼暮らし

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