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「地獄が呼んでいる」 - 人が死ぬ意味を求めるのは本能

★★★★+

Netflixのイベント“TUDUM”で紹介されたティザーを観て、基本的には超常現象やホラーってあまり好きではなくて観ないのですが、これはどうもただ怖い話以上に人間の描写が面白そうで気になってしまい、配信されるやいなや一気見してしまいました。

怪物のような、獣のような、この世のものではない何かが、ある日突然ソウルの街中に現れ、逃げ惑う男を残酷に焼き殺します。この不可解な存在はどうやら地獄行きを宣告された人間を実際に地獄へ送る使者とのこと。どんな人物がなぜそんな宣告を受けるのかも分からず、恐怖に陥る世界の中で、この現象を神の裁きだと主張する宗教団体・新真理会が急速に勢力を増していきます。その中心にいるのが「議長」と呼ばれるチョン・ジンス(ユ・アイン)で、不気味な存在感とともにカリスマとして求心力を発揮しています。

罪を犯したものが裁かれるのだと主張する新真理会の教義にどんどん飲み込まれてゆく人々。そして地獄に行くことになる人々は次々と「天使」とされる存在に死亡する日時を宣告されていくのです。宣告された人に対して、裁きの瞬間(劇中では「試演」と称されています)をネットで生配信させてくれという新真理会。

そんな新真理会に違和感をおぼえる人々も当然いて、弁護士のミン・ヘジン(キム・ヒョンジュ)や刑事のチン・ギョンフン(ヤン・イクチュン)は、ジンスの周辺を調べていくのですが、圧倒的な恐怖を表現する地獄の使者を前に、大衆は新真理会へと傾倒していきます。そして宣告を受けた人々に対する社会的リンチや新真理会を批判する存在への暴力が生まれていくことに。

初めは得体のしれない化け物に襲われて無惨に殺される上に予告を受けて恐怖の中でただ待つしかできないという、本当に無慈悲な設定になんだか打ちのめされるような気持ちになりました。そしてそんな地獄送りの源や理由は論理的に説明されるはずもなく、神の意志としか言えないものなのです。これは座りの悪い作品に立ち入ってしまったかもしれないとも思いました。

ですが次第に物語は、新真理会に支配されて挙動を狂わせていく人間たちにスポットライトを当てていくようになります。そうなってくるとこれはもう、人の話なのです。生きる意味、死ぬ意味がいかに人間にとって必要なのか、究極的な本能を見せられる気分。それが濃いコーヒーを飲み干すような、グッと胃に沈む感覚を与えてきました。

特筆すべきはやっぱりユ・アインでしょうか。もう本当にこの人のための役という感じで。物腰、声、目つき、すべてがまさに、普通の青年の外見なのに人々を熱狂させるカリスマそのものです。そして議長ジンスに隠されている想像を絶する秘密。ちょっと溜息を禁じえない存在感でした。

グロいはグロいのですが全体的に落ち着いて観られる範囲で、無闇矢鱈に脅かされるような感じではありません。シーズン2の想定があるのか、だいぶオープンなエンディングで「えっ」となりましたが、伏線を回収しきれずやり散らかすような感じはなくて、収まるところに収まった印象でした。素直に面白いです。

いかんせん最近(Netflixで?)流行りの全6話。「韓国ドラマは長いから観れない」なんて話はもはや過去のことでしょう。とはいえ中身はギュッと濃厚なので休日前の夜に一気見するのが大変オススメな一本。


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喜怒哀楽ドラマ沼暮らし

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